どこかでよくある悲劇もしくは別れ
あなたを守れるのなら、肉体なんて惜しくない。
あなたが幸せになるためならボクは世界中の人間を殺しても構わない。
あなたの敵を殺せるのならこの身体が塵になっても構わない。
指の一本、髪の一筋、爪のひと欠片になっても殺しに行けばいいんだから。
だからお願い、ボクの身体の欠片たち。
早く早く、彼を殺しに行くんだ。
彼も他の人間達も全員殺すんだ。
そして彼女を万全に治して、あなたを治して…
「---、もうよい」
ダメです、まだあなたの幸せには遠い。
「もういいのだ。」
ダメです、まだあなたは幸せになっていない。
「---、余の忠実なる僕よ、もういいのだ。すべては終わった。」
いいえ終わってないのです。
まだ敵が残っています。
「お前達のおかげで余は幸せに死ねた」
いいえ、いいえ、あなたは、死んでいません。
魂が残っているのならボクが治すから、死んだなんて言わないで。
「---、お前は一番尽くしてくれた」
いやだ、別れの言葉なんて聞きたくない。
まだまだこの世界には幸せが溢れているはずなんだから、あなたにはまだ幸せが待っているのだから。
「---、余は自分の名を知れた。そなたたちの存在のありがたさを知った。そして他のものを愛おしいと思える感情を知り、彼女に出会えた。余は果報者だ」
では、あなたは幸せだったのですか?
「幸せだ。今も昔も、余には忠実な僕に恵まれて愛おしい存在も側にいてくれるのだ」
それなら…良いのです。
あなた様が幸せなら、それで構わないのです。
「余の忠実なる僕よ。余の名前を教えようーーーーだ」
申し訳ありません、ボクには聞こえないようです。
聞く権利さえないのです
本能に逆らい、あなたの幸せだけを考えたボクにはあなたの尊い名前を聞く権利はありません。
「ーーーーだ、名前を覚えよ。余の名前はーーーーだ。あの世でもこき使うのだから冥土の土産に持っていけ。そして余にあの世の道案内をするのだ」
承知致しました。
それでは…お先に、おやすみなさい。
愛しています。---様