表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラとシノの戦国ものかたり外伝(備中高松城攻め奇譚 わらび餅好きの女幽霊と優しき男達)  作者: 野松 彦秋
第4章 誘拐事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/74

高松城からの書状(第二次上月城攻め 決断)

第二次上月城攻めが始まったのは、1578年4月28日であった。


毛利軍と合流した清水軍は、城の南、本陣の直ぐ隣に配置されていた。


既に、毛利軍が城を囲んで2ヶ月が過ぎようとしていた。清水宗治は大軍で包囲されている上月城を見ながら、一人物思いにふけっていた。


思い出していたのは、4年前に高松城が、同じように毛利の大軍に囲まれた日の事であった。


あの日、毛利軍の兵士がどのように自分達を見ていたのか、それを今自分は体験しているのだと宗治は痛感した。


城に立て籠る尼子の人々が、4年前の自分達に重なり、敵ではあるが、敵として見れない自分がいた。


(あの日、ワシは戦わず、降伏を選んだ。その結果、ワシは未だ生きている。尼子勝久殿は、どちらを選ぶ。武人として、指揮官として、一人の人間として・・・。)


(城にある兵糧を、既に底をついている事だろう・・・。勝久殿、早く決断して下され・・・。)


城を見つめる、宗治の顔は眉間に皺がより、悲しい目をしていた。上月城の者達に手を差し伸べたくても、差し伸べる事ができない現実に苦悶の表情で耐えていたのである。


尼子勝久は当時26歳と未だ若い武将であった。


昔、未だ尼子家が出雲国を支配していた時代、尼子晴久が毛利の謀略にかかり、新宮党と呼ばれた精鋭部隊である一族を粛清した事件が起こった。


当時2歳であった勝久は命は取られず、京都の東福寺に送られ、僧となり生きていた。


新宮党を粛清した尼子家は、戦力が大幅に下がり衰退し、最後は1566年に毛利家によって滅ぼされた。


その残党山中幸盛(山中鹿之助)達が、10年前に彼を還俗させ、尼子再興軍の旗印として擁立し尼子家再興の為戦い続けて今日に至る。


御家再興の為、家来と苦楽を共にしてきた尼子勝久の決断に、宗治は強い興味を持っていたのであった。


それから1週間後、尼子勝久は決断をした。城兵の命と引き換えに開城、降伏し、自分とその一族もろともは自害をしたのであった。


宗治が尼子勝久の最後の決断を知った時、宗治の心の中で敵将の死は、自分の命と引き換えに家来達の命を守った尊敬する男の死へと変わった。


その時、宗治が感じた喪失感は思いのほか大きかった。


感傷的になりすぎていると理解しつつも、人の見ていない場所で、静かに涙を流し尼子勝久とその家族達の魂の安息を祈ったのである。


高松城から早馬が来た日は、上月城が開城し宗治達が城へ駐留し始めてから1週間が経った日であった。


小早川隆景から上月城の守りの要として、城での駐留を命じられていた宗治はその時、隆景達と共に織田との今後の戦いについて軍議をしていた。


軍議を行っている部屋に、早馬の男が書状を持ってきたため、その場に居合わせた毛利軍の将達全員に高松城での誘拐騒ぎが知れ渡ってしまったのである。


『宗治殿、お主の御嫡男の命に関る事、直ぐに高松城へ戻るが良かろう!』と小早川隆景が、宗治の心中を察し、直ぐに高松城へ帰る事を勧めた。


宗治は、隆景の温情に感謝を述べたが、上月城を取り戻した矢先であり、直ぐに又織田軍が上月城を取り戻しに来る可能性をあげ、隆景の勧めを一度断ろうとした。


『今が織田との戦いの正念場、我が息子も武士の子、何かがあればそれも天命と思いまする、お心遣いは有難いのですが、このままこの城でのお勤めに励みたく・・。』


『宗治殿、お主の忠義の心、又これまでの忠節、この場にいる毛利の者なら皆知っておる。これはワシの命令じゃ、急ぎ国へ戻り、解決したら又すぐに戻って来て下され!。』


隆景は、宗治の人柄を皆の者の前で立てて、そして強引に高松城に戻る様に命令したのであった。


隆景の部下の心情を思いやる優しい命令を、宗治は頭を下げ受け入れるしかなかったのである。


宗治は、自分を護衛する最低限度の兵を連れ、直ぐに高松城へ向かった。しかし、帰路についた次の日に高松城から遣わされた新しい使いの者と運よく出会う事が出来、久之助の活躍で、原三郎は無事に救出され、半日で誘拐事件が終わった事を知らされた、また大まかではあるが、誘拐事件の状況を聞かされたのであった。


事件の結末を知った宗治は、高松城には戻らず、再び上月城に戻った。


僅か二日で、宗治は城へ戻ったのであった。その速さに最初、隆景及び毛利軍の幹部達は驚き、そして子供の顔も見ずに宗治が戻って来たことを知って、その彼の愚直なまでの忠義心に心の中であきれた。


送り出した隆景は、宗治の気持ちは嬉しかったが、器用に生きれない彼を少し可哀そうに思ったのであった。


(あの御仁は、褒美をやるといっても断る、褒美を与えなくても人一倍忠義を尽くす、何のために、生きているのじゃ。)


(あの忠義の心に、ワシは、いや毛利家はどう報えるのだろうか・・・・。物欲の無い希少な御仁じゃ、この男の毛利家への忠節に、忠義の心に何とかして報いてやりたい、いったい何を与えれば・・。)


隆景は戻った宗治の事を知って、そんな事を考えていたのであった。其処へ、隆景の傍についている家来がやってきて、宗治が報告したい事が有り面会の許可を求めている事を伝えた。隆景は、直ぐに連れて来るようにと許可を出したのであった。


宗治が隆景に報告したのは、高松城で起こった誘拐事件の詳細であった。


宗治の家来、竹井将監の活躍により賊に入った11名のうち10名を打ち取り、1名を捕縛。更に、高松城に入っていた間者も捕縛した事。


事件の黒幕には、小寺政職の家臣黒田官兵衛が絡んでおり、織田方が備中の国にも調略の手を伸ばしてきていると伝えたのであった。


そして、久之助が討ち取った10名は、宇喜多の手の者であった可能性が高い事を伝えたのであった。


それは、宇喜多が毛利家を裏切り織田家に寝返った事を意味する為、宗治としてもあくまで可能性であり、偽の情報で我々を惑わす事が目的の可能性もあると伝えた。


宗治は誘拐事件のみであれば、皆のいる前で報告するつもりであったが、宇喜多の件が有る為、宗治は隆景だけに報告しに来たのであった。


『宇喜多、宇喜多直家殿・・・・・、宇喜多が寝返れば、戦況は大きく変わる、有り得ぬ話ではないな、あの男なら・・・。』


隆景はそう呟き、苦悶の表情になる。


『事は、事じゃ、慎重に確認しなければならない事じゃ、この件、ワシが預かる。宗治殿は宇喜多の事は、他の者にこの事を漏らさないよう、頼む。』と隆景が宗治に伝える。


宗治は無言で頭を下げ、その旨を承知した事を隆景に伝えた。


『それより、宗治殿の嫡男原三郎殿を救った竹井殿とは、あの義昭様から名前をもらった男であったな。』


『ワシも、能島での選抜訓練で見ている筈の男だが、武芸のみならず、敵の謀略を見抜くほどの頭の持ち主とは・・・宗治殿、どんな男かワシに詳しく紹介してもらえないか?。』と隆景は、久之助に興味を持ち、宗治に久之助の事を聞いたのであった。


宗治は、隆景に久之助の人柄、愚直なまでに物事に取り組む姿勢を中心に伝えた。


その言葉は、普段の謙虚な宗治とおもえないぐらい、自分の有能な家来を自慢している様に聞こえた。宗治が話す久之助は、隆景が宗治に対して持っている印象そのものであった。

二人は、久之助を話題に長い間時間を共にしたのであった。


話会いが終わる頃、隆景の心の中で一つの考えがまとまっていた。


『宗治殿、お主にお願いがある。久之助殿、将監殿を、毛利に、いやワシに下さらぬか?』


『織田に勝つ為に、竹井将監殿が必要なのじゃ!。』


『え、今何と申されました??。』


宗治は、きょとんとした顔で、主君の言葉の意味が分からず、聞き直したのである。


隆景は、自分の思いと考えを宗治に説明し始めたのであった。

『面白かった!』


『続きが気になる、読みたい!』


『今後はどうなるの!!』


と思いましたら、下に有る☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願い致します。


面白かったら星5つ、詰まらなかったら星一つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です。


ブックマークも頂けると本当に嬉しいです。


何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ