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芽吹きの巫女  作者: メイズ
清廉の雫を求めて
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モンステラ・モンスターとミュリナスの記憶

 ───あ! あれは・・・



「ナチャ、あそこを見て! あれってモンステラ群だよ! 間違いないよ」


 わあい! やっと巨大モンステラ群の林に着いたんだ! 疲れもふっ飛んじゃう!


 幹から地上へむけて伸びてる無数の根っこ、気根が織りなす道無き迷路への入り口。前に来た時は、ただアルシアについて行くだけで、この自然迷宮を抜けられたけど・・・


 地図で見ると、モンステラの林が大きな円をなして、祠を守るように囲んでいるよ。



「・・・これが? ・・・なるほど。ここを抜けたら遂に目的の祠ってわけだ・・・」


 やっとここまで来れたのに、私の肩の上のナチャは、なんだか思わしくなさそうな口調だね?



「大丈夫。祠を囲んで円状になってるから、どこから入っても祠へ着くはずだよ。中で迷わなければね」


「そういうことではない。・・・これは壮観だ・・・・さすが『モンステラ』と名乗るだけのことはある」


「どういうこと?」


「この名は『怪物』と言う言葉が由来すると思われる」


「モンステラ、モンスター? 怪物か。・・・確かに幹の模様が、ぎっしり並んだ無数の目みたいで、見方によっては、ちょっと不気味かも」


「で、人間のシャイラには、このは林はどう映る?」


「どうって?」


「いや、他のモンステラは知らないが、ここのモンステラは名前の通り奇っ怪な怪物だ」


「ヤダなぁ、ナチャったら。普通だよ。植物だよ。全然怪物じゃないよ?」


「・・・だったら良かったのだが。俺は手伝わないし・・・」


 それ、どういう意味?


「ナチャったら、はっきり言っ────んっ?!」



 瞬間何かが私の側をシュッと通り過ぎた。



 ───バシッ!



「ななっ? わわっ!!」


 ななな!? 一本の気根がいきなり伸びて来て、私の足元をムチみたいに打った!


 なにこれッッッ!!!!


 気づけばモンステラ群の気根が、クラゲの脚みたいに一斉にフヨフヨ動いてるッ!!


 イヤイヤイヤ、どうなっちゃってんのッッッ!



「ゲゲッ!!」


 ウッソ! 更に、幹一面についてた目模様が、本当の目になってるッッ!! 


 無数の目が一斉に、ギョロッて私を見たッ!!


「ギャーッッッ!!」


 私は突然起こった驚愕現象から目を離せないまま、膝はガクガク。なんとか後ろに一歩踏み出して、3歩目に尻もちをついた。



 ────おまえたちは何者だ? なぜここを通ろうとするのだ?



 地から響くような、ずしりとした太い声がどこからともなく聞こえて来た。


 私はアワアワで、左右前後を見回したけど、誰もいない!? ってことはやっぱりこれはモンステラ怪物の声ッ?! ナチャが気にしてたのはこれのことだったんだ!


 ワワワ・・・逃げたいけど、尻もちをついたまま腰が抜けたみたいに動けない・・・


「わわわ、わた、私は祠に用があるんだよ。私が清廉の巫女に相応しいか、清廉の雫の結晶呪物にお伺いするために」


 尻もちの私の目の前まで気根の(つる)が数本フヨフヨと寄ってる。それは私に触れはしないけど、怖くて避けてのけぞってしまう。


 ────ほお? 巫女候補の娘。さればアルシアの短剣を我らに示せ。



 私は腰のベルトに挟んだ鞘から短剣を抜いて上に掲げて見せた。


 数本の気根の先端が、私の右手とアルシアの短剣を優しくなぞった。怖いけど、じっと耐える。



 ────確かにアルシア様の短剣である。・・・おや? 娘よ、左手も見せよ。



 なんだか注文が多いモンステラだね。そのうち、靴脱いで、服脱いで、体に粉を振りかけろって言われたら走って逃げなきゃね。震えて座り込んでる場合じゃないよ・・・


 私は剣を鞘に戻し、立ち上がってお尻をパタパタはたいてから、左手を前に出した。


 気根たちが私の左手に緩く巻き付いて探ってる。気根がビクっとして、手から一斉に離れた。



 ────これは・・・ミュリナスの記憶! 娘、どのような手を使ってこれを手に入れたのだッ?!


 モンステラさん、何を驚いてるの?


「私は確かに娘だけど、名前はシャイラだよ。ミュリナスの記憶? なんのこと? 手に入れたって? 私はミュリナスのものは何も貰ってないよ」



 ────いや、間違いなく記憶を一部受け取っている。その手に染み込んでいるではないか! 所々にカギはかかっているが。 


「ごめんなさい。モンステラさんが何を言っているのか、私にはさっぱりだよ」



 ────娘シャイラ、『アスクレピオスの杖』を知っているか?


「うん、知ってるよ。蛇さんが死んだ蛇さんに薬草を運んで生き返らせたという伝説のこと? 村長さんちの貸本で読んだことあるよ。それをアスクレピオスさんが偶然見てて、死人さえ蘇らす医術を編み出したんだっけ? で、やりすぎて神様に怒られたっていうお話」



 ────魔力も少ないミュリナスが、なぜ厳しい自然界にて生き残り、王者となれたのか、わかるか? それは「神聖な洞察力」と「隠された知恵」を持つからだ。


 ミュリナスが薬草の秘密の知恵を持ってるってこと? 


 そういえば、猛毒ガエルを食べちゃったのに、翌日にはほぼ回復してたよ・・・ってことは! そっか。



「ミュリナスは傷ついても、死にかけても優れた薬草の知識で命を繋いでいたってこと?」


 ───ご名答。



 それが私の左手となんの関係があるっていうのさ? モンステラさんは何を言いたいの?



 ────故意か偶然かは我らには知れぬが。シャイラ、おまえのその左手に染み込んだミュリナスの記憶の中に紛れて、ミュリナスが知り得た植物の効能、薬草の秘密の知識が紛れていると見た。ただ、ミュリナスが秘匿したいその部分には、それぞれ固くガギがかけられている。シャイラ、おまえの努力と才能次第では、ミュリナス秘匿の薬草の知識が閉じ込められた記憶の箱が開かれる可能性がある。



 ・・・あ、そっか。私はミュリナスの涙に触れた。そう、左手だったよ。


 ミュリナスは、懐かしき昔の夢を見て泣いていたんだっけ・・・・


 それはミュリナスの記憶を含んだ涙。


 その中には、ミュリナスが長年かけて得た薬草の知識も混じってるってこと? 但し、いくら待っていても、ミュリナスの持つ有用な部分の記憶は、カギがかけられていて開かないんだ? 私が開けようと努力しなければ。


 有用な薬草の知識は、他者に知られないように用心しているから、心のカギがかかってるってことだね。そりゃ、手の内をライバルに知られたらサバイバルで勝てないもんね・・・



 ────私の左手は、意図せずにミュリナスのとっておきの知識を盗んでいたらしい。但し厳重に金庫に入れられたままの。


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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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