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stege 004 うつる空気

 「あのも先輩もー?」

 「昨日ロッカーの中、空っぽになってた。

退職が当たり前の空気になっていた。


 耐えきれず、燃え尽き静かに会社を去った人たち。

 その名前すら、やがて会話から抹消されていくのだ。


 「"おつかれさまでした"の一言ももう言えないんですね」翔太がぽつんと漏らした時、同期の早川は苦笑した。


 「俺たちもたぶん、もう、感染しているんだとおもうよ」

 「えっ?」

 「"辞めたい"けど辞めるって言えない"ウィルス、もう手遅れカモナ・・・」

冗談ぽく呟いたその言葉は、現実そのものだった。


♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 営業会議の数字はいつも冷酷。

 「前月比〇〇%減」その一文だけで空気は瞬間冷凍だ。


 上司の声も言葉より、トーンが刺さる。

 皮肉のようなほめ方、誰かを吊るすことで保たれる秩序。



それは翔太にも、"あの日"が訪れた。


 「鳴白、なにやってんの!」

 「はい・・・」

 「はいじゃなくてさ、、、これはどうすんのよ?数字でどうやって生活すんの?」

 「申し訳ありません」



その日翔太は誰にも言えなかった。

朝から続く腹痛・吐き気・眩暈(めまい)


 だけど体調不良の相談さえ、『逃げ』とみなされる世界で言葉にできなかった。



 帰宅後シャワーを浴びながら自分の肩を見つめた。細くなった腕・呼吸の浅さ、何かがどんどん削り取られていく。


これは疲労か?それとも・・・ウィルスにむしばまれているのか?


 答えなどあるわけがない。それでもこなくていい、朝は来る。

ただ時間は新しく刻まれていくのだ。時間は罪ではない。





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