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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
5/109

城下町パイリア

「、、、という訳なの、それでね、、、」


エリーの丁寧な解説はようやく前置き(本人談)が終わってそろそろ世界の行き来の仕組みとかこの世界におけるラザァのような異世界の人間の立ち位置についての話になるらしい。こればかりはミラも同情の眼差しを向けている。


「結論から言うとあなたの世界に帰る事は可能よ、少し条件があるけどね。」


「条件?」


「ええ、ラザァがこっちに来る直前に何があった?なんでもいいわ、多分自然現象の何かがあったはずよ。」


首を傾げたエリーの質問にラザァも首を傾げた。こっちに来た直後は頭がぼんやりとしててはっきり思い出せなかったが、、、


「雷だ!雷がすぐ近くに落ちたんだ!!」


すぐ近くというかほとんど直撃だった気もするがこうしてピンピンしてるわけだし思い違いに違いない。


「やっぱりね、世界を行き来するには自然の大きなエネルギーが必要、または自然の力が発揮されるタイミングに特定の儀式をする必要があるって言われているわ。自然の力が発揮されるタイミングって日食とか月食とかね。」


それで本来交わらない世界同士が交差したのねとエリーは手をポンと合わせながら納得していた。


「その儀式ってのは?僕は特に何もしなかったけど。」


雨宿りしてたら木に雷が落ちてそのままこっちに来た訳で魔術的な事は一切していないはすだ。


「雷みたいにエネルギーが一気に放たれる場合だと空間に歪みが生じて儀式とか必要なしに周りのものを吸い込んじゃうらしいわね。」


「なるほどね。」


どこに飛ばされるのかは運次第らしいし海の上とかに放り出されなかった分ラザァは運が良かったのかもしれない。


「儀式ってのはパイリアに着いてお城で申請すれば専門の魔道官に執り行って貰えるわよ。危険性が無いって判断されればお金はとられないはずよ。」


良かった、どうやらラザァと同じ境遇の人が時々いるだけあって元いた世界に送り返す仕組みは整っているらしい。手続きがどんなものか知らないがそれさえ済めば帰れるようだ。


心の中でガッツポーズ決めてるラザァにエリーが頭をかきながら話しにくそうに口を開いた。


「ええとね、ここからはしっかりと聞いてねラザァ。」


「送り返す仕組みが整ってるといってもそれはあくまで一部の人の理解によってのものなのよ。」


「それってどういうこと?」


エリーの様子から良いことでは無いのはなんとなく察したが回りくどい言い方に妙に嫌な予感がする。


「つまりね、大部分の人は、私は違うけど、、、あなたみたいな異世界からの人間の事を良く思ってないのよ。」


「それくらいならなんとなく予想してたし僕は大丈夫。大人しくしていれば気づかれないだろうし手続きをするだけなんだろ?」


良く思われないの承知していたし(決して初めて口をきいたこちらの世界の住人がミラだからではない。)それくらいなら親戚の家で慣れている。


「甘いわよ、あんた。」


今まで無言で聞いていたミラが口を開いた。


「嫌われるとかその程度だと思ってる?あなたみたいな奴にこの世界では人権ってものがないのよ。」


「ミラも何もそんな言い方しなくても、、、」


見かねたエリーが口を挟んできた。


「知っとくべきなんだし最悪の状況も教えておいた方がいいじゃない。」


腕組みをしてその深い蒼色の目でしっかりとラザァを見つめるミラは言ってる内容が内容なのに思わず見とれてしまう。


「最悪の事態?それに人権がないって具体的にはどういうことなのさ?」


人権って目に見えるものでないのでなくなると普段の生活がどう変わるかイマイチ想像しにくい。


「あんたが何かのトラブルに巻き込まれてどんな無茶な言いがかりつけられてもあんたが悪者にされるって事よ。それにあなたみたいな違う世界の人間を見かけたらすぐに殺したいって思ってるような過激な連中もいるのよ。」


「要は突然ただで殺されてもあんたは文句を言えない立場にいるって事。」


ミラが冷たい声で告げた。ラザァの想像をはるかに上回るとんでもない場所に来たらしい。


なんかの冗談だと思いたくて助けを求めるようにエリーを見たが目が「諦めろ」と言っていたので余計にショックだ。


「最近物騒だけどせいぜい気をつけなさい。」


ミラはそう言って歩くのが急に遅くなったラザァとそれを心配してゆっくり歩いているエリーをスタスタ追い越していった。


げんなりしてるラザァにエリーが大丈夫?と言いながら寄ってきた、顔を覗き込みながら背中をさすってきた。心配してくれるのはわかるがそれは吐きそうな人への対処法ではなかったか?


「あっ!」


そこで突然エリーが素っ頓狂な声を出した。


何事だと顔を上げてラザァはその光景に目を見開いた。


丘の丁度高い周りを見渡せる場所まで来て目の前が一望できた。


そこに広がっていたのは歴史を感じさせるレンガの高い壁に囲まれた都市だった。中央には巨大な城が建っている。城を取り囲むようにレンガ造りの大きな建物が取り囲みさらにその周りには様々な店と思われる建物があり、市場のようになっていた。建物だけでなく公園のようなスペースや森林、川や池などの自然がそれこそ自然に都市に溶け込んでいた。周りを取り囲むレンガの壁にはところどころに門があり、そこを歩く人や車、馬が行き来している。その賑やかな声が今にも聞こえてきそうだ。


「さあ見えたわね。」


エリーが駆け出しながら今日1番の笑顔で言った。


「ようこそ、パイリアへ!!!」

パイリアに着くまでの道のりです。今回は説明回みたいになってしまいましたね。

少し短いですけどキリがいいのでこの区切り方になりました。

今回もよろしくお願いします。

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