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Schneiden Welt  作者: たる
第一幕
10/109

ミラの策


「そんなことを僕らだけでやるって!?警察とかに任せた方がいいんじゃ、、、」


ミラの考えはこうだ、ラザァが追っ手に見つかり逃げながら一通りの無い路地に逃げ込む、そこをミラが奇襲して追っ手を捕まえるというシンプルなものだ。


普通に考えて無謀だ。果物ナイフくらいしかもってないラザァと見たところただの華奢な女の子にしか見えないミラの2人で何人いるかもわからない武装した追っ手を無力化することなんか出来るわけが無い。確かにミラは見た目より運動神経が格段に高く耳が人外のようにいいのを昨日目の当たりにしたがそんなの銃で武装している大人の男の前にはほとんど無意味だろう。


「昨日言ってたでしょ、今日は大きなイベントがあるせいで警察も軍もそっちの警備にかかりきりなのよ。私やあんたが相手にされるわけが無いわ。」


「僕が相手にされないのはわかるけどミラまで?元からこの世界の人なんだろ?」


「いちいちうるさいわね!やるの?やらないの?あんたが降りるなら私1人でもやるわよ。」


ラザァのちょっとした疑問も一蹴された。


出会ってまだ2日だがこの少女はかなり聡明な方だと思う。すくなくともこの歳ではかなり頭がキレる方だと思う。ただエリーに関する事にのみ感情的になりすぎているのでは無いかとも思うのだ。このまま暴走させるのは危険だ、それに作戦を聞く限り囮役が1人必要だ。


「、、、わかったよ。手伝うよ、それがミラとエリーのためになるなら恩返しだと思ってやるよ。ただし一つ約束して欲しい。」


「何よ?約束って?」


「くれぐれも冷静になって、命を第1に考えて行動して欲しい。」


ミラはその内容が予想外だったのか少し拍子抜けしたようだった。


「そんなこと?心配してくれてるの?それに私はいつも冷静よ。」


「どうだか。」


そう言うとラザァはミラの目の前に拳を突き出した。ミラはキョトンと眺めている。


「何よこれ?」


「僕らの世界では協力したりする時にする挨拶みたいなものだよ。ほら手を握って。」


そう言ってラザァはミラの拳を自分の拳にコツンと当てた。


「それじゃあ、始めましょうか!」


ミラが怖い表情を少し和らげ宣言した。




ラザァはミラと打ち合わせをして別れた後、路地に出て追っ手を探した。追っ手を追いかけるって何か変な気がする。


すぐに黒いローブで手には拳銃を持っている3人の男たちを見つけた。


ラザァはすぐに逃げやすいように遮蔽物が多く、曲がり角が多い路地なのを確認すると足元にあったガラスの破片を拾った。この距離ならブーメランのように投げることで充分に届く、ダメージを与えられなくとも気付かせてラザァを追いかけさせるだけでいいのだ。

無事にポイント地点まで連れて行けばミラが奇襲の準備をしていると言ってた。何をするのかは聞いていないが今は彼女に賭けるしかない。


ラザァは手前の拳銃を持っている男に狙いを定めるとガラスの破片を投げた。


ガラスの破片はブーメランのように回転しながら物凄いスピードで飛んでいくと、特に狙ってたわけでは無いが運よく拳銃を持っている右手の甲に命中した。


男は悲鳴をあげ拳銃を落とした。


すぐさま決めた道を駈け出すラザァをすぐに3人は追いかけてくる。人1人しか通れないような狭い路地で1番手前の男が拳銃を持てないため背後の2人も発砲出来ないでいる。


ラザァは近くの箱やゴミ箱を倒して少しでも追っ手の足を遅くしながら。ミラのところへ急いだ。


背後から仲間を呼ぶような声が聞こえるが振り返る余裕は無い、ひたすら全力疾走した。


ミラと約束した路地へやってきた、そこでラザァはゴミ箱の陰に隠れて背後を伺う。約束だとここでミラが何か仕掛けをしているらしいが。


そうこうしているうちに5人の黒のローブの男達が現れた、みんな手には拳銃らしき物を持っている。


ミラは何をする気だ?そう思っていると男達が一斉に銃を構えた。


その銃口が向けられた先はラザァでは無かった、その反対側、男達の背後だ。


ラザァはよく見ようと乗り出して近くのゴミを踏み潰して音を立ててしまった、男達が振り返ると同時に悲鳴が上がる。


悲鳴をあげたのは男達の1人だ、そいつは顔から血を流しながら宙を舞ってる。


その真下にいたのは銀の髪を持つ少女だ、ミラだ。


他の男がミラめがけて発砲したが目にも留まらぬ速さでミラは跳びすぐ近くの男の首にしがみつくとそのまま首を勢いよく回した。


ゴリッという首が折れる嫌な音とともに男は頭をありえない向きに向けたまま崩れ落ちた。


そうすると残った3人の男達はもうパニックだ、よくわからない少女1人に2人の仲間が瞬殺されたのだ。ほとんどデタラメに発砲したがミラは1番近くの男を捕まえて引き寄せるとそいつを盾にして突進した。盾にされた男が胸と口から血を吹き出し手からナイフを落とす。それをすぐに拾ってミラは発砲してきた男に飛びかかると容赦なく喉を掻き切った。


ミラのあまりの強さに驚いて注意力が落ちていたのかラザァは最後の1人が自分めがけて突進してきたのに反応が遅れてしまった。


男はラザァを捕まえるとこめかみに拳銃を突きつける。


「すぐに殺せって命令されてたんだがな、状況が変わった、逃げるまで人質になってもらう。」


男が息も切れ切れにドスの利いた声で囁く。


ミラも一瞬遅れてラザァ達に気が付きナイフを向ける。


「それ以上近づくなよ化物!いくらお前でもこれなら銃の方が速いからな!」


男はさらに強く銃を押し付ける。


「殺すならどうぞ殺しなさい?私はそんなやつは仲間とも思ってないのよ。」


「へっ?」


ミラが突然恐ろしいことを言い出したので人質にされてるのに間抜けな声を出してしまった。確かにミラはラザァに対して特に思い入れとかはないだろうがあんまりだ。


驚いたのは男も同じだったようでかなり動揺しているのが手から伝わってくる。


そうこうしている間にミラはずけずけとラザァ達に向かって歩いてくる。本当に見殺しにする気なのか?


「寄るな!殺すぞ!!」


「だから構わないって言ってるでしょ、私はあんた達を仕留められればあとはどうでもいいのよ。」


ミラは物騒な事を言いながらも近寄る足を止めない。こんなところで騙されて命を落とすのかーとか考えていたラザァはミラがラザァの目と足を交互に見ているのに気がついた。頭を動かさないで目だけでだ。


もしかしたらと思ったラザァはミラにウインクをした。


ミラはそれを見ると目の動きを止めて男に向かって微笑みながら言った。


「かかったわね。」


「何?」


今日1番の動揺が男の手から伝わってきたのを見てラザァは思いっきり男の足の甲を踏みつけた。痛みで男が手を離した瞬間ミラが飛び込んできてラザァが後ろを見たときには全てが終わっていた。男は心臓にナイフを突き立てられそのまま崩れ落ちた。


ミラはナイフを引き抜くとラザァの方を見つめていつもの暗い表情に戻った。


「よく気がついたわね。」


「確信は無かったけどね。」


気が抜けたのかラザァはその場にへたり込んでいた。


「、、、軽蔑した?」


ボーとしてたラザァにミラが目をそらしながら聞いてきた。


「えっ、何を?」


「何をって、私の事をよ。あんたの目の前で4人も殺して、演技でもあんたを殺していいとか言ったのよ!」


なんでわからないの?とミラは怒鳴りつけてきた。


ラザァ自身もあんな光景を見て普通にしている自分がよくわからない。昨日から色々ありすぎて感覚が少しおかしくなっているのかもしれない。


「うーん、自分でもわからないけど殺してたのは正当防衛で、演技してたのは僕を助けるためだったんだよね?そんな人を感謝しても軽蔑なんてしないよ。確かに強過ぎて少し驚いたけど。」


自分でもわからない以上ありのままの感想を述べるしかなかった。


ミラはそれを聞いて呆れたような驚いたような表情をすると溜息をついた。


「そっか、あんたってやっぱり変な人ね、これ以上追求しないのならそれでいいわ。」


「さあ、生かしておいたやつからなんで私達の命を狙ってたのか聞き出すわよ。」


ミラは初めに顔面を殴りつけて気絶させた男の元へ向かう。




ラザァは立ち上がりながらその小さな背中を見つめていた。


いくらなんでもさっきまでのミラは強過ぎるし、肝が座りすぎていた。只者じゃないと誰の目から見てもわかる。探ると後悔しそうだったし彼女も触れてほしくなさそうなのでしばらくは放っておくことにした。深く探る必要がある時が来ない事を祈りながら。

10話目です。

今回は戦闘シーンですね。

ようやくこのサイトに慣れてきたのでもっと他の人の作品とか見たいですね。

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