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ティアマト物語  作者: しゅう


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意識の残響

核の制御装置へと飛び込んだゼロスを追って、私もまた、青白い光を放つ巨大な構造体の影へと身を滑り込ませた。周囲では、リノス率いるコアチームの数名が、ゼロスを追撃しようと散開している。ノイズと振動は激しさを増しており、彼らの連携もままならない。


「動くな!貴様も裏切り者の仲間だ、記録保管者!」

リノスの声が轟くが、私は彼の言葉を無視した。ゼロスはすでに主要制御ハッチを破り、内部へと消えている。私はゼロスが残した特殊装備の制御パネルの痕跡を頼りに、核の心臓部へ繋がる細いメンテナンスシャフトを伝って昇った。


制御室は、ノイズが臨界点に達しており、まるで空間そのものが液体のように歪んで見えた。中央の制御インターフェースは激しく火花を散らし、赤い警告ランプが点滅を繰り返している。ゼロスはすでにインターフェースの前に立ち、彼の特殊装備から伸びたケーブルを、欠損したはずの制御ポートへと無理やり接続していた。彼の背中からは、緊張と集中以外の感情が一切感じられない。


「記録保管者!急げ!あと150秒で、破壊コードが自動で実行される!」ゼロスが叫んだ。

私は端末を操作し、記録保管庫で見つけた「導きを捨て、自らに委ねた者たちの軌跡」、すなわち「自立を選んだ離脱者の記録」を、ゼロスのシステムへと転送した。これは、上位の意識体が「依存を断ち切った者」にのみ制御権を委ねるために、メインシステムから切り離して隠していた、真の緊急制御キーだった。


ゼロスは一瞬で転送された情報を解析し、それを独自の演算で暗号化し直した。彼の指が、インターフェースの虚空に、光の鍵盤を叩くように動く。

「キーコードを受信。認証シークエンスを開始する。……自立への軌跡を承認。」

次の瞬間、制御室全体が、耳をつんざくような超高周波の叫びに包まれた。それは、暴走意識体が「封印の再起動」に対して放った、最後の断末魔だった。核の青白い光は一気に収束し、制御装置の赤色は穏やかな青へと変わった。激しい振動も止まり、世界が嘘のように静寂を取り戻す。


封印は再起動した。暴走は阻止された。

しかし、勝利の安堵は一瞬で打ち砕かれた。収束した光と轟音の代わりに、「高周波の残響」がティアマトの空気に溶け込み、消え去る気配を見せない。それは意識体のエネルギーが、物理法則の隙間をすり抜け、見えない毒のように大気中へ拡散した証拠だった。核の暴走は止まったが、暴走意識体の悪意の一部が、星全体に、人々の精神に、静かに種を蒔いたのだ。


その静寂を破ったのは、制御室に飛び込んできたリノスだった。

「裏切り者めが!」リノスは銃をゼロスに向けた。彼の目には、正義感ではなく、信仰を裏切られた者特有の激しい憎悪が宿っていた。「ゼロス!貴様は、上位の意識体からの最終報酬を冒涜した!この残響こそが、貴様が自立という名の裏切りを選んだことへの、神罰だ!」


リノスの背後から、リノスに同調する警備隊員たちが制御室を包囲した。彼らの銃口は、ゼロスと私に向けられている。

「リノス、見ろ!」ゼロスは銃を構えたまま、冷静に言った。「核は安定した。俺はティアマトの秩序を守った。あんたの依存が、星を滅ぼすところだったんだ。」

「黙れ!」リノスは興奮で声を震わせた。「貴様は、未来の導きを断ち切り、この星を『自らの力』という不確実な砂上の楼閣に置き去りにした!貴様こそが、ティアマトを崩壊させた裏切り者だ!」


外部から、最高警備責任者の指令がスピーカーから響いた。「コアチームに告ぐ。ゼロス、及び記録保管者を、規律違反(秩序攪乱罪)と機密記録の窃盗の容疑で直ちに拘束せよ!」


ゼロスは、拘束されることを覚悟していた。彼はリノスではなく、私に最後の視線を向けた。

「記録保管者。俺の判断は正しかったはずだ。」

「ええ、正しい秩序でした」私は答えた。その時、私は彼に向けて、手でサインを素早く切った。それは、「遠隔地での隠密な準備」を意味する暗号だった。

ゼロスはそのサインを一瞬で理解し、わずかに頷いた。


次の瞬間、私は制御室の床にグレネード型のノイズ発生器を叩きつけ、爆発的な電子音で隊員たちの聴覚と視界を奪った。警備隊の拘束がゼロスに集中する隙に、私はメンテナンスシャフトへと再び身を滑り込ませた。

私の使命は、終わっていない。

暴走意識体の「意識の残響」が、この星の未来に悪意の種を蒔いた。そして、私は光の意識に囚われた者たちの手が届かない場所で、自立を望む者たちのための隠された『なにか』を作る義務がある。リノスや警備隊の誰も知らない、遥か遠い開拓記録の中に、そのためのヒントがあるはずだ。


私は都市の地下水路へと逃げ込みながら、端末で機密記録の極秘セクションを呼び出した。検索キーは「遠隔開拓プロジェクト:コードネーム・アルテミス」。

「今はまだ、、、」私は呟いた。

「必ず、悪意に染まらない光のための場所を確保する。」




こんな感じはいかがでしょうか

読んでいただきありがとうございます。

下の★~★★★★★で評価してもらえると勉強になります。

感想などいただけると嬉しいです。

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