電車に乗ろうとしたらスライムに話しかけられた△すると僕にはハレ晴レユカイがみえた
「あのお、アキバに行きたいんですけど」
いきなり黄色のリボンをつけたスライムに話しかけられた。
「これに乗って、一駅ですよ」
ここは浅草橋駅、総武線・三鷹行きのホーム。
たった一駅、案内はたやすかった。
「そんなこと訊いてんじゃねえんだよ」
「え?」
スライムの態度が豹変した。
「こちとら国技館に行きたいのじゃ。あん?どこ連れて行く気だこら」
ええ...
トラブルだ...
とんだトラブルに巻き込まれた...
因縁の質が怖い...
「あ、じゃあ向かいのホームですね。それで一駅で...」
「そんなこと訊いてんじゃねえんだよ」
「え?」
まただ...
「ホコ天でハレ晴レユカイ踊ってた時代に戻りてえんだよ」
「スライム...」
ドアが閉まった。
僕は三鷹行きの電車に乗っていた。
スライムはそんな僕を見送っている。黄色のリボンをはずして。
電車が走り出した。
すぐにアキバの景色がみえてくる。
僕には見えた気がする。
黄色の髪飾りリボンが躍動するあの2006年の景色が。
完