7「黄金」
ミカの魔術発動数秒前。
ユウドラとペテは目の前の戦闘を見ながら話していた。
「もし勝てなかったら?」
ペテが暗い顔で言った。
ユウドラは少し考えたあと、
「相手は水銀級、こっちには大天使が2人だ。9割は勝てるね。」
と、自信気に言う。
何でお前がドヤるんだよ。
と言いたかったがペテは言葉を飲み込んだ。
突然、空気の温度が上がった。
ミカの魔術が発動されたのだ。
「もう魔術使うのか。大天使様も必死だってことだ。」
戦場を見下ろしながらユウドラは言った。
大概の敵は灰も残らないのだが...
ユウドラの脳内にひとつの不安が残っていた。
9割のうちの残り1割。
万が一起こり得る最悪。
考えすぎか。
次の瞬間。
火柱が消える。
いや、かき消された。
とてつもない速さで陣が展開される。
天を覆うような巨大な陣は、この場にいる大天使から展開されたものではない。
ドラゴンだ。
あのグノースが魔術を発動させたのだ。
「何だ、あれは。」
ペテが目を見開いて呟いた。
「クッソ!!!万が一が出やがった!!!」
ユウドラが叫んだ。
「ペテ!すぐに参戦するぞ!」
ペテは何がなんだか分からない顔をしている。
最悪だ。
よりによって最悪の万が一を引いた。
グノースは本来魔術を使わない。
知性がないからだ。
それを覆すとしたら結論はただ1つ。
「あれは水銀級なんかじゃない!【黄金級】だ!!!!!」