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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
11/109

裏切り

パイリア軍のガレン レスフォード一等兵は今朝から不機嫌だ。


今日からパイリア軍には遠くの軍事工場から届く新型兵器の輸送の護衛という非常に大きな任務があるのに、ガレンはそちらの任務につけてもらえず暇を持て余していたからだ。


いつもなら街を見回りしながらのんびり出来るため嬉しい限りなのだがこんな時にはなんか力を認められていないようでとても癪にさわる。


することも無いため、どれ自分を干した上の指揮官の名前でも探してやろうかと机の上の書類の書類の山を探る。


普段から仕事場の机を片付けないガレンが悪いのだが案の定すぐに机の上は無法地帯になりコーヒーをこぼしてしまった。


「あーあ、おーいリード!何か拭くものを持ってきてくれ!」


ガレンは書類を避難させながら最近下に配属された若い部下を呼ぶ。


「リード?」


どうやら外出しているらしい、全く上司に報告もしないで勝手に外出してるとは、俺は部下にまで舐められてるのか。


ガレンはまた落ち込むと渋々自分だけで片付け始めた。


怪我の功名というべきか目的の書類が崩れた山から発掘出来たのでコーヒーそっちのけで責任者の欄を見る。


レオン ウィズ 警備隊長


そんなに地位の高くないガレンでも知っているパイリア城直属の警備兵長官だ。


そんな忙しい大物を兼任させる程とは今回運ばれてくるものは何なんだ?書類の中から探してみるか。


その時部屋のチャイムが鳴った、ようやく仕事の呼び出しか?それにしては電話でいいはずだ、などとガレンは考えながら入り口へ向かった。




「持ってきたよ!ミラ!」


ラザァはミラに持ってきて欲しいと言われた水の入った瓶を手渡す。


「ありがと。」


ミラは素っ気なく返事をして受け取るとその水を地面で伸びている男の頭にかけた。


「、、、っつ」


男が微かに動いたのを見るとミラは容赦なく襟を掴んで壁に押し付けた。


「なんで私達を殺そうとしたの?最近エリーをつけてるのもあんた達ね?」


男はうっすら目を開けるとミラを一瞥し唾を吐きかけた。


ミラは男を叩いて地面に叩きつけた後、ナイフを突きつけながら顔の近くにしゃがみ込む。


「いいから吐きなさいよ。なんで私達を狙ったの?」


「別にお前らだから狙った訳じゃない、あの女に関わった奴なら誰であっても足止めしときたかっただけだ。」


「、、、それってどういうこと?」


男の随分と回りくどい言い回しにミラが頭の上に疑問符を出している。


「今にわかるさ、、、あの衛兵と古道具屋のじじいも同じような目にあってるだろうよ。」


どちらもラザァとエリーが出会って会話した人間だ。


「昨日ずっとつけていたんだね?」


ラザァが頭に浮かんだ恐ろしい考えを口に出す。


昨日はエリーと別れた後ミラと2人になってからつけられていたと思っていたが恐らくずっとつけられていたのだ。エリーに近づく障害を見極めるために。


「ああ、おかげであの娘の周りを常にうろついている兵士をこっそり始末できた。素晴らしいお父様だな、あの娘の父親は。」


「それで次は僕達ってことか。」


「ああ、父親がつけた護衛はみんな始末したが念には念を入れてな。じじいと門の衛兵には悪い事をしたよ。」


男はニヤニヤ笑いを浮かべながら勝ち誇って言った。


「エリーをどうする気!あの子に何かしたら絶対に許さない!殺してやる!」


ラザァの考え理解したミラが怒りを露わにして男に掴みかかる。手のナイフは今にも男の喉に突き刺さろうとしている。


「どうせ元から殺す気なんだろ化物が!それにもう遅いぞ。」


そう言って男はポケットから無音で着信している電話を取り出した。


「この電話はお前らのお友達の誘拐が成功した時だけかかってくるようになってたんだ。もう遅い。」


そう言うと男は口の中で何かを噛み潰したかと思うとすぐに痙攣し始め、口から青い泡を出しながら倒れた。


「入れ歯の中に毒を隠していたのね。」


ミラが口を開けながら言った。


「そんなことよりエリーが、、、」


「わかってる!!」


ミラがラザァが言い終わる前に怒鳴って遮るとポケットにナイフをしまい、男の腰から拳銃とナイフを抜き取り立ち上がった。


「エリーは私が必ず助ける、たとえどんな手を使っても必ずよ。」


「ありがとうね、ここからは私1人でやるわ。無事に元の世界に帰れるといいわね。」


ミラは顔を伏せながら立ち去ろうとする。

その言葉をそのまま受け取っていいのか、ミラの異常な強さと人を殺した場面を目撃した後だとどう考えてもここで退くべきなのだろう。だがラザァにはエリーを見捨てて、ミラを1人だけで向かわせるなんて出来なかった。


出会ってまだ2日目だが2人には借りがある、それにミラはどこか自暴自棄というかエリーのために自分の命を軽々しく投げ出しそうな雰囲気を出している。そんな彼女を1人にするのはラザァの直感が許さなかった。


「待って!僕も行くよ!」


ラザァはミラを追いかけて、追い越し、行く手を阻みながら言った。


「何言ってるのよ!?これ以上はあんたに付き合う義務は無いのよ。それにあんたに何が出来るのよ!」


ミラは驚いたように言った。


「義務は無くても手伝うよ!自分を助けてくれた人が危ない目にあってるのに放っておける訳無いだろ?それに敵がまた僕を狙ってくるかもしれないし僕のためでもあるしさ。」


「それにミラはエリーが今どこに連れて行かれたかアテがあるの?」


恐らくミラは無理矢理でもラザァを引き止めるだろう、彼女は口はきついが本当は他人思いの優しい女の子なのだ、彼女のエリーへの態度を見ればわかる。


そんなミラを納得させて手伝うにはこうして挑発したような口調でも使わないと無理だろう。


「それは、、、」


「わからないの?僕はアテがあるよ。」


ミラに手伝わせるための口から出まかせだ。


「なら早く言いなさい!」


「それなら僕を手伝わせるって約束して!」


「あーもうわかったわよ!手伝いでもなんでも勝手にしなさい!だから早く教えて!」


ミラがようやく折れた。


ここでミラを納得させなければ、考えろ。


エリー、誘拐、父親、城、警備、軍、衛兵、さっきの男。


さっきの男はなんて言ってたか、父親がつけた護衛がどうとか。


そこで全てがラザァの頭の中で繋がった。


「まだ?早くしないとエリーが!」


「わかったよ、ミラ、エリーは父親の部下の兵士にひそかに護衛されていたんだよね?」


「確かにあの男はそう言ってたわね。」


「そんな状態のエリーが簡単に誘拐されるっておかしくない?」


城の警備のボスをやるような人間が厳重に守らせた女の子を簡単に誘拐出来るとは思えない。


「確かにそうだけど事実誘拐されたじゃない、それのどこがアテなのよ!」


「護衛の中に裏切り者がいたとしたら?誘拐なんて訳ないことなんじゃないかな?」


護衛している兵士なら他の本当の護衛を倒してエリーを誘拐するなど容易だろう。味方が襲ってくるなど夢にも思ってないのだから。


「あっ!」


ミラも何かに気がついたようだ。


「そう、兵士が裏切りでエリーを誘拐した、それなら簡単に連れ込めてかつ一般人が近寄らない場所があるはずだ。」


「恐らく、、、今は使われていない軍の施設、、、」


ラザァが考えていた最後のピースはミラが見つけてくれた。


「ミラ、僕はパイリアに詳しくない。ミラはわかる?軍の人なら入れて、しかも普段は人が近寄れなさそうな場所。」


ミラは無言で頷く。


ここから2人でのエリー奪還作戦の始まりだ。

11話目です。

少しずつ今まで出てきたキャラが繋がってきました。


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