残暑
司は、携帯の着メロで起きた。
最初は、目覚ましかと思ったけど、司は目覚ましをかけていないのを思い出した。
またか、携帯の液晶をみて思った。
電話は、彰からだった。
ここ3日は、彰からの電話で起きていた。
大学は、3日前から始まっていた。
「今日も調子悪いの?」
ほんとは、風邪なんて嘘だった。ただ、何となく詩織と気まずくて会いたくなかった。
いつまでも、逃げてばかりはいられないだろう。
「今日、かなり良くなったから午後から行くよ。」
「歩も会いたがってたよ。」
彰は、のんきなものである。
「一言、余計なんだよ。」
そう言って電話を切った。
この何日か、いや、夏休みの終わりから結論を先延ばしにして、逃げてるだけだった。考えれば考えるほど、分からなくなる。
きっと、詩織も普段と何も変わらなく接してくれるだろう。これが、昨日の夜に出した答えだった。
カーテンを開けると久しぶりに見た太陽にくらっとした。まだ、夏と同じくらい暑い。
彰に行くと言ったからには、大学に行かなくてはならないだろう。大学に行く為の、調度良いきっかけが出来たと思えば良いだろう。
そもそも、前期は彰はあれだけサボっていたのに、後期になって急に大学に行くようになった。
最初は、真面目になったのかと関心して、俺も見習わなくてはと思った。
しかし、昨日、心配して家に来てくれた歩の話が謎を解きあかしてくれた。
彰は、テニスサークルに好きな人がいて、その子に会う為に大学に行っているらしい。
それを聞いて少しホッとした。
そして、昨日もその子と出かけるから来ないらしい。歩は、詩織をあえて誘わなかったそうだ。
どうやら、風邪が嘘って事も分かってるし、詩織の態度から俺と詩織の間で何かあるって感づいたらしい。
女の感は、鋭いものだと部屋に差し込む黄色っぽい様な夕日を見ながらしみじみと司は思った。