はじまり
空は澄みきっていて、雲は当たり前の様に白い。手をのばせば掴めるかもしれない。
ふと誰かが自分を呼んだ気がした。しかし、勘違いだとすぐに気付いた。さっきから蝉の鳴き声に19の大事な夏がかき消されるのではと思う。
そう、俺は19歳の大学生で名前は青山司。今、課題をそっちのけで夏休みを満喫する為の計画を練っている所だ。
「つかさぁ〜、友達が来てるよ。」
やはり勘違いではなかった。母親が呼んでいたのだ。
一瞬、詩織が来たのかと思い、鏡で髪を整えたがそれはすぐにやる必要がない事だと分かった。ドタバタと走って2階にあがってくる音が聞こえたからだ。この音は、彰だと思った。彰がドアを開けて入ってきた。彼は、斉藤彰。俺と同じ19で同じ大学の経済学科だ。彰とはたまたま入学式の時に席が隣で話したサッカーの話題で意気投合した。
まあ、大学と言っても2人はどうやって授業をサボって単位を取るかについて真剣になっている。彰は要領が良かった。それは、司も認めていた。
例えば、2人で同じ様に時間割りを組んで同じ位サボった。前期で司は8単位落としたのに、彰は一つも落とさなかった。
「司、歩が言ってたぞ、単位を落とさない様に勉強しろって。」
「彰だって同じ位しか勉強してないだろ。歩の言うなら後期は真面目に出席するかな。」
「馬鹿だな。歩はあゆみでも中嶋じゃなくてお前の母親の事だよ。」
そう俺の母親の名前は青山あゆみだ。彰は、してやったりと笑っていた。
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