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芽吹きの巫女  作者: メイズ
転生・転生・転生
46/59

窮地のシスター

「おはようございます。大シスター」


「おはよう、シャイラ・・・」


 院長である大シスターワイズと廊下ですれ違いざまのご挨拶。その笑顔がどこかぎこちない笑顔。どうかしたのかしら?


 数歩進んでから、呼び止められた。


「・・・あっ、待って! シャイラ! ちょっとわたくしのお部屋に来てちょうだい」


 何かしら? ちょっと嫌な予感。


「はーい! お手洗いに行ったらすぐに戻ります」


 考える時間稼ぎよ。


 *


 お手洗いで手を洗いながら考える。いったい私になんの用? まさか実家から何か? 急に私に養子話を勧めるとか? ううん、そんな兆候はまったく無いかったわ。院長室に個人的に呼ばれる覚えはない。


 私は、少し警戒しながら院長室の扉をノックする。


 シスターワイズが扉を開けて私を招き入れ、パタンとすぐに閉めた。


 そのまましゃがんで私に目線を合わせた。


「シャイラ、わたくしに教えてくださらない? あなた、どうして薬草を知っているの? 神様に薬草を教えていただいたって本当なの? 夢で見たって」



 私に向けるこの顔。


 分かったわ・・・


 この人、子どもの噂を気にするなんて。



 敬虔な神の使徒でいるこのシスターは、神と通じたかも知れない私を、羨み、嫉妬しているの。


 面倒なことは、かわした方が得策ね。


「・・・えっとね、夢の中で神様が私に教えてくれたけど、神様に教えてあげたのは、先月もらわれていったサミュお兄ちゃんだよ。そういう夢を見たの」


 今頃サミュは貰われた家で奴隷にされているかもね。15になったばかりの男の子を指名するなんて、無料の労働力が欲しいだけだって私にはわかるよ。だからって私にはどうにも出来ない。


 サミュエルは、私の10歳ほど上の物静かな少年だった。14の彼が初歩の薬草の知識を得ていたとしてもおかしくは無いわ。去年の秋にここに入って、ここにいたのは半年もない。無口で誰ともほぼお話してなかったし、彼のことは探りようはないはず。


「あら? 意外だわ。シャイラはサミュエルと仲良しだったのかしら?」


「ううん、一回だけお話したの。その時、葉っぱのこと教えてくれたような気がするけど、忘れちゃったな。私もよくわかんない。もういい?」


 ニコリと微笑み首を傾げた。


 幼少期の子どもの唯一のアドバンテージは、曖昧が許されるところかしら?


「・・・ふふ、そうよね。シャイラはまだ小さいのだもの。夢も現実もごっちゃよね。もう行ってもいいわよ」


 ホッとしたような大シスターの声。


 これからは行動と言葉に気をつけよう・・・・



 ───けれども、そうもいかない事態が訪れたのよ。



 その日は年かさの子どもたちの、待ちに待ったお楽しみの日だった。


 町の慈善団体の計らいで、初夏の夜のお祭りに、孤児院の子が招待されたの。せっかくだからと、孤児院では8歳以上の子たちだけ、大シスターと招待を受けることにしたのよ。


 行ける子は、花火も近くで見られるって盛り上がってワクワクしてるから、お残り組の10人はしょんぼりだったのよ。


 お兄さんお姉さんたちが大シスターと出かけて行って、残りの私達はシスターエルザといつもと同じ様に夕食を食べ、お片付けして、順番こにお風呂に入って出たところだった。


 大シスターに引き連れられて、9人の子どもたちが帰って来たの。



「おかえりなさい! ねえねえ、どうだった? 花火はキレイだった?」


「お菓子は貰えたの? どんなところだったの?」


 私たちは取り巻いて騒いでるけど、帰って来た子たちはあまり元気がないの。



「ただいま。私、なんか疲れちゃったみたい・・知らない人がたくさんいたせいかな」


 ロザリーは弱々しい笑顔を私たちに向けた。


「ったく・・・チビども、うっせーぞ、あっち行ってろよ」


 いつも陽気なミュシャなのに、機嫌悪い。



「僕、トイレ我慢してたんだ。ごめんっ、ちょっとどいてッ!」


 バタバタ廊下を駆けて行くロン。よっぽど我慢してたのね。


 大シスターもどことなくか顔色が悪く見えるけど、引率して疲れただけかしら?



「こらこら、小さい組はもう寝る時間よ! 自分のお部屋に戻りなさーい」


 シスターエルザが私たちを引き戻した。



 ベッドに入っても、ロッシェルとヒソヒソおしゃべりしていた。


「ねえ、なんだか廊下が騒がしいね。お祭りでまだ浮かれてるのかな。ズルいよね、ちょと私たちよりおっきいからってさ」


「ロッシェルはあとちょっとで8歳だったのにね。運命の別れ道だったね」


「はぁぁぁ・・・私も行きたかったぁ。あいつら、なに騒いでるんだろ? 覗いてこようっと! シャイラ、カモン!」


「イエッサー!」


 *


 ロッシェルと二人、忍び足で階段を下りて、ダイニングルームの中を覗いたの。



「オエッ・・・シスター、ボクすごく気持ち悪いです・・・」


「実は私もさっきから胸がムカムカしてる」


「ウウッ、お腹が痛い・・・と、トイレ!」



「ぐっ・・・シスターエルザ、わたくしに・・・お水を少し・・・下さる?」


 大シスターが、壁にすがりながらずるずると床に崩れてうずくまった!


「だ、大シスター!! お気を確かに!!」


 シスターエルザがどうしていいか分からずオロオロしてるわ!



 玄関から大声がした。


「おーい! 祭りボランティアのグラスゴーだが。祭りの飲物で集団食中毒のようだ。こちらは大丈夫かー?」


 部屋を抜け出し扉の陰から覗いてた私たちを無視し、シスターエルザが飛び出して行った。


 もしかして、テンパってロッシェルと私のことも見えてなかったのかも。


「ぜ、全然大丈夫じゃありませんわッ!」 


「やっぱりそうか・・・」


「食中毒ですってッ!?」


「今、医者をたたき起こしてるが、町には元から医者が1人しかいないし、この分じゃ薬も足りないのは明白だ。オレにだってどうにも仕様がない。申しないがこちらはこちらでなんとかしてくれ。町の方も大変なんだ。俺は隣町まで医者を探しに行かなきゃいけないんで失敬!」


「ちょ、ちょっとッ! あなた、待ってくださいなッ!」



 ((((;゜Д゜))) あの人、馬に乗ってさっさか行っちゃった! 



 残された、茫然自失のシスターエルザ・・・・


終わらせたいのですが、少し伸びてしまいました。あと数話で終わりたい。

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お読み頂きありがとうございます
眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
― 新着の感想 ―
 ファンタジー世界でそれを出すとは。不謹慎ながらも笑ってしまいました。  時間差で同時多発的に被害が出るから、確かに大災害にはなりますね……。
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