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芽吹きの巫女  作者: メイズ
転生・転生・転生
45/59

孤児院にて

 どうやら天涯孤独から始まるみたい。今度の私の人生───


 *



「お客さん、そろそろ着きますでさぁ」


 馭者(ぎょしゃ)の大声。



「・・・暗い内に出たのにもう昼ね。この子にはさっきヤギの乳をあげたし準備は出来ているわ。お着替えもガーゼも一揃え持って来たし・・・」


 ガサゴソと荷物を確認する音。


「・・・さみしいところだわ。周りには何もない町外れね。ああ、見えて来た、あれね。広そうな庭があるけどお世辞にも綺麗とは言えない建物だわ・・・」



 馬車が止まった。


「お客さん、着きましたでー!」


 扉が開かれた音。


「ありがとう御者さん、少し待ってて下さい。直ぐに戻りますから」


 馬車から下りた、エラさんと私。



「あらあら、賑やかね。庭にいた子どもたちも遠巻きで見てるわ」


 目はぼんやりしか見えないけど、ざわめきで子どもたちの気配を感じるわ。


「大シスター! 誰か来たよー!!」


「大シスター、早く早くっ!」


 男の子と女の子の元気な声。



「子どもたちがみんなでシスターを引っ張って来たわ。元気な子たちね」


 独り言で私にお話してくれるエラさん。


「ほら、お客様がいる時は向こうに行きなさい。えっと、何か御用ですか? あなたは? 抱えていらっしゃるのは赤子・・・!」


 非難の響きを含んだ女性の声。


「いえ、待って下さい! シスター! 私『緋色のカラス』の使いですわ。お約束ですわよね」



「・・・! あなたが緋色の。私が院長のワイズです。・・この子がお約束の子ですのね。さあ、院長室へどうぞ」


 興味津々の子ども達を振り払い、私たちは部屋に通された。



「ええ、御約束は承知してます。たいそうな寄付をありがとうございました。それで、この子・・・」


 私は、抱き替えられた。柔らかく温かい場所へ。



「可愛らしい女の子ですの。お願い致しますわ。本当にお可哀想ですの。本来なら高貴な・・・いえ、なんでも」


「・・・いいのです。事情は詮索はしませんよ。あの寄付金で、私たちはどんなに助かっていることか」


「シスター、これがこの子の荷物。そしてこれがこの子のお世話料の金貨ですわ。大事に育てて下さいませ。この子が幼い内に亡くなるような事があれば、ただではすみませんわ」


 エラさんの厳しい口調。


「・・・きっと高貴な血が流れているのでしょうね。で、この子のお名前は?」


 私はシャイラよ!


「しゃー、しゃー、んばぁー!」


「えっと・・・この子の名前は・・・まだ・・・けれど、私が名付けるのはおこがましくて気が引けますわ、シスター」


「しゃー、んーんー! あー、うー!」


「では、わたくしが名付け親に? それでも構いませけれど、あ・・・この子何か言ってるみたいですね。まだ生まれたてでしょうに」


「本当ですね。この子、馬車の中でも私のお喋りが好きで、お話すると機嫌が良いようです」


「おかしな泣き方ですこと。・・・シャーシャーと言ってるように聞こえませんか? マダム」


「いっそこの子が自分で名付けるのも手ですわね。シャーナ?」


「シャンナでは?」


 違うわ! 「ギャァァァン」


「・・・お気きに召さないようですわ」


「シャラでは?・・・あら、また大泣きだわ・・・」


「あの、マダム。女の子ならシャイラが良いのでは? 響も良いですし」


 それっ! 


「・・・あら? 泣きやんだみたい。なら決定ですわね、シスター」



 名前って、生まれて初めてかけられる呪いなの。一生つきまとう呪い。



 *


 ────私はあの日からシャイラに戻れた。



 院長は敬虔な北の星信者で、私は持参金付きだったことで感謝されているらしく、孤児院は今のところ辛い所ではないの。皆、出来ることを手伝いながらシスター2人と、子どもたち二十人弱で質素に暮らしてる。


 私、赤ん坊から成長して行くに従って、自分自身に驚いているの。


 鏡に映った黒髪の小さな女の子が、とても愛らしい姿なんだもの。私はきっと母親に似たのね。お顔は知らないけれど。


 私を引き取りたいという人がたまに現れるけれど、適当な理由をつけて孤児院ではお断りしている。


 だって、私がいれば不幸な生まれの私たちに見学者らから寄付金が集まるの。ここでは特に外見は武器になる。


 それに私の場合は特別よ。実は高貴な生まれなのは院長らは知っている。万が一でも実の家が返せと言って来た時のことを思えば、手元に置いておく方が無難よね。大金も受け取っているし。


 ここは意外と住み心地はいいの。私の精神は子どもじゃない。庇護者の愛を必要としているわけじゃない。



 3歳も過ぎて、おしゃべりも上手になって、自由に動ける年頃になった私は、辺りの探索をしているわ。


 ここは緑に囲まれた僻地だもの。周りは草だらけ。役立つ植物を探しては摘んで、洗って干しておくの。


 私のこと、草を使っておままごと遊びをしてるってシスターたちは思っている。



 体が子どもになると、子どもの遊びが楽しくなるし、子どもの食べ物がおいしく感じるし、すごくお腹が空く。周りの本物の子どもたちからも学ぶところは大きいわ。子ども時代って人生の中でやはり特別なの。何回生きてもそう思う。


 そしてすべては周りの大人に生殺与奪の権を握られる理不尽な存在でもあるの。それを突っぱねる知恵も実力もまだないんですもの。



 ────この日、私が子どもたちから一目置かれる存在となる始まりの日となった。



 キャー、おそと遊び、楽しー! ブランコは順番こ。


 ん? 向こうで数人が囲んでるのは? 私はブランコの列から離れ、駆け寄る。


「ふえーん、痛いよー・・・転んじゃったよー、痛いよぉー」


「誰かシスター呼んで来いよ」


「いま、ちょうどお使いに行ったよ。シスターエルザは大きい組とお昼ご飯の用意してる。呼んだらご飯が出来ないよ。これくらいガマンしろよ。とにかく洗え」



 あらあら、庭の木の根っこにつまずいたのね。この子は2つ上の女の子ロッシェル。


 これはよくある擦り傷だわ。なら────


 私は血止めの薬草がこの庭で生えてるとこは知ってるから、急いで摘んで戻った。


「空気が染みるし、痛いよぉ・・血がずっと滲み出て来るよぉ・・・ふぇーん、ふぇーん!」


「見せて! 傷口を洗ったのね? この葉っぱを揉んでつけると血が止まるよ、はいどうぞ」


「・・・本当? こんな草で?」


「うんっ!」


「じゃあ、やってみる。ウググ、しみるっ! ・・・あれ? 本当に血が止まったよ!」



 横で見てた1つ上の男の子が、驚いてる。


「わー、シャイラ、俺虫に刺されて脚がずーっと無茶苦茶痒いままなんだけど、いい方法ある?」



 私はもちろん虫刺されに効く薬草を知っているから、探して摘んであげた。


「洗ってから、この葉っぱの汁をつけるといいよ。1日何回か繰り返してね」


 そもそも虫に刺されなきゃいいのよ。


「虫よけの草もあるから教えてあげる。こっちだよ」



 放置されてる隅っこのそこの花壇に、生き残って繁殖してるの。


 このハーブはきれいな花が咲くから観賞用として誰かが以前植えたのね。このハーブは丈夫で滅多に枯れることはないの。


「この葉っぱを揉んで汁を、服や体のどこかにつけておくといいいよ」



 *



 数日後。


「あんなにずっと痒かったのにさ、急激に良くなった。ありがとな、シャイラ。それにあの葉っぱの汁で虫刺されも減ったぜ」


「ふうん、良かったね。あの草を覚えておくといいよ」


「けどさ、変なの! シャイラはなんで、そんなこと知ってるんだよ? おまえ赤んぼうの時からの捨て子じゃんか」


 私がどんだけ生きてると思ってるのよ? って、言いたいけど言えない。


「・・・えっと、えっと、夢で神様が教えてくれたの!」



「マジ!? 神様がシャイラに! へえ、すっげえな!!」



 この噂はシスターたちも含め、瞬く間に広がったの。


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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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