冠山城の戦い【9】(説得する者とされる者)
羽柴秀長と加藤清正を帰らせると、冠山城城主林重真は城にいる一族郎党を部屋に呼んだ。
その中に、嫡男林宗重もいた。呼び集めた者達総てが部屋に揃うと、重真は皆に告げる。
『お主らも、分かっていると思うが、先程、織田方より降伏勧告の使者が参った。』
『結論は、降伏はせぬ。しかし、籠城せず今晩、織田方との最後の戦いをする事になった。今から、できるだけ城に残っている者を脱出させる。』
『宗重、お主は一族の者を連れ、宗治殿の高松城へ落ちのびよ!。』、重真は事務的に淡々と重大な方針を述べる。
『父上、某も武士の子、最後まで残り、城の運命と自分を共にしようと思いまする。』と宗重は父に反発するように声をあげる。
『宗重、お主がそう言うと思ったが、父はあえて言っておるのじゃ、父の気持ちを聞いてくれ。』
『ワシと竹井将監殿で決めた事は、城の者をできるだけ多く脱出さする事じゃ、しかし、今城に残っている者達は総て忠義の者達、この城で死のうとする者達ばかりじゃ。そんな者達に、ワシ達が脱出しろと言っても、誰一人出て行かないであろう。』
『お主らの護衛を任せる事で、その者達を脱出させるのじゃ・・・。お主は、脱出した者達の代わりに、臆病者と陰口をたたかれるかもしれん。それは、この城で死ぬ事よりも辛いかもしれぬが、城主の息子としてその恥辱に耐えてくれ。』
『・・・父上は、其処迄お考えになって、・・・承知つかまつりました。宗重、いや我々一同、そのお役目、謹んで御受け致します。』
『おお、宗重、分かってくれたか、お主は宗治殿を助け、高松城を守れ。父はこの城で責務を全うする。一族を、生き延びる家来達、死んでいった家来たちの家族も含め頼むぞ。!!』
『この宗重、天地神明に懸けて・・・。』と言い、父の最後の願いを息子は頭を下げ、叶える事を誓ったのであった。
重真はその場で、その場に集まった家族を5組に分け、5つの落ち延び先を伝えた。その後、その者達を警護する家来たちを呼び、任務を告げたのであった。
その後も、重真、久之助は自分の家来達を逃がすように説得を続けた。説得は、予想通り困難を極め、難航した。
しかし、それでも二人は辛抱強く説得し、結果1,000名近くの家来達を脱出させたのであった。
脱出する者達を逃がし、残った者達は一息すると皆で食事をする事になった。食事の時には、城に残っていた酒が振舞われ、残った兵達は最後の食事を楽しく食べたのであった。
その中には、久之助と能島で訓練を共にした者達が多く残っていた。
『生き残る機会を、無駄にしおって。お主も馬鹿じゃな、お主もな。』という会話が、そこら中で聞こえていた。
男達の声は明るく、その様子はまるで祝勝会の様な雰囲気であったという。
その食事会の中、一人の男が久之助に話しかけた。権寂という破戒僧であった。
『竹井様、ワシは仏に仕える身でありながら、この戦に参加した者じゃ。ずっと、貴殿の後ろに美しい女性がおる様に見えたが、今は見えん。』
『こんな事をしている私を仏が見放し、神通力が失われたのか?それとも、その女の幽霊が退散したのか、見放された者同士、頑張りましょうな!。』と久之助に話しかけてきたのである。
『・・・。権寂様、貴方に見えた女性は、多分私の初恋の女性です。』
『退散したのは、良い事です。惚れた女性に、自分の死ぬところは見せたくありませんからな。』
『好いた女性達には、ずっと知らせずに、逝きたいものですな・・。』と久之助は言うと、どこか照れる様子で鼻をかいた。
『それもそうですな、さあ、この世の見納めじゃ、一緒に美味しい酒を飲みましょうぞ!!。』と権寂は、自分の持っていた盃を久之助に渡し、久之助に酒を注いだのであった。
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