序章
序章
家族
よく「血が繋がっていなくても私たちは家族だ。」みたいな話を聞くし、それはそれで感動する話だと思う。家族の定義とはなんなのかとかも深く考えさせられる。今年で17歳になるラザァ フラナガンはむしろ中途半端に血が繋がっているよりは全くの赤の他人の方が良い家族になれるのではないかと最近思い始めたところだ。
ラザァの父親はラザァが物心つく前に病気でこの世を去っている。母親は女で1つでラザァと2つ年の離れた妹のシーナ フラナガンを育ててきた。その親子3人での質素ながらも暖かい生活が終わりを告げたのは三ヶ月前だ、隣町に買い物に出かけた帰りの山道で母親は落石によって命を落とした。
ラザァとシーナは遠い親戚に引き取られたが、会った事もない財産も無く働くあてもない子供2人をいきなり押し付けられたような親戚は大変機嫌が悪かった。
出て行けとか怒鳴られるならばまだ気が楽だったかもしれない、しかし新しい生活はもっと陰険なものだった。存在そのものを無視されてるようなものだ。
話しかけられないだけならまだしも、食事もラザァとシーナの分だけ作られず親戚家族が食事してる間に2人で作っていた。洗濯も当然2人だけ別である。
そんな訳で家に居づらい事この上ないため必然的に外を当てもなく歩いてる事がラザァは多かった。お金もそんなに持っていなかった為歩いて回るのも街中ではなく近くの丘や森、山だったが。
その日もラザァは朝食の後直ぐに家を出て裏山に訳もなく来ていた。最近では山に生えてる木の実やきのこの中でどれが食べられるか、どれが食べられないかが大体わかるようになってきたので昼食くらいなら軽く山の中で済ませて夜まで帰らない事がほとんどだった。
昼食にする分くらいの食材が案外すんなりと集まったので今日は奥の方まで行って珍しいきのこでも探してみようかなとぼんやり考えながら歩いていると肌に冷たい感触が走った。見上げると朝はあんなに晴れていたのにいつの間にか空は雲に覆われ雨が降り出していた。
この位置だと家に戻るよりも近くの大きい木でも見つけて雨宿りした方が得策だ、何より突然の雨ぐらいであの場所に戻りたくはない。
そうこうしてるうちに雨はどんどん強くなりすっかり暗くなっていったのでラザァは近くにあったとびきり大きくて高い木の下に駆け込むと雨宿りを始めた。
雨はどんどん強くなるし集めたきのこを眺めてるのにもさすがに飽きたので何かないかと木の周りを一周してみると古びた旅行用の鞄が根元に枯葉まみれで転がっていた。
若干汚そうで迷ったが他にする事もないし単純に好奇心に負けたためラザァはその鞄を取り上げて名前などが書いていないかしげしげと見ていた。
特に周りには見当たらないので中を見るために固まってるチャックと格闘してる時、頭上で目もくらむような稲妻が走った。
それとほぼ同時に耳をつん裂くような雷鳴が轟き、ラザァは凄まじい衝撃に襲われ宙に舞うのを感じた。
雷の光を見てから音を聞くまでの時間が短ければ短いほど近くに雷が落ちるんだよな、と我ながら驚くほど冷静に考えながらラザァの意識は薄れていった。
初めての投稿ですのでうまく投稿できてるのか不安です。
タイトルが妙にカッコつけた名前なのは、異世界物なのと主人公のラザァのイメージがドイツ人なのでこうなりました。
この小説は結構長くなる構想ですので末永く見守ってもらえると嬉しいです。
これからよろしくお願いします。