第1.5幕 2人のパイリア探索
「ねえ、本棚ってベッドの横にする?机の横にする?」
「うーん、机の横のほうがいいかな、ベッドに入りながら本を読むと寝ちゃいそうだしね。」
「はーい。」
そう言うと銀髪青眼の少女、片目が前髪で隠れていて今日は後ろでポニーテールにしたミラは空の本棚を先ほど置いたばかりの机の横に置く。
ラザァは木箱に詰めていたオードルトからの借り物の本を取り出すと見事な連携でそれを本棚に詰めていく。
場所はパイリア城に勤める者専用の独身寮(男性用)だ。
ここの二階の端がラザァの新居というわけであり、そこへの引越し作業をミラとしているところだ。
引越し作業というと専門の業者がつくと思っていたのだがミラならそこらへんの業者よりも力持ちなのでどうせなら知り合いと一緒にしたいということで2人で荷物を運び込んでいるというわけだ。
ちなみにガレンは最近城勤務になったせいか忙しくて来れなかった、エリーは学校だ。
引越しと言ってもほとんどラザァの荷物はなかったのでオードルトからもらった必要最低限の家具を設置するだけだ。実際もう直ぐ終わりそうである。
ラザァはミラにジト目で見られているのに気がつき、サボりと思われたくないので作業に戻っていった。
「ひと段落したわね。」
「そうだね。」
ミラの活躍もあり荷物の運び込みと整理はすぐに終わった。部屋はやや寂しいが十分に暮らすことのできそうな感じにはなっている。
「待ってね、今飲み物出すから!ガレンにお茶の葉もらったからそれ使おうかな。」
功労者のミラをねぎらうために台所へ行く。部屋の構造はというと、入口のすぐ横に小さな風呂場とトイレ。廊下兼台所を抜けると寝室と書斎を合わせたような部屋がひとつだ。お世辞にも広いとは言えないが小綺麗で一人暮らしには十分だろう。
ミラは道路を挟んで向こうにある独身寮(女性用)に住むのだが、どちらの部屋にも入った彼女曰く女性用の方が広いらしい。
医務室に泊まっている間に暇を持て余していたのでヘレナからお茶の葉からお茶を作るやり方を聞いていたので早速試してみる。
なんとか2人分のコップにお茶を淹れると真新しいお盆に載せ、居間へ運ぶ。
居間へ戻るとミラはベッドの上でゴロゴロしていた。
無防備に寝転がっているためシャツの裾が捲れて白い肌が見えており、ラザァは慌てて目を逸らした。ミラは気がつくそぶりも見せないで転がっている。
ラザァがミラと出会ってからの三日間。つまりシヴァニアのテロリスト、 イワン バザロフと爆弾を巡り激戦を繰り広げていた間はミラはずっと銀色のワンピース、要は体のラインがわかりにくい服を着ていたが今は普通のシャツに膝あたりまでのゆったりしたズボンに裸足だ。ちなみにズボンというよりスカートをそのまま縫い合わせたみたいなぶかぶかしているやつである。
何が言いたいかというとミラが想像以上にスタイルが良かったということがここにきて発覚したということだ。
足が長く、すらりとしているが運動神経が良いことに関係して程よい身体つきだったのは初対面の時から感じていたのだが、今日のような服装だと出るところはしっかり出ている女性らしいということが丸わかりなのだ。今日の作業中も前かがみになる時に色々と見えてしまいそうで何度も顔を逸らしたりしていた。
ミラの性格から特に気にしていないのも拍車をかけていた。
ラザァは妹がいたので女の人と話すのは慣れていたのだが、残念なことに恋人などいたこと無いため、当然今日のミラのように薄着でスタイルのいい女の子が部屋に来ている経験などあるはずもなく、色々と落ち着かないのだ。
「あっ、ありがと!」
ミラはそんなラザァの内心を知ることなくひょいとベッドから跳ね起きると床に置かれたテーブルの前に座る。ラザァとその向かいに座り、2人で静かにお茶をすすっていた。つい先日まで命をかけた戦いに臨んでいたとは思えないくらい平和だった。
「そう言えば食器とかひとつもなかったよね。どこに行けば買えるかな?」
ラザァが荷物を整理していた時は食器など食べ物関連はひとつもなかったはずだ。ちなみに給料を貰えるまでの間としてオードルトからお小遣いをもらっているので一応買い物はできる。一都市のトップからお小遣いをもらうなんてその家族を除けばラザァくらいだろう。
「食器なら市場行けば選び放題よ。どこでも大して値段変わらないしすぐに決められると思うわ。」
再びベッドの上でゴロゴロしているミラが答える。ミラにベッドの上を占領されているため部屋の主のはずのラザァは床でゴロゴロしながら本を読んでいた。なんかおかしい気がするが面倒臭いため放置である。
「そっか、それなら夜までに市場に行けばいいし急がなくても大丈夫そうだね。」
「ラザァ、何か他に用事でもあるの?暇してるようにしか見えないけど。」
ミラがこちらを見もせずゴロゴロしながら言う。
「ミラ、今日この後も大丈夫?」
ラザァはかねてからの頼み事を今言おうと起き上がる。
「えっ?まあ特にすることも無いし大丈夫だけど…何?」
ミラも顔を上げて怪訝な顔でラザァを見る。
「結局僕のパイリア観光の案内まだしてもらってないよね?今頼んでもいいかな?」
とあるよく晴れた日の昼下がりのことだった。
幕間の短編エピソードです!
特に深く考えずに書き出しての投稿なのでアイデアが出なければ更新遅れるかもしれないです笑
それでは改めまして今後もシュナヴェルをよろしくお願いします!




