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芽吹きの巫女  作者: メイズ
転生・転生・転生
52/59

【幕間】 私の眷属

 ロッシェルの魂を追って、人間たちの無意識を(つかさど)るレイヤーに行ってしまったシャイラ。


 あなたが正式な巫女になれた瞬間のこの喜びを、即座に伝えに来た私の到着を待つことも無く。


 ハァァ・・・


 つまんない。


 シャイラに会うために、人間界にお出かけ用の妖精の姿を取らずいつもの私の姿で来たのに。


 *


 シャイラが芽吹いた室内に降り立った。


 わあ~・・・さすがシャイラだわ。初めての幻夢の芽吹きにしては上出来よ。


 うんうん! 宮殿の密林を参考にしたのね。あなたは私の素晴らしい眷属になるわ!



 ────あら? 


 この幻夢の芽吹きを作った精の源は・・・・


 すぐに私はこの幻夢について、とあることに気がついた。けど些末については問題はない。私は生きとし生けるもの、この世のすべての大きな精の流れを統括するだけだもの。


 シャイラったら! 無意識にこんなことをしてたのね!



 *


 このお部屋には、イバラに吊られた男が1人。ロッシェルのお腹を蹴った高貴な生まれの人間。ここの世界も、下の者を傷つけても罪はならないの。


 その子が死んでしまったとしても、それは人間たちが自分たちのために作り上げた身分差というルールによるものだから、私たち神格が人間たちが起こす些細なことを一々気にする必要などない。


「た、助けてくれ! 私を降ろせ!・・・金貨10枚でどうだ?」


 ────無視。


 やあね、この人。金貨を価値と認める生き物とそうでない生き物の違いもわからないなんて。考えてみて。金貨を欲してる生き物は、極々限定的ではなくて? 人間だけよ。



 イバラの檻に入れられた女が叫んでる。シャイラの実の母親ね。隣には口をあんぐりさせ、めいっぱい見開いた目で私を凝視しているふくよかな女性1人。


「仕方なしにこのような薄汚い場所に来てあげた挙句にこのような目に遭わされるなんて! あの子は聖少女ではなかったのよ! 悪魔に取り憑かれた子に違いないわ! そこのあなた、早く私をここから出しなさい!!」


 

 ムカッ! 人間の分際で私の大切な眷属に向かってなんたる暴言なの? しかも私はあなたに命令される立ち場ではないわ。


 ────無視。



 虫の息のロッシェルの手当をしていたシスターと、 急に意識を失って倒れたシャイラを介抱していたシスター2人が手を止め、硬直して私を見てる。


 シャイラは大丈夫よ。意識が死と眠りの世界へ行っただけ。仲良しのロッシェルのために・・・



 私、この密林と化した幻夢の芽吹きを見て、シャイラはロッシェルを傷つけた、この高貴な男と女を相当憎んでいるのを感じたわ。


 この2人がイバラで罰せられてるからってわけじゃない。


 私、シャイラがこの幻夢を創り出した精の源は、この2人から奪ったと気がついたの。


 けれどもシャイラの行為は罪ではない。力ある者が無いものを支配するのは、この世の(ことわり)だもの。この男が孤児のロッシェルを(ほふ)っても罪にならないのと同様よ。


 お気の毒だけど、それぞれ寿命がずいぶん削られたようよ? 自分の命で自分が罰せられてるとは、この方たちは知らない方が幸せね。


 シャイラはまだ巫女の力をコントロール出来ていないの。心のまま動かしている。


 幻夢を起こす時は、精は広範囲から万遍なく集めなければいけないわ。



 さーて、私がここでするべきことは───


 私の新たな眷属を滞りなく職務に就かせること。



 ロッシェル(この子)が今ここで死んでしまったら、シャイラは巫女の座を辞退し、私から去ってしまうかも知れない。持たなくてもいい罪悪感に絡め取られて。


 私はこの日をずっと楽しみに待っていたのに、それは困るわ!



 だから、私はこの女の子を助ける。シャイラが出現させた幻夢の芽吹きを使って。



 高貴な生まれだという男女の命を支えていた精を削って出現させた、この部屋を覆う幻夢の芽吹き。


 なればこれれらを形作る精をそっくり、命の尽きかけたこの子に与えましょう。回復には十分過ぎる量だわ。


 奪ったものを返す、という単純な循環は、いつの世においても普遍的なことよ?



 ───さあ! みどり芽吹いた精たちよ! 流れよ! ここに横たわりし命尽きかけた少女の精となれ!!



 私の命令で、シャイラの創り出した幻夢は解け、ロッシェルという女の子の体は回復した。


 シャイラが向こうでロッシェルの魂を導いて転生させてしまったら無駄になるけれど、たぶん戻って来る。生きている体と、一旦結びついた魂の結びつきは強いもの。体が魂を欲すれば、魂はそれに呼応する。



 高貴なおふた方もイバラから解放されて一石三鳥だったわね。


 望み通り助けてあげたのに、私にお礼も言わずに毒を吐きながら慌てて逃げ去った。



「このような忌まわしい孤児院は潰れてしまえ!」


「私たちにこのような仕打ちをするとは! 最高司教様に申し立てをしましょう、お父様!」



 貴方がた、孤児院に復讐は無理よ? そんな余裕はない。


 だって、シャイラを怒らせたせいで寿命がずいぶん削られたわ。おふたりには急速に衰えが訪れることでしょう。なれば皆それを見て、貴方がたが触れた呪いを恐れ始めるわ。


 それに、誰かがこの孤児院に手出ししたならば、シャイラは無意識の内に私怨で何を起こすことか。


 純粋な人間のシャイラには神の意識は無いの。けど、神格の私を補うにはそれでいいのよ。

 

 まさか私がこんな些事に直接関わるなんてね? ウフフ♡



 こちらは全て上手くいってるわ。早く戻って来てね、シャイラ・・・


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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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