表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
馬刺しの哲  作者: SBT-moya
6/7

人間の温かみ

日野刑務所の簡易厨房に、早速哲が立つ。

哲は手早く鍋にバターを溶かし、薄切りにした野菜を炒め始めた。

乳白色のホワイトソースを注ぎ、香草を加える。鍋の中に広がる香りは、どこか幻想的だった。

一方で、ハンバーグ用の肉をこねる哲の手は、熟練の動きそのものだった。

肉にふわふわとした軽さを持たせるため、パン粉とミルクを慎重に加え、形を整える。鉄板でジュワジュワと焼き上がるハンバーグは、ペガサスの翼を模した飾りと共に皿に盛り付けられた。

まずは『ペガサス』のハンバーグ。


 哲は、ペガサスを象徴する翼を、新春の初雪の如き輝きを放つ大根おろしで表現し、

続く『ユニコーン』のシチュー。

ユニコーンを象徴する一角はに焼きもろこしを丸々、シチューに添えた。

まさに一角獣の角、そして「コーン」という語呂感に当てがえた回答がこれだった。ダブルミーミング。


 死刑囚松永は、最初はもちろん疑心暗鬼だったが、

一口、口に運べば、涙腺の崩壊しいくら拭っても涙が溢るる。

それは、松永が感じたことのない、人間の温かみだった。




「……うめぇな。でも……俺には贅沢すぎる味だ」


 松永は、刑を受け入れた。


 後日、弁護士小泉は、松永に面会を申し出た。


「なぜだ! 君は死ぬ必要などないのだ! ペガサス? ユニコーン? 食えるわけないだろう!!

 君は騙されているんだ!」


「……そうは言うがね弁護士さん。

 あれが……本物だろうがそうじゃなかろうが……俺みたいな罪人があんな食い物に是非をつけるなんてことがあったら、

 それこそバチが当たるってもんだよ。

 美味かった……。ただ、それだけだ」


 小泉は、面会室のガラスを拳で叩き、悔しさをあらわにした。


「まだ負けたわけじゃないぞ……次こそ、次こそ奴らに諦めさせてやる……!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ