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【第1章一気読み】魔力なしの魔術師  作者: YD
第2章【魔王編】
27/29

26「病」

「本当に治るの?」

ミカがユウドラに聞く。

「治すとまではいかない。

ただ、症状を無くすことはできるはずだってさ。」

ユウドラはそうミカとペテに話しながら、

城の廊下を歩いていた。


ケテルに頼まれたのは、

ヨネの妹の治療だ。


その少女の病気は、

【魔力暴走】

ヴァンパイアに希に起こる病気で、

生まれつき自らの器に合わない魔力回復をおこなうらしい。

過剰に溢れる魔力は次第に体を蝕み、

魔力中毒に似た症状が出るという。

体は動かせず、全身に激痛が走る。

めまい、吐き気、高熱、

全ての感覚が研ぎ澄まされ暴走し、

脳が焼け落ちる事例もある。

ユウドラも魔力中毒の症状については知っている。

だが、それが生まれつきの先天性となると、

その苦痛は計り知れない。


3人は部屋の前に着いた。

静かにドアを開ける。

微かに薬品の匂いが漂ってきた。

部屋には小さな机とベットが一つ。

花瓶には綺麗に手入れされた花がさしてある。

部屋はホコリ一つ無く、

常に綺麗にされているのがひと目で分かった。

ベットには少女が横たわっている。

人形のように少しも動かない。

身体中に包帯を巻き、

目も隠していた。

微かに上下する胸が、

彼女がまだ生きているのを感じさせる。

ドアの開く音を聞き、

少し反応を見せる。

しかし、言葉を話す力は残っていないのだろう。

何も発することはなかった。


「俺はユウドラ。君の兄に頼まれて、病気を治すために来たんだ。少し時間をもらってもいいかな?」

ユウドラは、優しく声をかける。

ミカとペテは後ろから様子を見ていた。

少女は小さく頷く。

「ありがとう。」

そうユウドラは言うと、

少女が寝ているベットの横に立った。

少し手をかざす。


ユウドラはケテルに言われたことを思い出した。


「彼女の魔力暴走は言うなれば、

君の反対の身体だ。

君は魔力を回復しない。

対して彼女は、

魔力を回復させすぎる。

彼女に貯まった膨大な魔力の塊、

君なら制御することができるだろう?」


魔力の制御。

まあ、魔力を取り込めと言うことだ。

ユウドラの身体には魔力がない。

しかし、魔力を入れるための器は持っている。


ユウドラは少女に宿った魔力を感じると、

それを自分に繋げる。

膨大な魔力がユウドラに流れ出す。


ヴァンパイアだからだろうか?

流れてくる魔力の量が半端ではない。

ケテルが自分に頼んだ理由が分かった。

普通の人間がこんなもの取り込んだら、

それこそ身体が吹き飛ぶ。

ユウドラにしか、取り込めないということだ。

ミカとペテはその様子を静かに眺めていた。


どのくらい経っただろうか?

魔力が正常になったところで、

ユウドラは手を下ろす。


取り込んだ魔力は、

徐々に空気中に気化していく。

やはり、保存もできないのか...

ユウドラはそう思いながら、

少女の顔を見る。

包帯で見えにくいが、

最初と比べて顔色が良くなっていた。

微かに寝息が聞こえる。

治療の間に寝てしまったのだろう。

しかし、包帯越しでも分かるその安堵した表情は、

彼女の症状が無くなっていることを表していた。

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