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芽吹きの巫女  作者: メイズ
清廉の雫を求めて
33/59

迷宮

「ワ! ワワワワ・・・痛っ!」


 足元に罠のように張り出てる根っこに足を取られて転んだ。


 大丈夫。手のひらと膝が汚れただけ。


 けど、転んだ衝撃は、腕の傷にもビーンビーンって響いてる。自分に言い聞かせてなんとか支えてた気分は急降下。


 痛いのはともかく。



 私が今転んだことも、一人きりでいたら全てが自己完結となることに気がついて、落ち込んで、そのまま座り込む。


 こんな時、ナチャがいたらなんて言うかな?


「大丈夫か? シャイラ」のあとは、こんなんじゃないかな?


「シャイラも蜘蛛だったら転ばなかった」それとも「今のは、生き物の足は本来2本では足りない典型例」


 なーんて言いそうだよ。ね? ナチャ・・・・


「・・・・・」



 ────虚しい。



 よいしょっと。がんばって立ち上がるね。私は清廉の巫女になるんだ。


 アルシアもナチャもエーゼお姉さんも応援してくれてる・・・・



「・・ううっ・・・クスン・・・」


 景色が一部滲んで見えて、唇がワナワナ震えてしまうのは、泣くのをぐっとガマンしてるから。


 唇をぎゅっと結んだ。



 巨大モンステラ群の林を一人進む。


 トゲあるシダ植物に覆われ、気根が交わる隙間を跨ぎ、くぐり、乗り越えて。


 私は進むしかないんだ。



 薄雲って太陽が見えなくなった────



 *



 どうなってるの? おかしいよ!


 円の中心に向かってるはずなのに。


 どうして何回も外側に出てしまうのさッ?!



 アルシアと通った時は、道は険しかったけど、すぐに越えられたのに。



 *



 2回、林の外側に出されて、今は3度めのチャレンジだよ。


 今度こそ!



 *



 同じとこをグルグル回ってる?


 はー・・・疲れたよ。日が暮れちゃったらどうしよう。


 心細い。お腹空いたな・・・


 ナチャは今ごろどこで何してるんだろ・・・


 ナチャのお直しチュニックのお陰か、虫に一つも刺されない。



 ねえ、ナチャ。たった数日一緒にいただけなのに、なんて大きな痕跡を私に残していったの?



 良さげな倒木があったから、腰掛けた。


「私は結局一人では何も出来ないただのお子様だったのかな・・・」


 泣き言の独り言。ナチャに貰った水晶のお花を手にとり眺めてたら、景色が滲んで来た。


「・・・ナチャ・・・クスンッ・・・」


 ダメだ。ここで泣いたら止まらなくなる。張り詰めて保ってる心が崩れてしまうよ。



 ────ボトンッ



 ヒッ!


 ((((;゜Д゜))) びっくりしたぁ・・・



 上から何か落ちてきたみたい。横っちょの、草と枯れ葉の茂みの中。


 木から飛び降りた動物だったりして? またもやベビ?


 恐る恐る覗いてみたら───



「・・・これは!」



 上を見上げた。


 ああ、これはモンステラさんの贈り物だ!


 熟れたモンステラの実。


 黄色がかった黄緑色の細長い実。私の腕半分くらいの長さ。ハチの巣みたいなハニカム模様の皮に覆われているの。滅多に食べられないごちそうだよ。だって実が熟すまでに季節一巡りかかるんだよ。


「ありがとう。モンステラさん。もしかして私を慰めてくれたの? 私、いただくね」


 さっそく皮をむいてとうもろこし食べるみたいにかぶりついた。


 ん~~・・・甘くてめちゃくちゃおいしい!! これ一つでバナナとパイナップルとマンゴーを思い起こさせる味。



 自然のおいしい食べ物が、私にパワーをくれた。


 気力を取り戻した私は、再び立ち上がった。



 太陽は雲に隠れてたまま。きっともう半分沈んでる頃。だって、上空では、カラスさんたちが、すみかの森に戻って行く数羽の声が聞こえ始めた。小鳥たちの小さな群れが、ピーピーおしゃべりしながら、次々と同じ方向に向かって飛んで行く。



 薄闇が迫るのは、たぶんもうじき。私は、落ち着いて、この林をもう一度よく見なければならないね。


 モンステラの幹の目の模様は、葉っぱが落ちた跡。葉っぱが落ちながらどんどん上に背が伸びていくんだよね。


 太陽の光を求める植物。


 ならば、幹の北向きに生えた葉っぱが落ちて出来た目の跡の方が、南向きに生えた葉っぱの跡よりも、微妙に小さいって法則があるんじゃない? 南向きの葉っぱの方が有利だもん。


 ブローシュアの地図から、私は北東に進めばいいことがわかる。


「よーし、3度目、今度こそ行っくよー!!」



 ───いいぞ! その調子だ、シャイラ!!



 サワサワ葉擦れの音さえ、私を応援してくれてるように思えて来た。


 日が暮れないうちに、攻略しなきゃね!


 

 *



「あっ、これは・・・」


 トレイルさんの地図で見た。


 埋もれた昔の道。所々に顔を出してるのは、(いにしえ)の道に敷き詰められていたという美しいモザイクのタイル。


 これは祠へと続く道だ────



「わあい!! 開けた道に出られた!!」


 私、モンステラ迷宮を抜けたんだ!


 タイルを見失わずに辿れば、もう迷うことはないよ!



 ふと、雲に隠れていたお月様が出ていて、光る準備をしてることに気がついた。


 もうすぐ闇が来る。



 私は道を進む。速めた足で、確実に祠へと────



 *



 腰にはアルシアの聖なる短剣。


 (まと)うは、魔蜘蛛ナチャ特製、オーロラ輝くチュニック。


 ここまで進めた誇りを持て!



 私は清廉の巫女候補、シャイラ────




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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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