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トラとシノの戦国ものかたり外伝(備中高松城攻め奇譚 わらび餅好きの女幽霊と優しき男達)  作者: 野松 彦秋
第4章 誘拐事件

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娘からの贈り物(鶴の刻印が入った鉄扇)

『父上、40歳の誕生日のお祝いでございます。』と15歳の鶴姫は、父家親に祝いものが入った化粧箱を手渡した。


『何じゃ何じゃ、突然に??。』と戸惑いながらも、化粧箱を開けようとする家親の表情は緩んだ。


幼き頃より、男子同様に厳しく躾けた娘だったが年頃になり、女性らしさが出てきたと喜んでいたのである。


しかし、化粧箱を開けた家親の顔は強張り、絶句した。


『・・・・。』


『何じゃ、これは!年頃の娘が父に贈り物をしてくれるというから、可愛い物をくれるのかと楽しみにしていたのに。』


『鶴よ、鉄扇とは!!武骨な贈り物じゃな・・・、お主に幼き頃より厳しく武芸を教えたワシへの当てつけか?』と、鶴姫に聞きながら、重たい扇を片手に取って見る。


『何を言われるのです、父には何時も感謝しております。父の事を思い、考えた結果、護身用の鉄扇を用意したのでございまする。』


『私がもし、男であったならば常に父の傍におり、お命をお守りできるのですが、私は女子ですから戦場では御傍にいる事ができませぬ、これを私と思い、お持ちください。』


『鉄扇には、私の名と同じ鶴の刻印が彫ってあります。』と鶴姫は、苦虫顔の父へ言い聞かせるように、説明した。


『そうであったか、お主の代わりとして・・・。お主の心遣い、大事にするぞ!!』と父は言い、笑顔で鶴姫からの鉄扇を受け取ったのである。


鶴姫の父、三村家親はその日より鶴の刻印がある鉄扇を片時も離さなず持つようになる。


戦から帰ってくる家親が、鶴姫と会うと必ず、鉄扇を鶴姫に見せ、『此度もこの鉄扇のお蔭で生きて帰ってこれたぞ。』と笑顔を見せるのが二人の儀式になっていたのである。


1566年、美作興善寺にて重臣との評議中、鶴姫の父三村家親は宇喜多直家の命を受けた暗殺者によって凶弾に倒れた。


送り込まれた刺客は2名。


一発の威嚇射撃で、評議中の重臣達が混乱する中、その中にもう一人の刺客が入り、家親の胸に一発の銃弾を打ち込んだ。


刺客は、暗殺の証拠として、その時家親が持っていた鉄扇を持って逃走したと、鶴姫が聞かされたのは父の死から1週間後であった。


鶴姫の叔父三村親成より父の死に際を聞かされ、自分の送った鉄扇が父を救う事が出来なかった事、敵に奪われた事を知った。


鶴姫は、その時、自分が女性として生まれた事、父の傍におり、救えなかった事を悔いた。盗まれた不甲斐ない鉄扇については、早く忘れたい思い出の一つになっていた。


それから、10年以上の月日が流れた備中の国で、鶴姫は思わぬ再会をする事になる。


その日、鶴姫は目的もなく高松城の城下町を散策していた。


久之助と美津の祝言が決まり、これからは久之助の長屋にも居づらくなるなと思いながら、時間を潰していたのであった。そんな彼女の視線に入って来たのが、鶴の刻印が入った鉄扇であった。


その男は身なりは旅芸人であったが、少し様子が変であった。


杖を持って歩いているのだが、何かを確認する様に町を散策している様であった。

男が持っていた鉄扇が目に入らなければ、気づかなかったであろう男の異質さは、周囲を警戒している歩き方であった。


鶴姫は、男を尾行した。


そして、暫くして男は仲間達と合流する。彼らは、自分達の借りている宿屋に入り話始めた。


彼らは、周囲の者に話を聞かれるのを恐れている為か、彼らの中でしか分からない隠語を使用し会話する。


当然鶴姫は、彼らの使う隠語が分からない為、彼らが何を話しているかが分からない。但し、その支離滅裂な会話が彼らが不審人物達であるという事を確信させたのであった。


鶴姫は、盗み聞きする事を諦め、最後に彼らの顔の特徴を記憶に留め、その場を後にした。


鶴姫は、その足で久之助達の住む長屋へ行き、久之助へ自分が見てきた事、父に贈った鉄扇についても説明した。


『何者かの謀略が、高松城へ迫っていると思う。相手の手の内は、分からんがこちらも備えて置かなければならない。祝言を挙げたばかりのお前にはすまないが、久之助、私に協力してくれぬか?』と鶴姫は久之助に聞く。


『主君の大事となれば、私の事は2の次でございます。』と久之助は、鶴姫の要請を快諾したのであった。


その日、鶴姫は久之助と協力し、自分の推理をまとめ一つの仮説を立てた。その仮説に、対抗策を考えた上で、その話を誰に持っていくかという事を久之助と検討した。


最終的に、二人が決めた人物は、宗治の弟、難波宗忠であった。


問題は、どこまで久之助の話を信じてもらえるかである。幽霊が不審人物を発見しました等とは、口が裂けても言えない。


彼を信じさせること、又、極秘で何者かの謀略に対し、備えなければならない、厄介な事が山積みである。


『やれやれ、また、厄介事に首を突っ込んでしまったようじゃ・・何者か知らんが、私の近くで好きな事はさせんぞ。』と久之助には聞こえないぐらい小さな声で呟いた。


それは昔、実の父を暗殺者の手から守れなかった鶴姫が、その無念の代わりに高松城の者達を必ず救ってみせるという決意の言葉であった。

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