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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
7/109

関係

別にこの男の事を気にくわない訳ではない、

まあ自分の唯一と言っていい親友を独り占めしている状態になってるのはいい気分ではないが、エリーは困っている人を見ると放っておけない優しい女の子だ。自分自身も彼女のそんな性格に助けられてきた。彼女は自分のような生き物も異世界から来た人間も関係ないのだろう、助けたいから助けるし仲良くなりたいから仲良くなろうとするのだろう。


自分の立場を考えるとこんなよく出来た友人がいるのは奇跡だと思う。エリーと仲良くなる前は友達なんて必要無いと思っていた、いや、そう思っていると自分に言い聞かせていたのかもしれない。でも今はエリーをかけがえのない存在だと思っているし、エリーを失うのが何よりも怖い。


自分のそばにいることでエリーが傷つくかもしれない。そうならないためには離れるのが1番安全だろう、優しいエリーを納得させるには自分の事を包み隠さず全て話さなければならない。しかしそうすることで彼女に心の底から恐れられ、2度と今のような関係には戻れないかもしれない。エリーを傷つけたくないが確実にそうするには自分がエリーから拒絶されなければならないと思うと勇気が起こせないのだ。


よくある作り話のように相手のことを思いやるが故の嘘をつくという手も考えた。恋人同士が余命宣告を受けた後に別れ話を持ち出し、病気に苦しみこの世を去るところを見せないみたいなアレだ。ああいう行為の善悪はともかくエリーには通じないだろう。中途半端な嘘なら見破られるだろうし嘘を信じたとしても何かと理由をつけて自分の事を気にかけてくれると思う。


どうすればいいのかわからないままズルズルと今の関係を続けている、エリーは学校が終わると街中でも今日のように森でも特にあてもなくふらふらしてる自分を見つけて話しかけてくる。行き先なんて教えてなくても自然と見つけ出してくる。学校ってのは友達ができる場所だと聞いたがそちらの付き合いはいいのだろうか、自分なんかに構っているよりは学校での人付き合いを大切にするべきだと思うが自分を優先してくれて嬉しいのも事実だ。口には出さないが。


ふと見るとエリーは今日出会ったばかりの男、ラザァ?みたいな名前の暗い茶髪で自分より少し身長のある奴と何やら話している。


そいつは異世界から来ただけに見慣れない文字の書かれた鞄を持ってるし服もパイリアではまず見ない代物だ。


出会い方は最悪だったがエリーと話してるところをずっと観察していた限り悪い奴では無さそうだ、むしろお人好しすぎて悪い奴に騙される側の人間な気がする。


2人は何やら慌てていたが何かを思いついたエリーが彼の鞄を指差して2人で鞄を開けて何やら相談していた。


ずっと恋愛ごとには関係のない生活を送ってきて興味もないがお似合いとはああいう事を言うのかなとか考えながら2人をぼんやりと眺めていた。


そうこうしているとエリーが寄ってきた。


「観察は済んだ?悪い人じゃなさそうでしょ?」


ニヤニヤしながらエリーが聞いてくる、この人にはばれていたらしい。


「ばれてたのね、まあ危害は無さそうね。」


「だてにミラの親友やってないわよ、目つきがさっきの少しおでこの広い衛兵なんかよりもするどかったもん。」


親友と言われるとむず痒く嬉しい、そしてそういってくれる人に隠し事をしていることに後ろめたさを感じる。


「ラザァが宿代無いから鞄の中にあった物でも売りに市場へ行くからついでにどこかでお茶しましょうよ!」


今時の女の子らしくエリーは喫茶店とかの類が大好きだ。ミラも嫌いではないが人が多いところは好きではないため基本的にはエリーに連れて行かれる時以外は行かない。


「別にいいわよ、でも何売るの?特に価値のありそうな物には見えなかったけど。」


前に見た時も古くさい鞄以外の感想は無かったし中にも大したものは無かった記憶がある。


「異世界のものってだけでそれなりの値段になるのよ!さあ行こ!」


そういうとエリーはミラの手を掴んでラザァの方へ歩き出した。


もう少しだけこの心地よい関係に甘えることにしよう。




エリーに連れられてラザァは市場の本当に隅にある小さい店にやってきた。外れかけている看板には「プレント古道具店」と書かれている。


「えーと、エリー?ここ大丈夫?」


正直言ってかなり胡散臭いし買い取るためのお金があるようには見えない。窓とか割れてるし。


「見た目の割にはしっかりしてるから大丈夫よ、ただ店長の爺さんがかなり変人だからそこだけは驚かないでね。」


そういうとエリーはラザァの背中をグイグイ押して店の中に押し込んだ、よく見るとミラは避難して店から離れた椅子に座っていた。


「ちょっと待ってよ!ちょっと!」


そうこうしてる間にももう店の中に入ってしまった。棚には古くさい家具やら時計やらコップが並んでいる。時々何に使うのかわからないガラクタも目に入る。


「なんじゃ騒がしい。」


店の奥からひょこっと巨大なヒキガエルが飛び出してきた。ラザァは驚き過ぎるとむしろ悲鳴すら出ない事を学習した。


「爺さんそれ見たことないやつじゃない、また新しく作ったの?」


エリーがなんてことないようにヒキガエルの頭を触っていた。


「おお、その声はエリー嬢ちゃんか、うむ、毛皮と違って肌をみずみずしく保つのに苦労したがついに完成したのじゃよ、今は頭をだけじゃがグラウンドフロッグの全身スーツも夢ではないわい。」


カエルが自分の肌をペタペタ触りながら妙にはきはきした声で力説していた。


「はいはい、お客さんが驚いているから早く取りなさい!」


エリーはカエルの頭をつかんで持ち上げた、その下から出てきたのはボサボサの髪も髭も真っ白な小柄なメガネの老人が出てきた。


「お客さん?最近来なさすぎててっきり絶滅したかと思ってたわい。」


思い切り怪しい老人はラザァを胡散臭さそうに見ながらぼやいていた。


「お客さんをそんな野生動物かなんかに言わないの!この鞄の中のものだとどれくらいで買ってくれる?」


エリーは突っ込みながらラザァの古い鞄を老人に渡した。


「その口ぶりだと異世界の物か?わしにはわかるぞ。良いものでないとわしは買い取らない主義だから覚悟しとけよ。」


「わかるもなにもここは異世界物しか買い取らない店でしょうが、いいから早く査定して。」


エリーが口数で負けてるのを見るのはなんか新鮮だ。


「むっ、こっ、これは!?」


鞄を漁っていた爺さんがなにかつまみ出して声を上げている。


「お主よ、鞄に入れておく羽といえばかの英雄オルセロンが身につけていたとされる伝説の不死鳥の羽か!?持ち主の危機の際に自身が燃え力を発揮して持ち主を守るという!!」


そういって老人がラザァの目の前に出したのは安物の羽ペンだ、どこの店にも売っているやつで鳩か何かの羽だったはず。


「いや、それは羽ペンと言って文字を書くためのどう、、、」


「なんと!あちらの方々は不死鳥をも我が手足として従える事に成功しているのか!!侮れぬ、やはり文明よ発達こそが我々の急務なのか。」


勝手に暴走しだした老人は他のものを求めてまた鞄を漁りだした。


エリーは口パクで任せたと言ってさっさと店の外のミラのところへと行ってしまった。


「ちょっと!エリー!」


追いかけようとするラザァの方をしっかりと老人が捕まえて離さない、小柄な割にすごい力だ。


「お主よ、丁度エリー嬢ちゃんもいなくなったから聞きたいのじゃが、、、」


老人は良くない笑みを浮かべて手にマッチ箱とマッチ棒を持ってラザァに詰め寄ってくる。


「これは見たところ何やら卑猥な事に使う道具のようじゃが、何に使うのかの、この歳まで生ききて恥ずかしながらも初めて見る代物じゃ、詳しく聞かせて欲しい!」


そこからの次々と繰り出される質問をどう返したのかはよく覚えていない。





「全くひどい目にあったよ。」


ラザァ達は店を出た後エリーに連れられて喫茶店でお茶を飲んでいた。質問攻めに疲れたラザァはぐったりとしてテーブルに突っ伏した。


「まあまあ、でも帰るまでの宿代と食費引いてもお釣りが来るくらいのお金が手に入ったからいいじゃない。」


エリーはケーキを食べながら呑気なものだ。


「確かにそうだけどさ、でも本当にあんなガラクタが売れるなんて、、、僕の世界のものって珍しいんだね。」


羽ペン1つで今飲んでるお茶を20杯くらいは飲める。


「そりゃあ気軽に取りに行ってくるとか出来ないものね。ああいう店以外では扱ってないわ。」


ケーキで口が塞がっているエリーに変わってミラが答えた、口数が少ないのは相変わらずだから少しは態度が和らいだ気がする。


「そろそろ夕方だし、店を出てラザァを適当に安い宿まで案内したら私たちも帰ろっか!ここまできたら宿まで教えとかないと騙されてぼったくられそうだし!」


ケーキを完食したエリーがラザァって騙されやすそうだしと不本意な事まで言ってきた。


「そうか、今まで本当にありがとうね、ここまで案内してくれて。」


右も左も分からない状態でこの2(というかエリー)に出会えてなければラザァはあの森で命を落とすか誰かに騙されていたと思う。ここでお別れなのは悲しいがこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。心からの感謝の言葉だ。


「いいのよ、そんなこと、私はみんながみんな異民を嫌ってるって思われたくないだけだから。」


エリーも急にお礼を言われたからか慌てて言う、ミラは相変わらず無口だけど小さく「気をつけて」と言ってくれたのをラザァはしっかりと聞いた。


この世界のお金の単位とかを勉強する機会だとか言いながらエリーにお会計を払わさせられたが案内してもらった代金と思うことにしよう。


この後2人に安い宿を案内してもらえばそこからは1人でなんとかしないといけないのだ。


ラザァは自然と拳に力が入った。


今回は少し長めの7話目です、書きたいことが多かったので前回の後書きで書いた敵の影は書けませんでしたすみません。

前半はミラの頭の中です、伏線というか今の時点ではよくわからないと思いますが今後明かしていくのでこれからもどうかよろしくお願いします。


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