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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
18/109

黒幕


「なんで、、、なんであんたがここにいるの!?」


車庫の中にミラの驚愕した声が響く。


その青色の視線は真っ直ぐに目の前の人物に向けられていた。


目の前の男、金髪の30代前半くらいに見えるラザァが勝手にボス風男と名付けていた男だ。


「あんた、あいつの仲間よね?なんで?なんでここにいるの?」


男は答えない、血走った目でミラとエリーを睨みつけたまま手に持った拳銃をミラの左胸、心臓に向けている。


「あいつなのね、、、エリーを誘拐したのも、、、パイリアを燃やすとか言ってるのも全部あいつなのね!!!!あいつが!あいつが、、、」


ミラはエリーを庇いながら男に怒鳴りつけた。


その時ミラの綺麗な青色の目が鈍い光をたたえたかと思うと燃えるような赤色に染まった。髪の毛がまるで意志を持ってるようにうねうねと動く。


ずっとミラにしがみついていたエリーがミラの様子がおかしいことに気がつく、見た目だけでなく今のミラは全身から見えない何かオーラのようなものがでている、何か神々しい別な存在のように。


エリーの震えを感じ取ったミラが振り返り、エリーと目があう。つまりエリーはミラのいつもと違う真っ赤な目を見てしまった。


「いやあああああああああ!!!!」


ミラの変貌を見たエリーが悲鳴をあげながらミラから離れようと走り出した、男はその隙を見逃さなかった。


ミラを狙っていた拳銃の銃口が動く。狙いはパニックになっているエリーだ。


ミラがそれに気が付き止めようと男へ向かって物凄い勢いで飛びかかる。


男がミラを恐れ逃げたなら良かったかもしれない、だが男は構わず引き金を引き、その時エリーが力なく崩れ落ちた。


「!!!!!!」


ミラは声にならない叫び声をあげると男の顔面へ手刀を向ける。この勢いで刺されば致命傷は免れないだろう。


男は拳銃を盾になんとか凌ぐ。拳銃はバラバラに分解して床に散らばる。


一度間合いを取った男は腰から長いコンバットナイフを抜き、同じくナイフを出したミラと白兵戦を挑んだ。


身体能力で勝るミラと武器のリーチで勝る男の戦いは中々決着がつかない。


「俺なんかに構ってていいのか?早く手当をしないとあの子死ぬぞ?」


男が意地悪く言う。心理戦だとわかっていても激昂しているミラには冷静に対処するだけの余裕など無かった。


「お前らは!また私から奪うつもりなのか!!」


ミラの攻撃には手加減がない、喉や心臓を狙い始めから殺す気なのだ。


「呪うなら自分を呪え!この化物女が!それに今俺たちを殺してももう遅いぞ!パイリアごとくたばれ!」


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」


ミラの攻撃に一層力が入る。その時だ


「ミラやめろ!」


2人の背後から声がした。ラザァだ。


「ミラやめてくれ!そいつを殺したら爆弾にたどり着く手がかりを失ってしまう!」


「こいつはエリーを、、、だから殺す!」


そう叫んでふとラザァの方を向いたミラ、ラザァはミラの真っ赤な目を見てギョッとするがすぐに気を立て直し説得を試みる。


「街を、パイリアを焼き尽くされてもいいのか!?」


「そんなもの知らないわよ!」


「ミラがそんなことしてエリーが喜ぶと思うのか!?」


ミラを止めるにはこれしかないと思っての発言だった。


だが、動揺したミラを男は見逃さず、ミラの脇腹に回し蹴りをクリーンヒットさせた。


ミラはナイフを落としながら地面に叩きつけられる。


顔を上げたミラの喉には男の大型コンバットナイフが突きつけられていた。肌から刃先まで1センチもない。


「死ね」


男が手に力を込めたとき、乾いた銃声と共にナイフが床に落ちる音が響いた。


銃声のした方をミラが見ると震えながら拳銃を構えたラザァがいた。


初めて人を撃ったラザァは手から拳銃を落とすと震えながらもミラの元に駆け寄った。男は信じられないといった様子で脇腹にできたどんどん大きくなっていく血のシミを見つめていた。


「あんた、どうして、、、」


ミラが信じられないといった様子でラザァに話しかけてきた。やめてくれ、普通立場が逆じゃないか。


「ごめん、手の震えが止まらなくて、、、」


初めて人を撃ったのだ、ラザァは手の震えを止められないのだ。人の命なんて簡単に吹き飛ぶって知りたくない事も実感した。


その時、男がニヤリとした気がした。


ラザァは目の前の男を見るといつの間にかすぐそばまで血を流しながらも歩いて来ていた。


その手がポケットに突っ込まれているのを見てラザァは再三見た光景を思い浮かべた。


「ミラ!危ない!」


ラザァは半ばミラを抱きかかえるように転がって男から距離を置いた、その時すぐ後ろで大きな爆発が起きた。爆風と共に血まみれの服の残骸らしき物とかが飛んでくる。背中に爆弾の破片やら男が身につけていたベルトの破片やらがぶつかって痛い。


衝撃がやむと腕の中で固まっている少女の無事を確認する。


「大丈夫?」


相変わらず目は燃えるような赤色だがそこからはさっきまでの殺意は消えていた。代わりに驚いた表情でラザァを見つめている。こんなに顔のつくりが良い女の子に至近距離で見つめられたことなど無かったので思わず顔が火照るのを感じ、顔を背けた。


「あんたって、、、どうして、、、あっ!エリー!!」


ミラはラザァの腕を振りほどくと近くに血を流して倒れている友人の元へ駆けて行った。


あの赤い目は一体?


赤い目で髪の毛が銀とのことでウサギがまず頭に浮かぶ。だが元々青い目なのに突然赤くなるとはどういうことなのか。ラザァには獣人に関する知識が圧倒的に少ないので考えてもわからない。ミラのあの態度からしてボス風男と何かしらの因縁があったのは確かだろう。犯人死亡の今、手がかりはミラだけだ。


ラザァは内心で今後の方針を固めつつ懸命に意識の無いエリーに話しかけているミラの元に寄って行った。


エリーは腹部に銃弾を受けて血を流していた。急所は外れているがこのままだと失血死しかねない。


「ちょっとどいてミラ。」


オタオタしているパニック状態のミラの脇にかがむとそばにあった木材の破片をエリーのお腹の下に置いて傷口の位置を心臓より上にする。昔山で怪我をした漁師が仲間にしてもらっていたことの見よう見まねだ。


次にラザァは自分の服の袖を破るとそれを丸めてエリーの傷口に当て、その上からこれまたラザァの袖製の紐で縛って止血した。あくまでも応急措置だがこれで病院に行くまでは持つだろう。誤解でテロリスト扱いにされているガレンはともかくアズノフなら女の子1人運んで軍の病院でも普通の病院でも行くのは容易そうだ。


ふう〜と一息ついて額の汗を拭いていると隣のミラが何か言いたそうにもじもじしているのが横目についた。見ると目は既に普段の青色へと戻っている。


「何?」


「その、エリーのこと、ありがとう、、、私、殺すことしか能が無いからどうすることも出来なくて、、、」


「そんなこと、、、それにミラは、、、」


「大丈夫か!?悪い、さっきの爆発で崩れてきた箱の山をどけるのに手間取った!」


ミラとラザァの会話は奥から出てきたガレンとアズノフによって強制的に中断された。


「こっちも自殺された、それにエリーが撃たれた、アズノフは病院に連れて行ける?」


ラザァはミラのそばから立ち上がりながら中年2人に話しかけた。ガレンは小さく「そうか」とつぶやき、アズノフは「何!?見せてみろ!」とエリーに駆け寄る。


「撃たれているが急所は外れているな、この応急措置ラザァがしたのか?ナイスだ。これなら病院までは大丈夫そうだ。」


現役軍人に傷の応急措置を褒められるのはなんとも名誉なことだ。


ガレンはボス風男が自爆した後に躊躇無く寄り何か手がかりは無いか探している。しかし、跡形も無く爆発していたためそこから手がかりは難しそうだ。案の定ガレンもこちらを見て首を横に振っている。


残る手がかりはそこらへんに残っているテロリスト達が使っていた電話や武器類、そしてミラがあの金髪ボス風男と何かしらの因縁があるらしいということだ。


親友を傷つけられ、気は進まないがミラに事情を聞こう、ラザァはまた謎の増えた少女に話しかけようと足元を見る。


そこにはさっきまでエリーの様子を見ていたミラの姿は無かった。


慌てて見渡すもどこにもミラの姿は無い。


「ん、どうかしたか?」


キョロキョロと周りを見ているラザァに気が付きガレンが話しかけてくる。ガレンもアズノフもまだミラの姿が見えなくなったことには気がついていないらしい。


「ごめん、ちょっと調べたいことがあるんだ。」


そう言うとラザァは2人にミラの事を話さずに奥の方へ向かった。



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