表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティアマト物語  作者: しゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/23

方舟の転回

輸送船団キャリアが火星軌道上の衛星フォボス内に隠された建設拠点へ到達してから、七日が経過した。ここは、太陽系の光も届きにくい、静寂に包まれた闇の中の拠点だった。キャリアは直ちに地表に偽装され、避難民たちは、将来の火星地下都市建設に向けた準備を開始していた。

しかし、拠点に安堵の空気はなかった。ガイオスの技術チームが受信するティアマト星からの断片的な情報と、「意識の残響」に汚染された大気の残渣が、避難民たちの間で不信と相互の猜疑心を増幅させていた。


「このままでは、悪意の残響はここにも届く」ガイオスが、ホログラムでティアマト星の状況を解析しながら告げた。彼の冷徹な知性は、事態の深刻さを的確に捉えていた。

「レドは…」私は呟いた。「彼は私たちを逃がすために残ったはずだ。」

ガイオスは首を振った。「データはそうは言っていない。レドは拘束されたのではない。彼は、私たちの思想が『自立』を求めたのに対し、リノスの思想が『依存』を求めていることに、最後まで明確な結論を出せなかった。そして今、彼の技術がリノスの追跡部隊に協力している証拠がある。」


私は、ガイオスが用意した「自立の記録」の拡張機能に、記録保管者としての全ての知識を統合させた。

「ティアマト星に戻る」私は断言した。

ガイオスは解析作業の手を止め、私を見た。「無謀だ。我々の目的は『アルテミスの方舟』を完成させ、人類を避難させることだ。」

「避難は逃亡ではない」私は答えた。「悪意の根源を断たなければ、人類に真の自立はない。」

そして、私はガイオスの肩に手を置いた。「ガイオス、君に頼みがある。君は闇の意識の最も優れた知性だ。レドの技術を阻止し、闇の意識を正しい『自立』の方向へ統合する使命を担ってほしい。レドの技術は、君の手でしか止められない。」

ガイオスはしばらく沈黙した後、承諾した。「論理的には、ティアマト星の崩壊を看過することは、我々の生存確率を零にする。承知した。しかし、私一人では無理だ。君は、ゼロスの救出を。」

我々の目標は、「光と闇の再興勢力の確立」となった。その最初のステップは、ティアマト星の内部に囚われているゼロスの救出である。


「ゼロスは現在、最高警備責任者の施設に拘束されている。リノスの監視下ではないため、通信が可能なはずだ」ガイオスが通信プロトコルを用意した。

「通信には、『三日月サイン』の暗号を使う」

私は端末を操作し、拘束されたゼロスのいる施設へと向けて、高周波の暗号信号を送信した。メッセージは、私とゼロスだけが知る、「次の満月まで。」というシンプルな指示だった。

通信は一瞬で完了したが、ティアマト星からの応答はなかった。


「これで、ゼロスへの信号は送られた。ここからティアマト星への帰還には、ガイオスの技術と、『アルテミスの方舟』の予備機が必要だ」私は言った。

「その通りだ。私は君の帰還のための超小型潜入機を用意する。だが、記録保管者、君の帰還は、光と闇の悪意が混ざり合う深淵への単独潜入だ。失敗は許されない。」

フォボス軌道上の闇の中で、私は故郷ティアマト星の崩壊を阻止し、ゼロスを解放し、ガイオスと協力して人類を再興するという、かつてない使命を背負うこととなった。

読んでいただきありがとうございます。

下の★~★★★★★で評価してもらえると勉強になります。

感想などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ