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芽吹きの巫女  作者: メイズ
宮殿への誘(いざな)いと、謎の美少女
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謎めきの祠

「ふぁ〜・・・ここまでまさに探検って感じだったね」


 隙間をくぐったり乗り越えたり『天空の巨大モンステラ群の林』の気根の迷路。


 アルシアを追いかけてクリアしたら、目の前に現れた祠を私は、マジマジ眺めてる。


 正面には階段が付いた土台の上に、石積で出来た小さなおうち。私くらいの子どもがが数人うずくまって入れるくらいの大きさかな。これは、かくれんぼに最適そう。


 いつからあったのか、風雨と植物に侵食されてる表面の石積み。と言うか、もう屋根の辺りは樹に飲み込まれて一部になってる。


 私たちは所々崩れた7段の階段を、恐る恐る登る。


 壁にはツタ状の草や、植物の気根が何本もへばりついているし、ヒビ割れにも入り込んでる。植物の力の凄さというか野生で生きる実力って、人を遥かに超えてて怖くも感じる。


 上の方は大きな葉っぱが立派に繁って、良く言えば、まるで小人さんが住んでる()のお家みたいでもあるよ。だとしてもさすがに空き家にしか見えないけどね。


 なんだかちょっと不気味〜・・・



「うわー・・すごい古そう。こんなにも太くなった気根が張り付いてるし」


「そうね、長らく放置されていたのよ。ここには用が無い時代が続いたせいで」


「用・・・?」


 それって今、何か特別なことでもあるってこと?


 アルシアの話は、時によくわかんなかったりすることもしばしば。


 どんな神様が中にいるのか知らないけど、この祠の扉は硬く厚く重厚そうな板状の2枚の石で閉ざされてる。


「ここまで古いと祠と言うより遺跡みたいだね。アルシアはここに、私と祈りを捧げたくて探してたの? ここに用がある時ってどんな時なの?」


「詳しいことは後から話す。そうしないとシャイラが混乱してしまうと思うから。まずは扉を閉ざすようにかかったこの太い気根を切らないと」


 下から扉に這い上がっていた邪魔なツタを短剣で払いながらアルシアが言った。


「アルシア、もしかしてこれを開けるの? 開けてもいいの?」


「だって、中に用があるのよ?」



 何が入っているんだろ? 中はどうなってるの?


 宝箱を開けるみたいで、断然楽しくなって来た。ワクワクだよ、早く見たーい! 


「あー、ならこの1本の気根が、もうちょっとだけ横にズレてたら良かったのにね!」


 断然協力的になった私は、邪魔してる気根を手で引っ張ってみたけど、()ったー・・・びくともしないよ。こんなに太く硬くなったツル根っこ、私より年上に違いないよ。


 アルシアは腰に帯刀した短剣を鞘から引き抜いて、ブツブツとおまじない?を言いながら気根と格闘し始めた。そんなに小さな刃物で切れるのかな?


「ねえ、アルシア。さっき言ってたこの扉に彫ってあるシンボルマークってなあに? だいぶ削れてるし私にはだたの模様だよ」


 数字の8の字が横に4つ並んでる?


「これはね、再生の神的シンボルなの。シャイラの世界用のね」


「神的シンボル? 私の世界・・・?」


「ええ、そうよ。探していた祠はこれで間違いはないわ」


 アルシアの言ってることってどういうことかさっぱりだよ?? そんな言い方したら、アルシアと私が違う世界に住んでるみたいじゃん。


 アルシアはいつの間にか、あんなに硬くて太い気根をいつの間にか切っていて、体重をかけて剥がし始めた。取り敢えず私も一緒に引っ張る。


「手伝うよ! いっせーの、んーーーッ!! アルシア、おおっ! もうちょっとで取れそ・・わわッッ」


「キャーーー!!」



 剥がれたのは良かったのだけど、軽い私たちはツルに掴まったまま勢いで祠の裏側までスイングして投げ出された。


「うう・・・イテテ・・・なんてこった。根っこめ!」


 倒れた姿勢のまま(うごめ)くと、地面に積もってるガサガサ枯れ葉とパキパキ小枝の折れる音が響いた。脚を引きよせ、上半身を起こした。えっと、アルシアは? 


 私はクラクラ目眩によろめきながら立ち上がると、全身にまとわりついた枯れ葉を払いながら辺りを見回す。立ち上がってすぐは視界が黒ずんでよく見えなかったけれど、その焦点が完全に合う前に、側で倒れてるアルシアを目の端で捉えた。


「あっ、アルシア!! 大丈夫だった?」


「ウウウッ・・・シャイラ・・・良かった。無事だったのね・・・」


 か細い声でそう言うと、アルシアの目尻から涙がこぼれた。横たわったまま、私に指先を伸ばした。


「ああっ! アルシア血が出てるッッッ!!」


 ちょうど飛び出してた小さな石に、頭がぶつかったみたい。


「ああ、これは痛いよ。すぐに手当てしなくちゃ!!」


「ウウッ・・・すごく痛い・・・私、動けないかも・・・シャイラ・・・ふえっ・・グスン・・シャイラ・・ごめんなさい・・・」


「バカッ! アルシアは痛くて泣いてもいいけど、こんな時に私に謝んなくていいんだよ!」


 とにかく血を止めなきゃ!


 アルシアのナイフを借りて、私のチュニックの裾を割いて包帯を作り、後頭部の傷口を水筒のお水で洗ってから、ハンカチを当ててなんとか結んだ。


 私の膝にアルシアの頭を横向きに乗せて、血が止まるように念じながらぎゅと押さえ続けた。紅く滲む包帯。


 血の気を失い青ざめたその顔に、私の内心は不安で押しつぶされそう!


 ───私はどうしたらいいんだろう? シャイラを背負って来た道を戻れるかと言われれば、たぶん無理。たぶんもなにも絶対無理だ。


 1人戻って助けを呼びに行く? 傷ついたアルシアを置いて? そんなの嫌だ!


 塀に囲まれたここなら猛獣は大丈夫なはずだけど絶対ではないし、小動物だからって複数で来られたら逃げられないアルシアは襲われるかもだし、ヘビは塀なんかじゃ防げないからここにはたくさんいる。


 と、とにかく一番アルシアにいい判断をすぐにしなくちゃ! けど、こんな人生初のエマージェンシーなシチュエーションにアワアワだよ、私。


 えっと、えっと、ワワワ、どうしよう・・・



 

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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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