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7話 聖女って実際見ると

よろしくお願いします。


現れたのは、溢れんばかりの魔力を纏う、美しい少女だった。


亜麻色の髪。


琥珀色の瞳。


空気にまで光が宿ったかのようなその姿に、場に居合わせた誰もが息を呑んだ。


――彼女こそ、聖女であると。


フェリオンは魔法陣の前に座り込み、額に汗を滲ませて息を整えていた。


彼女から溢れる白い魔力はフェリオンの体に触れるとそのまま彼の中に染み入った。身体は白い魔力で満たされ、しかし、使われなかった黒い魔力の残滓も微かに感じる。


フェリオンは自分の体に起こった奇跡を感じていた。だが、その目は少女から溢れ出る清浄な魔力に釘付けだった。


「……こんなに、白い……」


心の中で呟く。自分が半年かけて極限まで澄ませた魔力が、霞んで見えるほどの無垢さ。

神々しさに目眩を覚えながら、同時に絶望した。


歓声を上げ、彼女に群がる魔法使い達を、フェリオンは軽蔑した。

何も見えていないくせに、彼女の周囲で小さな争いを繰り広げている。


なのに――自分の中の魔力が、魔法陣の起動とともに彼女の存在によって満たされ、幸福に包まれる。

抗えない感覚。

生まれて初めて触れる、純粋な魔力の温度。


「これか……これが、聖女という存在が必要な理由……」


彼は心の奥底で理解した。

理屈ではない。体感でしか証明できないものだった。


なるほどな。

古文書みたいな書類しかないわけだ。


ゆっくりと立ち上がるフェリオンの目に、異変が映った。


聖女に近づいた王子アデルが、突如として倒れたのだ。


場は騒然。

白の騎士団が瞬く間に王子を護り、聖女を安全な場所へと運んでいく。

フェリオン以外の召喚チームも全員ついて行った。


示し合わせたかのような早業だった。


黒の騎士団も、フェリオンも、そして若い白の騎士達も、事態の波に乗り遅れた。


「なっ……なんだよあれ……」


フェリオンの声も、ただ呆然と零れるだけだった。

事前に打ち合わせられていた避難動線、要人警護の任務――すべてが計画通りに進む中、彼らだけが取り残され、清浄な魔力の渦の中で圧倒されていた。


魔法陣を完璧に制御した自分の達成感と、目の前で展開する聖女の圧倒的な存在感。

心地よい疲労感と、理解を超えた幸福が交錯する中、フェリオンはただ静かに、その光景を見つめ呆然とした。




「ははっ」


笑える。

あんな化け物みたいな女が、天使みたいな女が。

そうだ、あれはまさに聖女。


フェリオンは未だ耳鳴りがして、汗も引かなかったが震える指先で魔法陣を撫でた。石の床に引かれた線は美しく光り、それだけが彼を称えているように感じた。


まあ、何にしろ成功、だな。


肩透かしを食らったような達成感に霞む瞳で、淡く光る魔法陣を眺めた。

心に巣食った虚しさを、魔法陣という成功で無理やり埋めた。


ーーーしかし、何度見ても、異質な光だ。

この不自然な青白い光は、魔法でも見たことがない。

それにこんなに長く光ることも、異質…………


「…………?なんで、」


なんで、まだ光ってる。


彼はもう魔力を流していない。


完成した魔法陣は魔力の供給を止めれば即座に沈黙するはずだ。

(解読班が遅すぎて結局オレも読んだから間違いない)


誰の魔力を吸ってる?


近くに魔法使いは自分しかいないはずだ。

疑念が胸の奥で膨れ上がる。


――その時だった。


屋内にもかかわらず、まるで外から引きずり込まれたような、ビショ濡れの女が魔法陣に現れた。


黒い髪に、黒い瞳。


「やめろ!」


騒ぎが起きる。

フェリオンの目に惨劇が飛び込んできた。

ありがとうございました。

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