第1話 怒鳴る
無数の穴と溝が付いた歯車。
それを5枚ほど重ねる。そして、空気を取り込む為の道があり、その先には吸気口が取り付けてある。
歯車が回転すると、空気がだんだんと質量を得ていき、そして最終的には液体のような声質を持ち始める。
それらを行うのをクライムコンバータと言う。
それを人体に埋め込む。クライムコンバータから排出される廃液は空気に再変換され首裏の毛穴から排出される。
その説明を聞いた時、狂ってると思った。
人の身体に無許可に機械を埋め込み、そしてさらにその機械は意味のわからない技術で作られたサイエンス・フィクションの代物。
俺は大いに困惑して、混乱して、怒鳴り散らした。
クライムコンバータを埋め込まれてから、俺の身体は不思議な力を得ていた。まず、力が常人より倍。石ころを拾ってみて、少し力を込めるとバラバラに崩れた。
吸気口を防がせた。
吸気口から空気を取り込みエネルギーを作れないようにした。
「君の意思で開くようにシャッターの構造を取り入れたよ」
「埋めろっつってんだよ」
「埋めてはもったいないじゃない」
「気がマワってんのか?」
俺をこのような身体に改造した医者・衣彼禍楽は人の言葉の通じるような生き物ではなった。俺が何かを要求すればこの男は自分にとって都合のいいような解釈をする。
「そもそもなんでこんな身体にしたんだ」
「君は死なせてならないから!」
「ハァ……?」
「しばらくするとねぇ、私が前まで所属していた組織がねぇ、魔法を使う怪人を作り出すんだ。みんな君と同じように胸にクライムコンバータを埋め込んでいるから、君と同じように魔法が使える」
「魔法ってなんだよ……」
「科学では理由のつけようがない現象さ! クライムコンバータが空気を液体にするのも魔法だね。つまるところ君はいまサイエンス・フィクションのようなファンタジーの世界に足を踏み入れているんだね」
「…………」
イカれてるけれど、なんだか嘘ではないような気がした。
だとしたらもう本当にどうしようもないくらいに頭がおかしいだけの人間ということになってしまうけれど、なんで医者なんかやってんだ。
「あんたか前まで所属していた組織ってのはなんなんだ」
「神を異界からこの世界に召喚しようと試みている頭のおかしい奴等さ!」
「それじゃ、カルトか」
「似てるかも。私はね、君に彼らが世に送り出す怪人を壊してほしいんだ。君に搭載した怪人破壊能力はクライムコンバータの機能を停止させ、生命活動の主導権を心臓に書き換える魔法だ」
それは魔法か?
「あんた何が望みなんだ」
「……そうだな、君にもわかりやすく言うと……私はね、子どもが好きなんだ。子どもの笑顔が大好きだ。子どもたちが笑っていると世界は平和だと思うし、子どもの笑顔のない国があるこの世界は歪んでいると思う。奴等──〈裏光〉の連中は子供の笑顔を絶やそうとするんだ。私にそれは許せない」
「つまり……?」
「私一人ではどうしょうもないから、君を駒にした。君の優しさを精一杯使わせてもらう」
恐ろしい善人の狂人?
これで俺がやだって言ったら俺が悪いやつみたいになっちゃう。
「やるしかないんだもんな……」
クライムコンバータのシャッターを撫でる。
「やるよ」




