残暑−2−
「元気そうじゃない。」
歩がジュースをすすりながら言った。
「風邪が嘘って知ってたんでしょ?」
俺は、歩に問い掛けた。
「まあね。だって、詩織が司の所に様子でも見に行くこうって言わないから、おかしいって思ったのよ。」
「それの何がおかしいの?」
司は、純粋に理由を尋ねた。
「だって、彼氏が風邪引いてたら、気になるでしょ!?それで、上手くいってないのかなと思ったの。」
少し、オレンジジュースをむせてしまった。
「俺は、詩織と付き合ってないよ。」
「えっ、そうなの!?」
これには、歩が驚いたらしい。
「そうだったの。司、ゴメンね。勘違いしてたみたい。今の忘れてね。」
わりかし歩の推測は、当たってないわけではないが司は、何も言わなかった。
「あのさ、」
しばらくの沈黙の後、歩が口を開いた。
「あの、詩織ね。司の事が好きなんだよ。さっき、あたしが言っちゃったけれどさ。」
その時は、何も答えなかった。
でも、沸騰したみたいに顔が熱くなるのが分かった。
夏の暑さのせいでは、ない熱さだ。
「だから、司。今、フリーでしょ。好きな子がいないなら、詩織と付き合っ」
「歩は、彼氏とか好きな人いるの?」
会話を遮る様にして、俺は歩に聞いていた。自分でもよく分からないが、熱い物に触ると手を引っ込めるみたいな反射の様に、無意識に歩に聞いていた。
「秘密だよん。」
笑いながら、歩は答えた。夕日のせいなのか、歩の顔も赤く見えた。
「じゃ、また明日ね。大学来なさいよ。詩織も心配してるはずだからさ。」
そう言って歩は、帰っていった。
歩は、彼氏がいるのだろうか?
好きな人がいるのだろうか?
でも、詩織と俺を付き合わせたいなら、俺を少なくとも好きではないらしい。
それが、昨日の話。
もう、午後になろうとしていた。
相変わらず、太陽は容赦なく俺達と照らしていた。そして、俺達の未来も明るく照らし続けてくれる事だろう。