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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
13/109

守る側の人間

敷地内に潜入したラザァとミラは建物の壁に張り付くと中を覗き込めそうな窓などが無いか探していた。

今のところ敷地内に人影は無い。


「中から何か物音がするわね、やはり誰かいるみたい。」


相変わらずミラの人外な聴覚が冴え渡っている。ラザァには何も聴こえない。


「くれぐれも無茶はしないでね、レスフォードさんが到着するまでは様子を見るだけだからね。」


ミラが強いのは充分理解しているがさすがに敵陣のど真ん中で好き勝手できるとは思わない。


「しつこいわね、わかってるわよ!」


ミラは動きやすいように長い銀の髪の毛をポニーテールに結びながら言う。前髪で片目が隠れていてわかりにくいが元々の顔の作りが良いためどんな髪型でも似合ってしまうのが正直羨ましい。


「あったわ、窓よ。」


ミラは窓を見つけると恐る恐る中を覗き込む、端から目を走らせ、そしてハッとしたように凝視する。

その目には明確な敵意が見て取れた。


「ビンゴね、あんたの正解よ。」


再びしゃがみ込みミラが誉めてきた、それと入れ替わるようにラザァは膝立ちで窓から中を覗き込む。

中は使われていない車庫だけあってさみしかったが、新しい軍用車が1台と(普通のジープだが装甲が厚そうだ。)机があり、その上には飲み物と電話がある。

そして何よりも机の隣には猿轡をはめられ椅子に縛り付けられたエリーの姿があった。

その後ろには小銃を持った軍人風の男が2人、机の前の椅子に1人の金髪の男が座っている、こいつは背を向けているため顔が見えない。

ラザァは2人の軍人風の男の1人に見覚えがあった、昨日の門での検閲で出会ったリード二等と呼ばれていた奴だ。

レスフォードの言っていた事は本当らしい。


「どうする?見えるだけでも3人いてうち2人は重装備だよ。それに死角にもいるかもしれない。」


ラザァはしゃがみ込んでミラの隣に来ると尋ねた。

倉庫の出入り口は車用の大きなシャッターが一つ、これは閉じているから却下だ。それと人間用のドアが一つだ。他には窓が何箇所かある。

ラザァ達が今覗き込んだ窓だけだとどうしても内部の様子に死角があり、敵が全部で何人いるのか正確に把握できない。


「一度移動して他の窓から覗き込んで全体を把握した方がいいかもしれないわね。」


ミラもさすがに今のままだと情報が少なすぎると思っているらしい。

2人で移動をし、一つ隣の窓の下まで移動する。

ミラが周囲を警戒している間にラザァはまたしても膝立ちになり窓の中を覗き込もうとした。

その時ミラが持っていた電話が突然鳴り響いた、当然中の銃を持っている兵士がこっちを見てすぐさま発砲してきた。


まずい、避けられない。


弾丸はラザァの顔面目掛けて放たれたのだ。

死を覚悟した直後、足が下に引っ張られ、ラザァの身体が傾く。

弾丸が頬をかすり、わずかに血が出た。


下を見るとミラがラザァの足にしがみついていた。ミラは電話を切るとすぐに体勢を立て直すとラザァにだけ聞こえる声で、しかししっかりと言う。


「何してるのよ!はやく逃げないと!」


ミラは手をグイグイ引っ張ってくる。


ダメだ、仕留め損なったと気がついている兵士がこっちに向かってくるところをラザァは見ている。

間に合わない。

ミラだけならばあの俊足ですぐ逃げることもできるだろうがラザァには無理だ。

それに出てくる兵士と戦うのもダメだ。

それだとエリーの命が保証できない。


八方ふさがりな状況で考える。エリーも助けられてかつこの場をうまく切り抜ける方法はないのか?


エリーを助けるのためにはどうすれば、いや、違う。

エリーを助けるのが最大の目的だがまずミラを助けなければ、ミラをこの場からうまく離脱させなければ始まらない。

ラザァは敵の潜伏先を見つけるのには役に立てたが戦闘技術ではミラの足元にも及ばないだろう。

ミラが退場してしまえばおそらくエリーを無事に助ける見込みは完全になくなる。

敵と戦ってもダメ、ラザァを連れてだとミラも逃げることが出来ないというこの状況でのラザァの出した結論はこうだ。

自分の事はいいがミラだけはなんとしてもこの場から無事で隠し通さなければならないのだ。


瞬時に頭の中で考えをまとめたラザァはミラにつかまれた手を引き寄せるとそのまますぐ側に倒れていたドラム缶の中にミラを押し込んだ。


「ちょっと!あんた何してるのよ!」


「いいから、静かにしてて!そして必ずエリーを助けるんだよ。」


ラザァはミラに手短に伝えるとすぐに窓の真下に戻り頬を押さえて倒れているふりをした。

ミラがこちらを見ようとしたが工場のドアが勢いよく開いたのを見てドラム缶の中に引っ込んだ。


「何者だ?」


男は低い声で小銃を構えながら問いただす、見ると例のリード二等兵だ。

リードもラザァに気がついたのか表情を変えた。


「面白い奴がいるな、ここに何の用なのかじっくり教えてもらおうか。」


リードは小銃を向けると立て!と命令した。

ラザァはとりあえずすぐに殺されなかったことに感謝して従った。


ラザァが背中に小銃を突きつけられながら工場の中に連れて行かれ、ドアが閉まったのを確認してからミラがドラム缶から出てきた。


「どうして、、、」


ミラの力のない呟きは夕焼けに消えていった。

もう少しスペースを空けた方がいいと友人に指摘されたので少し改良したつもりです。

それと中世風のレンガの建物とかあるのに電話とか軍とか出てきて世界観はどうなってるのかと聞かれたのですがイメージ的には天空の城ラ○○タくらいな時代です。

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