アルシアの短剣はどこに
「どうだった? 私消えてた?」
「古いものだし、やはり魔道具としての能力は過信はしないほうがいいだろう。魔道具の魔力が効く効かないは相手の魔力の大きさも関係するが、特性との相性にもよる」
「ナチャには見えてたの?」
「まあな。ミュリナスには魔力はほぼないだろうが、ヘビの目にはこれがどう映るかは分かりかねる」
「そっか。けど、このローブを着てた方が安全だね。ちょっとホコリ臭いけど。私の服もカラスたちにボロボロにされてしまったしちょうどいいや。ここは地上と違って肌寒いし」
魔道具のローブは子ども用みたいだけど、けど私には丈が少し長すぎる。歩いたら引きずるのは難点。
「クックック・・・これではシャイラが着てるのではなくローブに着られている。シャイラは丈に合わせて大きくなれよ」
う・・ (~_~;) 私がまだおチビでお子様なのをからかうとは憎たらしいナチャだね!
「んー、それにはあと2、3年かかるからそれまで一緒に待つ?」
「チッ、待てるわけないだろう? 仕方ない、そのローブを俺によこしな!」
(・д・)
*
「わぁ・・・ナチャすごい・・・」
ナチャが繊細な糸を出して裾を上げてくれた。糸は透明だし支障も出ない。
私のおじいちゃんより器用だよ。ありがとうね。
「これは俺が3年ここで待てないからしただけ。決してシャイラのためではないのだ」
あの憎まれ口は天罰防止策だったの? ナチャったら・・・・
ナチャの糸はいろんなことに使えてスゴい。油紙の舟もきめ細かい強力ネットで固めてくれたし、岸に着いた時は、丈夫な太い綱で流されないよう木に繋いでくれた。まさに万能だよ。
「ゴージャス帽子は邪魔だから置いてく。私には大き過ぎて顔まで被さってしまうし。ローブだけでいいや」
よーし! 早速試験の続きだよ。
包帯を巻いただけで腕の痛みは大分収まってる。もしかして、これは特別な包帯なのかも?
*
単調なトンネルをテクテク、テクテク。
前方は見えない右急カーブ。
あれ? もしかして・・・? 進むにつれ、見えない先ににわかに光を感じる。
空気が変わった。
うっすらっと、頬に緑薫る風・・・・
次第に見えて来る前方。
「あ!」
思わず口を押さえた。
───何かいる!
小山のシルエット。
薄闇に浮かび上がっているのは、とぐろを巻いた大蛇だ。
私の喉がゴクッて鳴った。
逆光にうっすらと照らされた神秘的なシルエットは神々しい。
やはりトンネル出口は近かったようだね。急な上り坂の向こうには、小さく切り取られた明るさで、ぽっかり口が開いてるのが見える。
《ナチャ! 遂に見つけたよ! ミュリナスだ!!》
肩に乗ってるナチャは、お尻の光はとうに消している。
《シャイラのお手並み拝見だ。慎重にな?》
《うん、ナチャは手を出さないでいいよ・・・》
ミュリナスは動いてない。なら────
小石を一つ拾って向こう側に投げてみた。
────動かない。
ドキドキドキドキ・・・
足が急に硬くなっちゃったみたい。膝がカクカクしちゃう。
そーっと、そーっと・・・ううう、緊張で心臓が痛い・・・・
じーっとしてるけど寝ているの? 毒で弱ってる? 短剣の手がかりはある?
頭の中にあれこれぐるぐる巡る。
ミュリナスは私の姿は見える? 見えない?
近くによるととんでもなく大きい。まるで伝説のドラゴンみたいだよ。
こんな怪物みたいなのに私はホントに立ち向かったの? なんだか信じらんない・・・・
私は現実からふわふわ浮いてる奇妙な心地がしてきて、もう1人の私が、私を見てるような不思議な感覚。
───なんだか、私が私じゃないみたい。
次第に大胆になって行く私は、試したくなっている。
地面に伸びてる頭部のミュリナスの目は開いてる。ヘビには瞼がないからね。
その目は私を見ている? 見ていない?
目の前に出ても無反応。
完全に寝てるみたい。ヨシッ!
短剣はどこ?
私が刺した場所は真ん中辺の左側部。先ずはそこを確かめたい。
私はとぐろ巻く体を登り始めた。
けど、体は絡んだ綱みたいな塊になっていて、どこがどうやら全くわからない。
ガクンッ!
ミュリナスが動いたッ!
私の体はスルスルスル
ワワワッ!! 堕ちるッ!!
大の字になって落ちた先のヘビの胴に掴まる。ミュリナスは寝返りで少し動いたらしい。
ハー、ハー、ハー、めちゃびっくりした〜・・・
ミュリナスのとぐろの小山をあちこち探検。冷たいウロコの皮膚。
あれ? ミュリナスの体に規則的に繰り返されてる網目模様がちょっとだけ途切れてる箇所が上の方にある。登ってみると、その色が抜けた部分の中心には小さな傷跡と数枚の欠けたウロコ。
ここだったんだ!
けど、短剣は流石に刺さってはいないね。今も刺さったままなんて期待は薄だったけれど、やはりしょんぼりだよ。
ハァ・・・アルシアの美しい短剣はどこなの?────
*
登るより下りる方が断然ムズい。 場所を選びながら巻の重なりの段差が少ないとこを選びながらようやく地べたまで降りた。
手がかりは無かった。この周りも探してみようとした時、ふうっと私の立つ場所の暗さが増した。
(´・ω・`) ん?
ワワワワワワッ!!!!
鎌首をもたげたミュリナスが、私のはるか頭上から見下ろしている。
いつの間に?
怒気の視線を感じる。ミュリナスは私のこと完全見えてるよッ!!
「あ・・・あ・・・ああ・・・あわわわ・・・」
震えながら小さく後退る私は、ベビに睨まれた極小ガエル。
恐怖で頭の中が真っ白だ・・・




