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ティアマト物語  作者: しゅう


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封印の真実

記録保管庫の隔壁を蹴破るように飛び出し、外の世界へ戻った瞬間、私は激しいノイズと振動に体勢を崩した。ティアマトの核は解析した通り、封印を破ろうとする暴走意識体と、外部からの干渉エネルギーに激しく反応し、制御不能な臨界状態へと近づいていた。

ノイズはもはや、周期的な警告ではない。それは、空間そのものを引き裂くような断末魔の叫びであり、周囲の居住区画のガラスは次々に砕け散り、警備隊員たちは耳を塞いで地面に伏していた。ティアマト星全体が、巨大な嵐の渦中にいるようだった。


「リノスめ……すでに力による制御を始めているのか!」

私が駆けつける主要通路の先に、一際統制の取れた部隊の影があった。彼らは最高警備責任者の指揮下にある精鋭部隊で、核の構造体へと急速に展開している。彼らの目的は一つ――核の機能を破壊し、この騒動を武力で鎮圧することだ。リノスが言っていた「力」とは、この武力のことだろう。


私はその部隊の脇をすり抜け、核構造体の影に隠れていたゼロスを発見した。彼の特殊装備はノイズから身体を守っているものの、顔は疲弊していた。彼の背後の核の巨大な構造体は、激しい青白い光を不規則に放ち、大地は痙攣を繰り返している。


「遅い!」ゼロスは私を見るなり、冷静ながらも焦燥を隠さない声で言った。「破壊措置の承認が下りた。あと数分で、リノスが率いるコアチームが破壊コードを実行する。その前に、何か見つけたのか?」

私は息を整える間もなく、核心を伝えた。

「核は、文明を救うためのものではない。あれは封印装置だ。制御不能な暴走意識体を封じ込めている。リノスたちがやっている起動作業は、封印を解く行為に他ならない。」

ゼロスは一瞬、眉間に深く皺を寄せた。彼は私の言葉を、感情論ではなく、現場の物理法則に照らして吟味している。

「封印装置だと?しかし、核の制御システムは完全に欠損している。このままでは暴走する。破壊以外に選択肢はないだろう。」

「違う、破壊は封印を完全に破る!核を再制御する道がある。緊急制御キーのヒントを見つけた。それは『導きを捨て、自らに委ねた者たちの軌跡』、つまり自立を選んだ数万の離脱者の記録に紐づいている。」私は端末をゼロスに差し出した。「これを使えば、封印を再起動できる。だが、現場での実行はあなたにしかできない!」


ゼロスは端末を受け取った。彼の視線は、私の言葉の真実性と、外の世界で鳴り響く破壊コードの承認警告の間で揺れていた。彼は記録保管者である私を信じるのか、それとも、警備隊の権威と確実な「破壊」という手段を選ぶのか。彼の決断が、ティアマト星の運命を分ける。

その時、核の青白い光を背に、リノスと彼のコアチームが姿を現した。彼らの傍らには、警備隊の武装した隊員数名が控えている。リノスの目は、狂信的な光を帯びていた。


「記録保管者!やはりここにいたか!そしてゼロス、貴様は我々の作戦を妨害するつもりか!」

リノスの声はノイズに負けていなかった。彼の隣には、最高警備責任者はいない。リノスは自らの信念に基づき、破壊措置を強行しようとしているのだ。


「リノス、やめろ!」私は叫んだ。「あれは封印装置だ!君たちが起動しようとしているのは、文明の終焉を招いた暴走意識体の解放だ!」

「嘘だ!」リノスは顔を歪めた。「核は、我々を試した上位意識体からの最終報酬だ!貴様が隠し持つ、その偏った『自立の記録』など、依存から逃れたい敗者の妄言に過ぎない!光の意識体は、我々を救う力を与えてくれた。それを拒むのは、裏切りだ!」

ゼロスは、端末とリノスを交互に見た。破壊コードの承認警告音が、鼓膜を打ち鳴らす。

「ゼロス!」リノスは命じた。「記録保管者を拘束しろ!核の破壊コードを直ちに実行する!」


ゼロスは動かなかった。彼は私の目をまっすぐに見つめ、問うた。「なぜ、上位の意識体は、そんな危険なものを残した?そしてなぜ、真実を主流の記録から消した?」

「それは、我々が自立するために必要だったからだ!」私は叫んだ。「依存を断ち切り、自らの力で制御を見つけること。核の暴走は、その自立への最後の試練なのだ!」

ゼロスは、深く息を吸い込んだ。彼はゆっくりと端末の暗号化された制御情報を読み込むと、それを一瞬で記憶した。そして、彼の特殊装備の制御パネルを操作し、リノスへと銃口を向けた。

「記録保管者の言葉に、理がある。この暴走は、破壊で解決できるレベルを超えている」ゼロスは静かに言った。「リノス。あんたの『報酬』への依存が、俺の『秩序』を崩壊させる。俺は、現場の判断に従う。この場は俺が預かる。」


「ゼロス!貴様!上位の意識体の敵になるつもりか!」リノスは激昂した。

「俺は、ティアマトの敵にはならない」ゼロスは断言した。

その瞬間、核の光が最大級に膨張し、ノイズは耐え難い轟音へと変わった。暴走意識体の封印が、破られようとしていた。

「動くぞ、記録保管者!」ゼロスは叫び、核の構造体へと飛び込んだ。

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