夜会
「眠れないのか?」
ラザァが振り向いた先に立っていたのはダルク ローレンスだった。
「ええ、まあ。」
ローレンスの「隣いいか?」に首を縦に振る。
「ええっと、ローレンスさんも?」
見るとローレンスも寝る時に着そうなシャツで、夜の見回りとかではなさそうである。
「言いにくいだろ、ダルクでいい。まあそんなとこだ。」
ローレンス改めてダルクは「ローレンスなのかロレンスなのかよく間違えられるんだよ。」と言いながら腰から水筒を取り出すと口につける。中は何が入っているのだろうか、ダルクのキャラ的にただの水ではなさそうだが。
「ラザァはどうだ?こっちの生活には慣れたか?」
嫌にフレンドリーなのでもしかしたらお酒が入っているかもしれない。こっちの生活がこの世界での生活なのかここ数日の野営生活のことなのか微妙ではあるが「ええ、ぼちぼち。」と答えておく。ダルクは「そうか。」とだけ答えた。
「ガレンなら大丈夫だろう。図太い野郎だし心配はいらない。」
「えっ?」
急にガレンの話題が出たので驚いてしまった。ダルクとガレンではキャラが違い過ぎて面識すらないような気がしていたからだ。
「あいつなら無事だろう。ラザァにとっては大切な人だろう?こっちに来てすぐの時からの付き合いだとか。」
言われて思い返すとガレンはラザァがこちらに来て1時間程で出会っている。初めに見かけたハンターと思われる獣人の一団を除けばミラ、エリーに次いで3番目に出会っている。
この3人は今もラザァの周りにいる。こちらの世界に来て間も無いラザァの心強い味方といっていい。ガレンは城の衛兵というだけあって特に良くしてくれていた。初めに出会ったときにミラについて警戒をするように言ったのもラザァの身を案じての事だった。エリーが誘拐され、ラザァが襲撃された時に助けを求めた時にも快く応じてくれ、バザロフによるテロ事件収束までの間ずっと一緒だった。
そんなラザァの恩人と言っていいガレンが今は音信不通で行方不明なのだ。ラザァは森を探索できると心躍らせていた自分を恥じていた。
「ええ、ガレンには本当に助けられてきました。あの事件の時からずっと…」
気がつくとラザァはダルクにガレンとの思い出を語り出していた。
そんなに長い時間ではなかったが、ラザァが口を開いている間ダルクは口を挟まずに聞き入っていた。
「そうか、それならばなおさら気合い入れて探さないとな。」
「…ええ。」
夜空を見上げるとミラではないが時間が大分過ぎていたのがわかった。そろそろ野営に戻るべきだろう。話はこれまでだとばかりにダルクを見て立ち上がろうとするラザァにダルクが慌てて声をかけた。
「それとっ!それとだな、これはその…俺ではなくて、エリダに聞いてこいとせがまれた事なんだが…」
「…なんです?」
なんだか嫌な予感がする。
「その…あの子、ミラとはどうなんだ?ってだな。」
予感は当たるものだ。
「どうなんだといいますと…」
「その、あれだ。結局どういう関係なんだってエリダが気にしてたぞ。恋仲なのかどうかって。」
ダルクは一体エリダにどんな事を吹き込まれたのか。顔が心なしか赤い。
「別にそんなんじゃあないですよ、まあずっと一緒にいますけど…」
「…そうか、それじゃあその言葉をそっくりそのままエリダに伝えておこう。じゃあ戻ろうか。」
「あのっ!」
「なんだ?」
さっさと話を切り上げれて満足していたダルクに向かってラザァは無意識のうちに呼び止めていた。博識なダルクと2人きりという状況がそうさせたのかもしれない。ずっと気になりつつも話題にしずらかった事を聞くために。
「ミラが…古龍と人間の混血の希少種がどうしてこんなにも疎まれているのか、そしてアルバード ヒルブスが目をつけた理由について聞いてもいいですか?」
気になりつつも避け続けていた話題にラザァは触れた。




