16「望むもの」
店の中は静かで明かりも少ない。
コップのぶつかる音だけが響いていた。
「いらっしゃい」
カウンターに立っていた髭の長い老人がそう言った。
彼がここの店主だろう。
自分以外、客は居ないようだった。
「何にする?」
そう老人が聞く。
「お酒はいいや。聞きたいことがあって寄ったんだ。
そうだな...何か甘いものを貰おうかな。」
そう言って腰かける。
店主は手際よくノンアルコールのカクテルを作ってくれた。
「人間とは珍しいな。旅の者かい?」
店主はそう切り出す。
「そんなところ。ちょっとこの国の王について聞きたくってね。」
そう、まずは情報収集からだ。
王について何か分かるかもしれない。
「ここの王様か...」
髭をさわりながら店主は少し考え、
「ワシもここの者じゃねえけどよ、
あの王様は国民によく慕われてるって話だぜ。」
店主は答えた。
その時気づいたが、この店主はヴァンパイアじゃない。
ヴァンパイア特有の長い耳を持っていなかった。
「ヴァンパイアって単独を好む種族だと思ってたけど、
ここまでまとめられる王ってどんな力を持ってるか知ってるか?」
ユウドラは単刀直入に聞いてみた。
「孤独を好むってのはだいぶ古い情報だが、
確かにプライドの高さはヴァンパイアの特徴だろうな。」
店主は続ける。
「ワシも長くここには居るが、
あの王は国民のことを常に考えておる。
人間から迫害を受けてきたヴァンパイア達に安心できる場所を作ってきたお方じゃ。」
店主は食器を片付けながら話す。
綺麗に並べられていく食器を見ながらユウドラは質問する。
「少し話が変わるかもしれないが、店主はどうしてここで店を始めたんだ?
ヴァンパイア達の住みかに人間が入ることは中々簡単なことじゃないだろう?」
それを聞いて少し嬉しそうに店主が答えた。
「それこそ、王のお陰じゃ。
バシレイヤで上手くいっていなかったワシに場所を提供してくれたのだ。
王は、ヴァンパイアと人間の共存を望んでいる。
お互い同じ生命として種族の境がない世界を作ろうとしておられるのだ。」
予想外の話にユウドラは驚いた。
ヴァンパイアの王はそこまで考えているのか。
その考えには賛成だ。
だが、そう簡単なことでもないことはよく知っている。
人間は自分達以外の種族に嫌悪感を抱く生物だ。
ましてやグノースの血が流れているヴァンパイアとなれば尚更。
これまで多くの迫害、差別を見てきた。
これは一種の社会問題だ。
片方の王が一方的に掲げても解決するものじゃない。
人間とヴァンパイア。
上手く協力できれば...
おっと。
それた話題を元に戻さなくては。
一番大事なのは、人間との共存を願う王が、
何故、集落を襲撃した?
行動の意味が分からない。
今回の襲撃はヨネの仕業ではない?
また別のヤツがいる?
そんなことを考えていると、
「まあ、気になるなら国民に聞いた方が早い。
彼らは一番王様の良いところを知ってるからな。」
店主はそう言った。
ユウドラはコップの中の飲み物を飲み干すと、
「ありがとう、店主。そうしてみるよ。」
そう言い、店を出た。




