清廉の雫
もしかしたら不気味?な写真がありますのでご注意下さい。
個人的に所有してる呪物です。
アルシアの短剣のペリドットの灯りが、周囲を仄暗く照らす。
暗がりから何かが出て来るような気がして、出し抜けに照らしてみては、何もいないことに胸を撫でおろすを繰り返す。
目につくものは何もない、冷たい空間。この中のどこに清廉の雫があるの?
振り返れば、閉じられた重苦しい扉。
胸がキュッと締め付けられる。
私、ここから出られるよね???
やっと目的地にたどり着けたのに、まるで棺桶に閉じ込められたような絶望的な気分だよ。
けど今は、進むしかない。
外の音は全く聞こえない。ここは沈黙の別世界だ。
灯りを翳して奥へ進む。
───えっと・・・・?
突き当たりは壁。行き止まり。
壁際に置かれた脚の長い石で出来た飾り台が一つ。上には黒塗りの古びた小さな木の箱が一つ
飾り台の上には文字が2列刻まれてる。
───If you are a greedy and arrogant person, you will be lose our support.
私が貪欲で傲慢な人なら、助けを失う・・・?
私は欲張り? 威張ってる? わからない。
時にそうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。
2列目。
────Can you see the truth?
真実が見えますか?
台の上の木の箱をそっと開けてみた。
♪〜♪〜♬〜~♫〜~♫〜~
・・・オルゴールだ。かわいらしい音とメロディが始まった。
ちいさな子どもが喜びそうな、クルクル回るからくりのついたオルゴール。
箱の中の盤上の上には作り物の小さなベビとカエルが乗っかっている。お互いが円盤の反対側にいて、音楽に合わせクルクル周りながら、永遠に終わらない追いかけっこしてる。
毒ガエルデンドルと、大蛇ミュリナス?
────どちらが追って、どちらが逃げてるの?
ミュリナスが追ってデンドルが逃げてる。
ううん。違うかも。
デンドルが追ってミュリナスが逃げてる?
事実は目に見えているけれど、実際は私には何もわかってはいない・・・
傍目では見極められない。
────私にはわからない・・・本当のことは私にはわからない。
メロディは次第にゆっくりになって来て、ヘビとカエルの追いかけっこもゆっくりになって、途切れてから2つ余韻の音を鳴らして止まった。
次いでカチッと微かな音がした。
「あっ!」
カエルの口に収まっていたクルクル丸まったベロが、ビヨーンと伸びて出て来た。
ヘビの口からも!
それぞれベロに何か小さな文字が書いてある。
ペリドットの灯りで照らして読んでみる。
────If you can't see the truth, kneel down to pray.
カエルさんは、本当のことがわからないならひざまずいてお祈りしなさいって言ってる。
────If you can see the truth, you don't have to do any more.
ヘビさんは、ほんとうのことがわかるなら、もう何もしなくていいって言ってる。
見極められない私は、試験には落ちてしまうの?
今ここでお祈りしたらそこでゲームオーバー?
お別れしたくない。この不思議な世界と。
大好きなアルシアとナチャのことも忘れたくはないよ。失うと思っただけで、ほら、また涙が頬を伝ってる。
────けれども私はひざまずく。
ここで嘘はつきたくないから。
自分の心をごまかして清廉の巫女になってしまったら、きっと私はずーっと痛みを抱えて嘘つきの巫女として生きるの。大好きな人たちに嘘をつきながら。
かつての清廉の雫の巫女たちに、私は膝をついて目を閉じて祈る。
固くザラザラした石の床が膝に食い込むけれど、ここでの出来事の記憶をこれから失うであろう痛みに比べたら痛くもないかも。
────真実が見えない私に真実が見える日が来ますように。真実を見極める目を持った人になれますように・・・
私に、優しくしてくれた、この世界の人と生き物たちにありがとう。
私はこの世界を失ってしまっても、せめて私の中にこの不思議世界の残滓くらいは残りますように・・・
*
私、どれくらい祈っていたのかな?
祈りを捧げてから、目を開けると暗闇に更に目が慣れたみたい。
ペリドットの明かりだけでは見えてなかったことに気づいた。
飾り台の下の壁に、チェストについてるみたいな、小さく丸い目立たない取っ手が1つ付いてるの。
飾り台の天板の陰になって、しゃがまないと見えない位置にある。
ひざまずいて、目を瞑ってたくさんお祈りしなければ、絶対に見つけてない。
なんだろ? コレ・・・?
輪っかの取っ手を引っ張ってみた。
ワワ! 手前に引っ張ったら、四角く切り取られた壁が倒れて来た! と思ったら、急に力が反転して、それは壁の裏側にガコンッと倒れた。
ぽっこりと壁に空いた、私が潜れるくらいの大きさの穴。
ペリドットの明かりを差し込んで照らすと、そこには地下に続く細い階段があるみたい。
続きが出来たのなら行くしかないよ。どうやら私は諦めるには早かったようだね。お祈りした私は、正しい道を選んだんじゃない?
穴をくぐり抜けたら、それからは立って歩る高さは十分あった。
一歩一歩緊張しながら階段を下りると突き当たりで、扉の無い小さな部屋にたどり着いた。
その部屋の一番奥の、造り付けの石の壇に乗っていたのは────
「ヒッ・・・!」
なにこれ・・・・
無気味な青い塊が4つある。
まさか・・・これがゼニスおばあさまの言っていた、清廉の雫が結晶化した呪物なのッ!?




