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兄弟会議(鴨鍋三兄弟)

1576年3月備中の国、高松城の一室にて3人の男達が鍋を囲んでいる。


一人の男は坊主であり、もう一人の男は壮年の武将、そして最後の一人が清水宗治だった。


3人は兄弟である。丸坊主の男は、昔清水宗知(むねとも)と名乗る武将だった。若い時は、武芸の修業の為、各地を点々とした武芸に秀でた武士であった。


数年前、何を思ったか突如仏門に入り、月清(げっしん)と改名していた。宗治の父の側室が生んだ子が彼であり、兄弟の中で一番はやく生を受けたのが彼であった。その後、父の正妻であった女性が、宗治を生んだ為、清水家の家督を継いだのは、次男である宗治だった。


しかし、三兄弟の中では、実質彼が長兄であった。戦国時代、それが許されたのはこの3人の兄弟の仲が稀に見るぐらいの仲の良さで有ったが為である。親の考え方、教育がそうさせたのも、大きな要因であるが、最終的には本人同士が決める事で有り、それは当然の事ではない。稀である。


そしてもう一人は末弟、難波宗忠である。


3兄弟は、部屋の中心で鍋を囲んでいる。奥には上座のある部屋であるが、上座を使わず、部屋の中心で同じ床で食事をしている事自体が3人の関係が良好である事を物語っていた。


『六郎(月清)兄、坊主のクセに鴨肉食べ過ぎではないか?一番多く食べているぞ!。』と宗治がじゃれる様にツッコむ。


『ウルサイ、年上のワシが一番あの世に近いのじゃ!好きなだけ食べさせろよ。』と月清も笑って言葉を返す。


『伝(難波宗忠の幼名、伝助の略)、悪い、肉を追加で持ってきてくれ、後野菜もじゃ』と宗治が末弟に視線をやり指図をする。


『ハイハイ、只今ぁ~。』と指示を受けた末弟は苦笑いをしながら襖を開け、厨房へ向かう。

3人は3人だけの時は、幼い時に戻り、互いを幼名で呼び合うのであった。


『兄者、盃が空ですぞ…。』と言って宗治が月清の盃に酒を注ぐ。


『これは、これは、当主様から酒を注がれるとは、我が一生のホマレッ』と笑いながら酒を受ける。

注ぐ方も、注がれる方もとても楽しそうである。注ぎ終わると、月清は直ぐに盃に口をつけ、軽く一口呑む。


『ところで、兄者、小早川の殿より内々に話が着ておる・・。』と宗治は長兄に相談する口調で切り出した。


『例の将軍義昭様の一件で、同盟していた織田家と袂を別つ事は避けられないらしいのじゃ。』


『全面戦争になるとの事で、至急備中の国をまとめ、その戦いに備えられる様にして欲しいとの事じゃ。敵が攻めてくる。備中を一枚岩にして防衛戦ができる状態にしなければならんという事じゃ。』と宗治は月清に状況を説明した。


『ウム、其れは難儀な話じゃな。』と月清は短く、自分の率直な気持ちを口に出した。


『ワシは、備中の北方の制圧を任された。』


『これからワシは、のんびりこの城にはいられなくなるじゃろう・・。』


『ワシがこの城を留守にする時、誰を城代にすれば良いじゃろうか?。』と宗治は月清に聞いた。


『今、肉を取りにいってる伝、宗忠が適任だろう。』


『あやつは、視野が広くそして何より、お主に忠実じゃ。』と言いながら、自分の結論が正しいかどうか最終確認しているように、月清は盃の酒をもう一口呑む。


『城の面倒くさい事は、伝助に任せ、ワシは清水軍の武力の底上げを担当するか・・・の。』と言いながら、鍋の底に残った鴨肉をサッと拾い上げ、宗治のお椀にさも当たり前の仕草をするようにスッといれる。


『武辺者と名を轟かせた清水宗治も、今年で40歳じゃ、そろそろ、若武者にその重荷を背負わせても良いじゃろうて・・。』


『ワシがお前の武芸の後釜を育てよう、お前が見込んだ家来を何人か連れて来い、ワシ自ら鍛えてやろう!』といい、月清は宗治の盃に酒を注ぐ。


『戦には、防衛戦には、味方の劣勢を支える、味方の意思を鼓舞できる圧倒的な武をもった者が必要じゃ、最低2人、いや4人は必要じゃ。』と言いながら自分のお椀の鴨汁を啜った。


『私が若い時に、私を鍛えてくれたようにですな、頼もしいです。唯、兄者の厳しい修業に何人の者がついていけるか・・・。』


『六郎兄、いや月清師匠殿、家来への教育、何卒よろしくお願い致しまする。』と宗治は一番信頼する兄に頭を下げたのであった。


『何を言う、ワシが継がなければならない重責を、無理矢理お前に継がせたワシができる、せめてもの罪滅ぼしじゃ!」


『お前は存分に備中北方の制圧に力を注げ、城の事はワシらに任せ、集中しろよ!!。』と月清は言った。


弟の重圧を少しでも軽減させてやりたいという兄の本音であった。


『鴨肉、野菜、酒、総てお待たせ致しました。』と宗忠の声が襖の外から聞こえた。


『待て待て、今襖を開けるからな。』と言い、慌てて宗治は立ち上がる。


『さてさて、どんな弟子たちが来ることじゃろう。』と月清が手に持った自分の盃を見ながら囁く。

言葉とは裏腹に、その眼光は鋭く、覚悟を決めた光を帯びていた。

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