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Schneiden Welt  作者: たる
第三幕
108/109

白き凶刃

「敵の総数は!?」


「わかりません!!」


パイリア城直轄の重要証拠などが保管されている病院は今や大混乱だ。警備にあたっていたアズノフは素早くロビーにバリケードを築くと正面から押し寄せて来た未知の敵へと応戦した。


敵も正面にある車や花壇を盾に入り口を固め銃弾の雨嵐を降らせる。


「あいつの言ってた通りあの腕が重要だったってことか!くそっ!!」


この病院の警備が決まったのは一昨日の事、城の中で今回の事件にシヴァニアが関わっているという疑惑が出てからの事だ。そしてこの襲撃、3ヶ月前に回収されたイワン バザロフの腕絡みとしか思えなかった。


つい先ほどの襲撃現場から回収された敵の死体が運び込まれたばかりでこれから照合しようとしていた矢先のこの敵襲だ。


「幸いこれだけ派手にやってくれてるんだ、通報しなくてもお巡りさんは駆けつけてくれるだろ。」


弾幕の合間を縫って手にした拳銃で反撃する。敵もかなり数がいるようだが一人一人が手練れでなければ援軍が来るまで持ちこたえるなど造作もないだろう。


「ネイクさん、あいつらの武器って……」


横にいた部下が壁にできた敵の銃撃による大きな穴を見つめながら囁く。


「ああ、ホローポイント弾、この辺だとシヴァニア以外では製造されていない殺人兵器だな。」


弾頭がキノコ状に変形し着弾した先を粉々にする通常の弾丸よりも殺傷能力に優れた弾だ。魔法については遅れをとり、代わりに科学技術の発展したシヴァニアのみで大量製造されている最新鋭の兵器。


「ってことはやはり……」


「いや、むしろ違うな。」


「えっ!?」


部下の不安そうな声をかき消すようによく通るアズノフの声。


「敵が本当にシヴァニアの軍人崩れなら俺らは今頃あの世に行ってるぞ。」


そう言ってバリケードからすばやく身を乗り出し敵を1人撃ち抜き、すばやく身を隠す。


「本物のシヴァニア兵はこんなに目立って、しかも効率の悪い襲撃はしない、やつらはもっと狡猾だ。」


最初の爆弾と機銃によって外壁や入口の警備員こそやられたものの、それ以降の敵襲に関していえば射撃能力や身の隠し方などは本職の軍人とは言い難かった。3ヶ月前にわずかに合間見えたテロリストも身のこなしに関しては本職の軍人に負けず劣らずだったのにだ。


「とりあえずこいつらを追い返さないと……何だ?」


バリケードから向こうを除いていた部下が訝しげな声を上げる。


「どうした……?って何だあれ?」


アズノフも顔を出す。


先ほどまでは車や花壇、邪魔かの陰にマントの敵がちらほら見えていただけなのだが、そいつは視界のど真ん中に隠れることなく立っていた。


遠くなので正確にはわからないが恐らく身長は3メートル近く、ただしすらりとして重量感は感じさせない。全身真っ白の布を纏い、赤い帯を腰に巻いてまとめている。そして切れ目のような細長い目、大きな耳、閉じられてなおはみ出している牙、大型犬のような顔。


「獣人?この辺では見ない個体ですね……」


部下はしげしげと眺めながら呟く。


「あの見た目……もしかして……」


アズノフには巨大な犬の獣人の姿に見覚えがあった、それも図鑑や新聞ではなく過去の犯罪者リストに。


「どちらにしろ敵っぽいので……」


小銃の照準を白き巨体に向けた部下が引き金を引く事はなかった。


突如姿を消したかのように見えた獣人は次の瞬間にバリケードの内側に出現し、懐から取り出した細長い片刃剣で部下の首をはねていた。


バリケードの内側から悲鳴があがる。


「くそっ!」


いち早く立ち直ったアズノフが獣人に向けて発砲するが獣人はいとも簡単によけると病院の中側へとバックステップした。


「俺はお前を知ってる……昔傭兵として幾多の戦場で無抵抗の捕虜への虐殺を行った通称 犬神だな。」


犬神は答えるかのように喉を鳴らす。


'''幸いバリケードは破られていない。ならば'''


アズノフは腰から軍刀を抜くと目の前の犬神目掛けて突っ込んで行った。


「グルルル…」


犬神は喉を鳴らすと案の定向かって来ずに病院の中へと走って行った。


「お前ら!そこはなんとしても死守しろ!!俺はあいつを仕留める!!」


アズノフはバリケードで以前銃撃戦を繰り広げている部下に激励をすると犬神を追って病院の奥に向かって駆け出していた。

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