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Schneiden Welt  作者: たる
第三幕
99/109

黒の正体

「ラザァ!無事だったのか!!」


エリーを無事に家まで送り、念のため衛兵を数人残した後ラザァはそのままパイリア城に向かい会議室の1つに入った。彼を出迎えたのは金髪を短く刈り込み、少し額が広い大男、パイリア衛兵のガレン レスフォードだ。


「なんとかね。みんないるみたいかな。」


会議室を見渡すとテーブルを取り囲むようにガレン、ダルク、エリダ、アズノフ、見慣れない衛兵が数人、そして壁際に寄りかかっているミラの姿が目に入った。


「ミラ……?」


微妙に不穏な空気を放っているミラに近づいて恐る恐る声をかけるが彼女は目も合わせようとしない。


「あのー?」


「……なに?」


ようやく顔を上げたミラは放っていた空気の数倍不機嫌な顔でこちらを睨みつけていた。


「ミラ、一応聞くけど僕何かした?」


「さあね。それよりもさっさと会議始めましょうよ、話す事があるんでしょ?」


なんとか不機嫌の理由を探ろうとしたがあっさりかわされた。


'''会議が終わって2人になった時にでも改めて聞いてみるかな……'''


こうなってしまったミラの対処方は時間を置くくらいしか無い。ラザァはひとまずミラの謎な不機嫌を置いておいて本題に入る事にした。





「さあラザァ、とりあえず話ってのを聞かせてもらおうか。」


アズノフがせかさかと言う。連日の襲撃事件で部下に怪我人が出た事で苛立っている、というのがガレンからの前情報だ。


「確信を持ってからでなければ口にしない慎重なお前のことだ、確かな筋なんだろうな?」


ダルクはアズノフと違い落ち着いた雰囲気で、それでいて鋭さは失わずに口を開く。部屋中の目が、正確にはミラ以外の目がラザァに集中するのがわかる。


「残念だけどまだ確証はないよ、それでも犯人の持ってる力の正体がわかったかもしれない。」


「「なんだとっ!?」」


アズノフと隣の衛兵が思わず椅子から立ち上がる。


「……あの誰にも見られずに移動するって力か?」


ダルクが目を細める。ダルクの方を見ると「お前が襲われた喫茶店の店員と客全員が証言したんだ。」と告げた。


「うん、僕も初めはわからなかったし魔法の一種かなって、でもそれだと……」


「サージェ ウェイ執務官は魔法の感知能力に優れている。初めの襲撃事件は起こりえないな。」


ダルクがラザァの頭の中でモヤモヤしていた事を口にする。


ミラやガレンはよく口にしていた。'''魔法を使える人は少ないし、使うと何かしら周りに影響を及ぼすため少なからず察知される。ユヤ オードルト最高議長なんかはパイリアのどこにいても市内の魔法は感知できるし、そこまでではなくとも感知能力に秀でた人物は城にいる。'''と。


それなのに今回は魔法について何も聞かされていない、城の誰もが察知できていないのだ。だが敵は魔法のように姿を見せずに移動をしている。


'''姿を見せずに移動している。'''という前提が間違っていたのだ。奴は姿を見せていないのではない。


'''見られても気にもされない姿で移動していた。'''のだ。


そう考えると、敵が別に透明化なり気体になってるなりと考えなければ1つの可能性が頭に浮かんだ。そう考えると全ての辻褄が合う。奴が現れる前後の状況も、何より奴の服装も。


そしてその発想に至ったきっかけはラザァの一番そばにいた少女だ。


ラザァは自分の考えを頭の中で今一度確認すると口を開く。


「奴は、全身黒の襲撃犯はカラスと人間の希少種だ。」








ラザァが城に到着した後、フルヨー横丁の路地裏では衛兵の声の気だるそうな声が響いていた。


「本当にここであってるのか?敵はおろかホームレス1人いないぞ。」


「ここで全身真っ黒の不審な人間を見たって通報があったんだ、何か手がかりだけでも見つかればいいんだがな……」


「手がかり残すような間抜けだといいんだがな。」


つい先ほど店の裏から変な音がするからのぞいて見たら全身黒づくめの男がいたと通報があり、この2人の衛兵は駆けつけたのだ。


慌ただしく路地裏に飛び込んで見ればそこはなんてことのないありふれた繁華街の路地裏で、残飯はあれど人1人見えなかった。


2人は口では色々言いつつも気だるさや諦めを隠せない様子でゴミ箱を移動させたり、足跡を探したりしている。


壁に手の跡などがないか見ていた1人が突然手を止める。


「ん、通報したのってこの店の店主って事でいいんだよな?」


衛兵の1人がふと思い出したように隣の壁をゴンゴン叩く。


「ああ、反対側は店じゃなくて工場だからな。」


もう1人が何気なくそういいながら足元のゴミ袋やらをひっくり返して何か手がかりが無いか探る。


「俺たちが駆けつけた時、急いでて記憶が曖昧だがこの店今日は閉まってなかったか……?」


急に声のトーンを落とした衛兵が首を傾げる。


「そんなはずは……」


もう1人も記憶を探るが確証は持てないようだ。


「もしかして通報自体が何かの罠なんじゃあ

……」


「変な事言うなよ!まさかそんな……誰だ!?」


背後から不意に音がして衛兵が拳銃を構える。


ゴミ袋の影から現れたのは一羽の漆黒の鳥カラスだった。


「なんだ、カラスか……おどかすなよ……」


そう言って視線を目の前の衛兵に戻した衛兵の背後でカラスの影が揺らぐ。


「何!?」


衛兵が動揺し、拳銃を構えた時にはカラスがいた場所には全身真っ黒の男が立っていた。


「お前……もしかして希少……」


衛兵が言葉を完全に言い終わる前に男が素早く動き、手にした細長い片身の刃が衛兵2人の喉を掻っ切っていた。

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