26「病」
「本当に治るの?」
ミカがユウドラに聞く。
「治すとまではいかない。
ただ、症状を無くすことはできるはずだってさ。」
ユウドラはそうミカとペテに話しながら、
城の廊下を歩いていた。
ケテルに頼まれたのは、
ヨネの妹の治療だ。
その少女の病気は、
【魔力暴走】
ヴァンパイアに希に起こる病気で、
生まれつき自らの器に合わない魔力回復をおこなうらしい。
過剰に溢れる魔力は次第に体を蝕み、
魔力中毒に似た症状が出るという。
体は動かせず、全身に激痛が走る。
めまい、吐き気、高熱、
全ての感覚が研ぎ澄まされ暴走し、
脳が焼け落ちる事例もある。
ユウドラも魔力中毒の症状については知っている。
だが、それが生まれつきの先天性となると、
その苦痛は計り知れない。
3人は部屋の前に着いた。
静かにドアを開ける。
微かに薬品の匂いが漂ってきた。
部屋には小さな机とベットが一つ。
花瓶には綺麗に手入れされた花がさしてある。
部屋はホコリ一つ無く、
常に綺麗にされているのがひと目で分かった。
ベットには少女が横たわっている。
人形のように少しも動かない。
身体中に包帯を巻き、
目も隠していた。
微かに上下する胸が、
彼女がまだ生きているのを感じさせる。
ドアの開く音を聞き、
少し反応を見せる。
しかし、言葉を話す力は残っていないのだろう。
何も発することはなかった。
「俺はユウドラ。君の兄に頼まれて、病気を治すために来たんだ。少し時間をもらってもいいかな?」
ユウドラは、優しく声をかける。
ミカとペテは後ろから様子を見ていた。
少女は小さく頷く。
「ありがとう。」
そうユウドラは言うと、
少女が寝ているベットの横に立った。
少し手をかざす。
ユウドラはケテルに言われたことを思い出した。
「彼女の魔力暴走は言うなれば、
君の反対の身体だ。
君は魔力を回復しない。
対して彼女は、
魔力を回復させすぎる。
彼女に貯まった膨大な魔力の塊、
君なら制御することができるだろう?」
魔力の制御。
まあ、魔力を取り込めと言うことだ。
ユウドラの身体には魔力がない。
しかし、魔力を入れるための器は持っている。
ユウドラは少女に宿った魔力を感じると、
それを自分に繋げる。
膨大な魔力がユウドラに流れ出す。
ヴァンパイアだからだろうか?
流れてくる魔力の量が半端ではない。
ケテルが自分に頼んだ理由が分かった。
普通の人間がこんなもの取り込んだら、
それこそ身体が吹き飛ぶ。
ユウドラにしか、取り込めないということだ。
ミカとペテはその様子を静かに眺めていた。
どのくらい経っただろうか?
魔力が正常になったところで、
ユウドラは手を下ろす。
取り込んだ魔力は、
徐々に空気中に気化していく。
やはり、保存もできないのか...
ユウドラはそう思いながら、
少女の顔を見る。
包帯で見えにくいが、
最初と比べて顔色が良くなっていた。
微かに寝息が聞こえる。
治療の間に寝てしまったのだろう。
しかし、包帯越しでも分かるその安堵した表情は、
彼女の症状が無くなっていることを表していた。




