序章 童話「白の聖女と黒の魔女」
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「白の聖女と黒の魔女」絵本版
昔々、ある王国に二人の少女がいました。
一人は、街に暮らす亜麻色の髪に琥珀色の瞳、白のドレスを着た美しい少女――人々は彼女を白の聖女と呼びました。
もう一人は、森に住む黒髪黒目で黒のドレスをまとった陰気な少女――人々は彼女を黒の魔女と呼びました。
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白の聖女が祈ると、街の広場や路地は清らかになり、街路樹は輝きました。
人々の心も体も、ほら、元気になりました。
黒の魔女が黒い靴で足を三度踏み鳴らすと、森の木々はざわめき、枝葉に黒い霧が漂いました。
獣も魔物も、身を低くして服従するかのようでした。
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白の聖女が祈ると、村の子どもたちは元気を取り戻し、病める老人も安らかに眠れました。
黒の魔女が靴を三度踏み鳴らすと、森の空気は重くなり、鳥や小動物は逃げ去りました。
森の静寂は、不気味なものに変わりました。
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ある日、王子様が森で狩りをしていると、黒の魔女に出会いました。
黒の魔女は一目で王子様に恋をしました。
黒の魔女は森で黒い靴を三度踏み鳴らしました。
王子様の心が、ひとかけら、魔女に盗まれました。
黒の魔女が盗んだ王子の心は、森の木漏れ日でキラキラ光りました。
「凄くキレイ。もっと欲しいわ」
黒の魔女は持っていた心を森に置いて村へ出かけ、黒い靴を三度踏み鳴らしました。
村の人々の心が、ひとかけら、魔女に盗まれました。
黒の魔女が盗んだ村中の人の心は、雨上がりの広場に並べるとキラキラ光りました。
「凄くキレイ。もっともっと欲しいわ」
黒の魔女は持っていた心を広場に置いて街へ出かけ、黒い靴を三度踏み鳴らしました。
街中の人々の心が、ひとかけら、魔女に盗まれました。
黒の魔女が盗んだ街中の人の心は噴水に浮かべるとキラキラ光りました。
「凄くキレイ。でも、王子様の心のかけらが一番キレイだわ」
「王子様の心がもっと欲しいわ」
黒い魔女は持っていた心を噴水に置いたままお城へ出かけて行きました。
心を盗まれた人たちはだんだん弱っていき、まるで病気にかかったようでした。
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黒の魔女はお城に着くと王子様に会いに行きました。
王子様は白の聖女と一緒にいました。病気にかかったように弱った王子様に、白の聖女は祈り、助けようとしていました。
その魔力は、黒の魔女が今まで盗んだどの心よりキラキラしていました。
「あなたの魔力とてもキレイね。私欲しいわ」
白の聖女は黒の魔女に祈りました。
「私の魔力を欲しいだけあげます。その代わり王子様の心を、みんなの心を返してください」
黒の魔女は、白の聖女の魔力が欲しくてたまらず、盗んだ全てを返すと約束しました。
白の聖女と一緒に森に帰った黒の魔女は、王子様の心のかけらを白の聖女に渡し、白の聖女から魔力を受け取りました。
すると、黒の魔女は突然苦しみだしました。
白の聖女の魔力は、黒の魔女にとって毒だったのです。
何も知らなかった白の聖女は驚き、駆け寄りました。
しかし、黒の魔女はついにその体を失い、後には真っ黒な影だけが残りました。
白の聖女は村に行って祈りました。
村中の人に心のかけらが戻り、元気になりました。
白の聖女は街へ行って祈りました。
街中の人の心にかけらが戻り、元気になりました。
黒の魔女がいた森では、獣も虫も、黒の魔女が残した影には近寄りません。
森の寂しく重く、怖い場所になりました。
人々は黒の魔女の話をしなくなりました。
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白の聖女は街に戻り、王子様の心を返しました。
王子様はみるみる元気を取り戻し、白の聖女に恋をしました。
こうして白の聖女と王子様は結婚し、幸せに暮らしました。
心を取り戻した国中の人々もすっかり元気になって2人を祝福しました。
ありがとうございました。




