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Schneiden Welt  作者: たる
第三幕
105/109

護衛官

「最高議長!お怪我は!?」


「おお大丈夫じゃ、さっきの爆発でちょっと頭を打ったくらいじゃ。」


ウェルキンがバスの中を見渡した時にオードルトの姿が見えなかったので心配したが倒れ込んでいただけらしくて胸をなでおろした。


数分前に先導車から切迫した声の電話が鳴り響いたかと思えば前方の車両が揃いも揃って急停止し、上から大量の爆弾が降って来た。


幸いこの小型バスは軍用の護送車で手投げ爆弾くらいでは装甲や窓を破ることは出来ないが、辺り一面火の海で大破した車や電柱がそこらに倒れてとてもじゃないが走行できる状態ではない。それに爆撃は先ほどよりは治まって来たがそれでも断続的に爆発は続き、路地裏から絶え間なく銃声が鳴り響いている。


「ホービス護衛官外の様子は!?」


「屋上と路地に敵影多数としか……恐らく始めの衝撃で車を止めて外に出た兵士はほぼ全滅かと……」


さっきから雨のように降り注ぐ弾丸は皆後続の車めがけて放たれている。まるでそこから敵をあぶり出そうとしているかのように、そしてそのことは既に車の外に敵は残っていない事を示している。先頭の装甲車部隊は既に壊滅状態なのだろう。


「わしが行く。」


後ろで話を聞いていたオードルトがゆっくりと立ち上がった。


「ダメです最高議長!」


「お立場をお考えください!」


周りの衛兵が必死にオードルトを引き止める。彼の魔法攻撃は非常に強力だが、この敵の数もわからない状況で外に出て行くのはいくらなんでも危険すぎる。そもそもこの襲撃自体オードルトを狙ってのことなのでオードルト自ら前に出て行くのは敵の思う壺だ。


「じゃがこのままだとジリ貧じゃぞ!」


「私が行きます……」


気がつくとウェルキンはそう言っていた。


「この地形だと私達はいい的です。まずどこかの屋上を奪還して、そこから屋上全体を制圧します。そうすればこちらと相手はともに地上での戦いで条件は五分五分です。」


このままと上からと路地からの銃撃で身動きが取れない、まともに戦うためにはまず屋上を制圧する必要があるのだ。


「でもそんなこと……」


衛兵の1人が不安げな顔を向けた。


「ええ、はじめに屋上を目指す人はかなり危険でしょうね。その役目は私が引き受けます、みなさんには援護をお願いします。」


自分でもなんでこんな勇敢な発言をしているのかはわからない、昨晩ラザァと話した時に任した的な事を言われたことが原因かもしれない。


いずれにしろこのまま引きこもっているといずれ装甲を破られるか丸焼きにされる、誰かが飛び出して突破口を開かなければならないのだ。


「ラザァのとこのホービス護衛官か、中々勇敢ね、私も手伝うわ。」


ウェルキンの背後から覇気のある声がしたと思うと、小型バスの助手席にいた女兵士エリダ ギスレットだった。


「シヴァニアでもなんでもいいけどこの落とし前つけさせないとね。」





「狙うなら1番近いあの建物ね、弾は多めに持ちなさい。」


「はい。」


「ギスレットさん、援護射撃の準備出来ました、そちらの合図でいつでも開始できます。」


ウェルキンとエリダはバスの出口で待機し、外の様子を伺っていた、未だに爆弾は爆発しているが装甲車の壁を撃ち抜くにはいたっておらず、パイリア兵も車の中に立てこもって応戦しているため戦況は膠着状態にあった。


ウェルキン達が狙っている建物の屋上にはスナイパーが2人、一階の窓と路地に数名の敵がいるのがわかる。全身はわからないがみな重装備なのは確かだ。


「それじゃあ3つ数えたら同時に飛び出すわよ。」


「はい……」


「3,2,1……」


異様に長く感じたカウントの後、エリダはドアを勢いよく開け拳銃で路地の敵を狙い撃ちながら走り出した。ウェルキンも一階の窓から顔を覗かせている敵を狙い撃ちながらそれに続く。


さすがに相手の対応も素早くすぐに銃弾が雨のようにふりそそいだ。


「いけるわ!」


エリダは素早く路地にいた2人を撃ち倒すとすぐさま路地に駆け込んだ。


ウェルキンと銃撃戦を繰り広げている一階の敵は窓枠を上手く使い中々仕留めることができない。


「ホービス護衛官伏せて!」


先に路地にたどり着きこちらを見守っていたエリダが叫ぶ、その声を聞きウェルキンが伏せると同時にすぐ目の前の地面が吹き飛んだ。


「向こう側のスナイパーからも狙われてる!気をつけて。」


エリダも向こう側の屋上に銃撃しているが拳銃では厳しいものがある。


「くそっ……」


ウェルキンの周りの地面は絶え間なく銃撃を受け、少しでも立ち上がれば即座にあの世行きらしい。


そんな時、ウェルキンの周りが急に暗くなったかと思うと銃撃が止んだ。


「さすが最高議長ね……ただのエロじじいじゃないわ……」


恐る恐る背後を見ると傍に停めてあったトラックが宙に浮き、盾の役割を果たしていた。


「最高議長の魔法!?あのバスは魔法を通さないはずなのに!?」


軍用の護送車には魔法による暗殺や逃亡を防ぐために魔力を一切通さない鉱石が仕込んである。だが窓が開いているのもあるがオードルトは自力でその魔石の力を破ってウェルキンを守ってくれているらしい。この時は心の底からオードルトが敵ではなく味方で良かったと感じた。


「ありがとうございます最高議長!」


ウェルキンは立ち上がると全力ダッシュで路地に飛び込みエリダと合流した。


「間一髪ね、さあ行くわよ。」


エリダはそう言うと裏口の扉を蹴破り、暗い廊下へとライトを照らした。

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