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Schneiden Welt  作者: たる
第二幕
70/109

死闘の果てに

地下道の暗闇から姿を現したのは大量のミイラだ。


人間、犬、馬、魔獣、果てはネズミや鳩までいる。


様々なミイラがガサガサと音を立ててこちらに近づいてくる。何かに取り憑かれたように…


「ラザァ、もしかして…」


ミラが手にナイフを構え直しながらラザァを見ながら言う。だがその手つきにさっきまでの力強さはなかった。


「多分さっきの鳴き声に呼ばれて来たんだ…」


さっきの怪物の不気味で甲高い声がこの大量のミイラを呼び寄せたと見て間違い無い。冷静に考えると自分だけではキツイと踏んで呼んだのだろうからラザァ達の攻撃はそれなりに効果があったと見ていいのかもしれない。


だがそんなことを喜ぶ気すら起きないほどこの敵の増加はラザァ達に絶望を運んできた。


不幸中の幸いと言うべきか、さっきの攻撃で怪物が大暴れして自分の体の炎を撒き散らしてあちらこちらから火の手が上がっているためミイラも一度にたくさんで襲ってくることは無い。


それでも状況はかなり悪い。後ろには怪我をしているとは言えあの強大な植物の王が。前からは様々なミイラの大群が迫っている。


それに対してラザァ達は武器も減り、息も上がっている。


ラザァは手にしたナイフを握りしめ、そのまま前へと歩き出した。後ろにいる巨大な敵は顔に火をつけられたのが効いたのか未だにこちらの位置がわかっていない様子だ。今のうちに援軍を少しでも減らさなければ。


ガレンも同じ事を考えていたのか近寄ってきているミイラと交戦中だ。ミラは…


真っ先に突っ込んでいきそうなミラが大人しくしているため見てみるとミラは通路の奥を見つめながら放心したように無表情になっていた。


「ミラ?」


ラザァの声にハッとしたようにミラの顔に生気が戻って来る。


「ねえラザァ、わがままだってのはわかっているんだけどさ。私が引導を渡さないとダメな相手見つけたからそいつのところに行ってくるね。」


ミラは一段と目を赤くすると助走をつけ、なんとミイラの群れの上を大きく飛び越えて暗い地下道へと入って行った。


「ちょっと!?ミラ!?」


「なんだあいつ!?」


ガレンも敵と戦いながら呆れたような声をあげた。


「こっちだってギリギリなのに!」


なんとかして地下室に入り込んだ分のミイラをラザァとガレンの2人で全滅させるしかない。


ミラが勝手に逃げたという事も状況からは考えられたが、ラザァはミラの事を信じて疑ってはいなかった。出会ってまだ1ヶ月ほどだが共に死線をくぐり抜けた絆だ。


そして再びナイフを振るった。






暗い地下道からたくさんのミイラが現れた時、普通の人間より数段視覚に優れるミラにはラザァ達には見えない遠くの暗がりにいるシルエットにすぐ気がついた。


巨大な翼、ゴツゴツした皮膚、鉤爪のある手足、長い尻尾、全体的にトカゲのようなシルエット。


龍だ。


恐らくこの辺ではよく見られる小型の飛龍種ラプトドラ(ランク3)だろう。パイリア近郊でも別段珍しくはない。


だがその背中と目からはもう見飽きてきた気持ち悪いツタが伸びている。こいつも寄生され、殺され、操られているのだ。


ミラは自分の事は嫌いだ。古龍の血を受け継いでいる自分が嫌いだ。御門違いではあるがそのせいで龍全般にいいイメージを持っていない。出来れば遭遇したくない。


だが今回は、この龍をラザァ達と戦わせるわけにはいかなかった。ラプトドラはランクが龍の中では低い方とは言え、身体の大きさは今までのどのミイラよりも大きい。つまり中にいるツタは相当な大きさに成長していると考えられる。そんな敵をラザァと戦わせたくない。


'''彼は馬鹿だから弱いくせにすぐ私の前に立とうとする。'''


'''血塗れになって戦うのは私だけでいい。'''


'''それにだ…'''


'''もしラザァがこの敵と戦って龍の姿に嫌なイメージを持たれたら私としてもなんか嫌だ。'''


'''こいつは私だけでケリをつけよう。'''


「ミラ?」


そんなことをしっかり決心していたらラザァが心配そうにこちらを見ていた。


「ねえラザァ、わがままだってのはわかっているんだけどさ。私が引導を渡さないとダメな相手見つけたからそいつのところに行ってくるね。」


そう言って思いっきりジャンプしてミイラの群れを飛び越えて地下道に入った。


襲ってくるミイラを全てなぎ倒しながら前方のひときわ巨大なミイラを目指す。


「化け物同士あんたの相手はこの私よ!」


周りのミイラを一掃すると、全身からツタを伸ばし臨戦態勢のラプトドラへと突っ込んで行った。



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