胃袋の中で
「ギャァァァ!!」
為すすべもなく、私はそのままカエルにゴクリと飲み込まれた!
「ワワワッ!」
スルスルと奥に送られて、ボヨンと落っこちて止まった。落ち方が柔らかいからダメージはない。
暗くて周りが見えない。ここはほどよくひんやり。手探りで壁を探るけど、どこも塞がってて、どちらにどう進めばいいのかも全く分からない!
「何も見えないよ・・・ふぇん・・・」
無意識に泣き言をつぶやいた。
するとふと、ポワンと周りが薄暗く照らされた!?
・・・えっと? (´・ω・`)?
「おいシャイラ、ここはアイツの腹ん中だぜ?」
ナチャ!!
トコトコ私の背中側から出て来て、肩から腕を伝って手のひらへ。
「なんでナチャがここにいるのさッ!」
「スゴイだろ? 俺ってホタルみたいに光ることも出来るんだぜ?」
得意げに、私にお尻をピカピカ点滅させて見せるナチャ。
「私について来ちゃ駄目でしょ! ピカピカは確かにすごいけど、ナチャはこんなとこで光ってる場合じゃないよ! このままじゃ私たちカエルのウンチにされちゃうよ!!」
「チッチ。ここは狭っちいけど、俺の糸による、耐酸高密繭に包まれてるから気にすんな」
「なあにそれ?」
「言わば、安全・清潔・高性能な即席シェルターだな」
いつの間に? 全然気づかなかった!!
「俺たちはこの繭袋のまま、そのうち上か下のどちらかから排出される」
「それってゲロ仕様か、ウンチ風味で出られるってこと?」
「だな。シャイラは休憩したかったし、いい休憩場所が出来て良かったじゃないか。災い転じたな。あー、俺は俺を守っただけだ。シャイラは助けてはいない。偶然一緒にシャイラも包まれてしまっただけだから罰にはならないはずだ」
「・・・よくわかんないけど、ナチャ本人がそう言うならそうだよね! 神様は今の聞いてたかな? あ、そうだ! 朝の残りの果物と焼き菓子があるよ。一緒に食べよう」
ここは狭くて、リュックを下ろすのも一苦労。
「いや、俺にはあの薬を一粒くれ。あれは素晴らしい精力チャージだ」
「あれが? うんわかったよ。それにしても、ポヨンポヨンとすっごく揺れるね。周りが全部柔らかくて良かったよ。ナチャのシェルターはゼニスおばあさまのお部屋のソファとはまた違ったナイスな感触だね」
「・・・フッ。揺れは化け物カエルが移動してんだろう。まさか幻覚の霧の罠に嵌められてしまうとは、俺様としたことがなんという失態。本物の霧と混ざって薄まっていたから気づくのが遅れた。毒キノコで食らったダメージは後を引いている。俺の感覚機能は、まだ完全ってわけではではない」
そっか! だからナチャは、ここを食い破って出ようとしないんだ。毒のダメージはまだ残ってる。これは猛毒ガエルだもんね。
「カエルさん、これからどこに行く気だろう? あのトンネルの奥かな?」
「さあな? まだエサ探しかもな。地面はカエルの好きそうなぬかるみ具合になってたし、今は活動的になってんじゃね?」
しばらく私たちは、それなりに寛いでいた。
けれどもそれは長くは続かなくて────
カエルさんがゲコッゲコッって力んで叫んでる。振動がここまでブルブル響いて来る。オマケにカエルさん暴れてる? まるで大地震、大揺れだよ。
「ワワワッ! ヒャッ、このひっくり返される揺れは何事ッ!!」
私の体は、ナチャと一緒に上に下に横に、ボヨンボヨン振り回されてる。目が回っちゃう!
「おおっと・・・化け物カエルのヤツ、スゴい暴れようだな」
「ううッ・・・私、今食べたとこなのに揺れすぎて気持ち悪くなって来たよ・・・ゲロッ!」
「エッ!? エッ!!」
冗談だよ〜w エッヘッヘ (^m^)
狼狽の魔蜘蛛さんもかわいいね♡