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Schneiden Welt  作者: たる
第三幕
102/109

「それでそんなに落ち込んでるのか。」


「うん……」


場所はパイリア城の一室、ガレンの部屋だ。


全く事情が飲み込めないうちにミラに怒鳴られて困惑するままに城の中をふらついていたらガレンに拉致されて連れてこられたのだ。

ガレン曰くフラフラしてて放っておくには危ないとのこと。


連れてこられてからガレンは何も言わずに自分の仕事を始めていたが、気がつけば口を開き、さっきのミラとの会話の内容を話し始めていた。


ガレンは特に口を挟まずに聞き、始めて発した言葉が冒頭だ。


「そりゃあ自分の用事断られて他の人と遊んでいた事知ったらミラでなくてもイラっとはするだろ。また怒鳴る程怒る奴は多くはないと思うが。」


ガレンはコーヒーを一口飲んでから言った。


「それもそうだけど、エラーだってミラに聞かれたくない話だってあるだろうし、事実今回はそれだったんだからさ……」


元はと言えばラザァがエリーと2人で会うキッカケはミラの正体についての話だったからであって土台ミラに聞かれるわけにはいかない話題なのだ。


「ミラの正体ねえ、確かにいくら聡いエリーでも親友が古龍の人間の希少種だなんて思ってもいないだろうからなぁ。事実先例が全く無いわけだし。」


ガレンも椅子の上に胡座をかいて腕組みをしながら唸りだす。


「ミラは自分から話すって言ってたけど大丈夫かなぁ……」


「あいつかなり不器用なところあるからな。エリーとは長い付き合いだし大丈夫だと思いたいんだがなんにせよ古龍だから予想つかないな。」


自分が言うのもなんだがミラは人間関係について不器用と言う他無い。体質の事もあり未だに友人と呼べるのはエリーとラザァ、ヘレナくらいだ。最近ではガレンやエリダとも上手くやっているようだがそれでも少ない方だろう。


「こればっかりは本人達にしか解決できない問題だもんね。というかそれなら僕は怒られ損じゃないか……」


「まあまあ、というかミラが怒ったのはそれだけじゃ無い気もするがラザァもラザァで鈍感というか……」


「ん?」


「それよりもラザァはどうするんだ?仲直りしたいんだろ?」


「それはそうだけどああなったミラはしばらく時間をおいてから話しかけた方がいいかなって、気にはなるけど今は事件の解決が先決だよ。」


「まあお前がそれでいいなら俺は何も文句は言わないんだが少しミラが可哀想な気もしてきた……」


ガレンは何やらボソボソ言うと机の上の書類を脇に寄せ、こちらの真正面にどかっと座る。


「で、ラザァ。正直なところ今回の事件の黒幕は何だと思う?いや、今回の事件の黒幕はシヴァニアだと思うか?」


単刀直入にきた。


「まだわからないってのが本当のところだけど……なんとなく違う気がする。僕が闘った黒い敵もシヴァニア人にしては小柄だったし持ってる武器も3ヶ月前のテロリスト達とは全然違った。」


三カ月前のイワン バザロフ率いるシヴァニアのテロリスト達はみな大柄な体格で武器も大きな物を軽々と扱っていた。


だがついさっきラザァと闘い、今現在もパイリアで暗躍している全身黒づくめの男は小柄で、かなり細身の剣と小型の拳銃を持っていた。そしてイントネーションもシヴァニアのものとは大分違ったように感じる。


シヴァニアでないからといってそれならば誰なのか?と問われると全くわからないのだがシヴァニアではないという自信はあった。


「現時点だと例の弾倉くらいしか証拠がないから順当に行けばシヴァニアの犯行なんだろうが、実際に剣を合わせたお前がそう言うならば決めつけるのもよくないな。」


「それにこの三カ月に怪しい侵入は確認されていないらしいし、もし犯行を行えるとしたら行方不明のバザロフしかいないんだけどバザロフとは似ても似つかない見た目だったよ。」


あの男の風貌を忘れるはずもない。刈り込まれた黒髪に傷だらけの顔、そして何よりバザロフは三カ月に自ら片腕を切断している。あの黒い敵がバザロフなはずがないのだ。


「敵が何者かだなんて取っ捕まえればわかるからいい、ラザァの推測が正しかったとして敵がカラスの希少種となると厄介だな……なにせ夜に空を飛ばれると全く見えん。」


事実、始めのサージェ ウェイ執務官襲撃事件は全く事前に気がつくことができず衛兵の死傷者を出す事になってしまった。


「まあ、ミラみたいに龍とかになられないだけマシだけどね。」


人間サイズのカラスもそれはそれで恐怖だが、火を吐かれるよりは大分マシだ。


「それでも小さくなれるからこその強みってのもあるからなぁ……」


ガレンはうーんとうなり続けている。


「衛兵も希少種相手の訓練なんてほとんど受けていないんだよ、数が少ない上に種類が多くて対策のしようが無い。存在自体がイレギュラーだから予想もつかない性質を持ってることも多いしな。」


ガレンの唸りは止まらない。


「やっぱりミラに協力を頼んだ方が良かったのかなぁ……」


ミラも自分のことにすらあまり詳しく無いのだが、それでも相手に希少種がいるのならこちらも希少種の全面協力があると心強い。


「あいつは単純な戦力としても心強いし、敵の感知能力にかけては文字通り人間離れしてるからな。お前の言ってた通りなら今日明日中に頼むのは無理そうだし衛兵だけでなんとかするしかなさそうだ。」


「そうだね、それじゃあ僕は……」


「お前はさっさと寝ろ!」


そう言うが早いかガレンはラザァの背中をグイグイ押して部屋から出そうする。


「え?ちょっと!何するのさ!?!?」


「お前は張り詰め過ぎだ、命のやり取りした今日くらい早く寝ろ!」


筋骨隆々で頭1つは大きいガレンに逆らっても敵うはずもなく、ラザァは廊下に放り出されてしまった。


「えー……」

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