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王家の馬車で王城へ向かう、しっかり私の母上の開発したフカフカ馬車だったので乗り心地が良く、こんな時にもウトウトしてしまう自分が本当に嫌だ。

『寝ていていいよ~』なんてカルルが肩を貸してくれたくらいには、私は眠そうにしていたらしい。

着いてすぐ、カルルの部屋に案内された。

犯人もさっき尋問室に付いたばかりだから、話を聞くまで少し時間がかかるとのことで、カルルの部屋で待機していて、との事だった。

紅茶とお菓子を頂きながらまったりと待つこと、20分。


―コンコン


「カルル殿下、犯人が話したとのことです、尋問室2まで来て頂けますか?」

「吐くのはっっっや!」


カルルの部屋に着いてまた、ウトウトしていた私だったが、ドアが叩かれる音でしっかりと目が覚め、突っ込みを入れる。


「あはは、本当に早かったね、いこっか」


私とカルルは立ち上がり、尋問室へと向かう。



――


尋問室2に入ると、尋問室1と強化ガラスで仕切られている仕様になっていた。

犯人の目元には、目隠し用の布が巻いてあり、こちらの声も姿も見えないようになっていた。


「尋問官、お疲れ様。どうだった?」

「殿下、アーティ伯爵令嬢、お疲れ様です。こいつ、少し脅したら、すぐに話し出しましたよ、楽な尋問でした。フードを被った女にネネって女を攫えと頼まれたらしいです、攫うだけでいいからと、金を受け取ったみたいです。」


尋問官は二人、20歳くらいの一見優しそうだが、裏がありそうな男性と、40歳手前くらいの髭が生えた強面な風貌の筋肉ムキムキな尋問官がいて、強面な方が説明してくれた。


「金で雇われたのか」

「その金額も相場より大分低くて、この仕事を受けるかも本当に迷って決めたらしいです。攫うだけならリスクも低いと実行に移したと」

「そのフードを被った女の顔は、見ていないの?」

「フードをかなり深く被っていて、暗い場所での交渉だったらしく、顔は見ていない。声はしゃがれている、おばあちゃんのような声だったと。まあ、声はいくらでも変えれますし、手掛かりにはならないですねぇ~、裏稼業の依頼人は、みんな姿を隠しているんですよ」

「・・・・なるほどな」

「ネネを疎ましく思っている何者かがいるってことは分かったわ」

「でも攫うだけでいい、なんて、本気で排除しようとしていると言うより、嫌がらせ的な感じだろうか」


嫌がらせにしろ、仲の良いクラスメイトが危ない目に合っているのは間違いないので、かなり心配だ。

今回は嫌がらせ目的だったかもしれないが、前回の『転移魔石アンテッド事件』は、命を落としていてもおかしくない状況だった。安全に過ごしていけるよう、ネネの為にも早く解決してあげたい、そのためには少しでも情報が欲しい。


「もう一人の犯人も顔を見ていないだろうか」

「こいつに聞いてみたんですが、あの暗さで見えているわけがない、とは言ってました」

「まあ、犯罪者だ、捕まえられるよう仲間の情報も聞き出しておいて」

「了解しました」


『引き続きよろしくお願いします』と尋問官達に声をかけ、尋問室を後にする。


「送っていくよ」

「あ、もうこんな時間なのね」

「アーティ家には遅くなると伝えに行かせたけど」

「いつの間に・・・ありがとう」


本日二回目の王家の馬車に乗り込み、フカフカの馬車に揺られ、今度こそ睡魔に勝てず記憶はここで途切れてしまった。


―――


「ふぁぁぁ~よく寝た」


あれ?私昨日馬車で寝ちゃった?なんて考えていたら、ドアを叩く音の後、返事をする前に、ラムが入ってくる。


「お嬢様、起きていましたか」

「おはようラム~昨日って私どうやって帰ってきた?」

「殿下にお姫様抱っこされながら帰ってきましたよ」


二回目のお姫様抱っこ!!!!!なぜ起こしてくれなかった!!!!!

枕にボフッっとうつ伏せに倒れこみ、声にならない声で叫ぶ。

『・・・・いびきかいてたね』前回のカルルなその言葉を思い出し顔が熱くなる。

いびきをかいているかは、本人には分からないので直しようがない。


「イヤァーーーーーーー」

「昨日のデートは楽しめましたか?」


私の様子が可笑しいことにも触れずに、ラムが昨日のことを聞いてくる。


「・・・・楽しかった、途中までは」

「お嬢様をお部屋に連れてきてくれた後に、伯爵様と殿下は何か話されていました」


多分昨日の事件の話だろう。

遅くなった理由をお父様にカルルは説明してくれたと思う。


「私が着替えさせましたが、お風呂にも入らずに寝たので早く入ってきてください」

「・・・・はい」


ラムに言われ、お風呂に入って支度を済ませ、昨日完全にノリと雰囲気でお揃いで買った指輪を付けていくか迷いながら、結局指にはめる。

華奢な指輪なので、そんなに目立たないし、何かあれば手をポケットに隠そうと左手にはめた。

朝食を食べている時に、お父様から『大変だったな』と声をかけられたこと以外はいつも通りの朝だった。


「おはよ~~~」


学校に着いて、皆と挨拶をしたが、カルルとは目を見て挨拶ができなかった。

何乙女ぶってんじゃい、と自分に突っ込みを入れる。


ネネも登校出来たみたいで、教室にクラスメイトと仲良く話す姿があって安心する。


そして昼休み、カルルから、今日違うお友達グループで昼食を食べるので皆様にお伝えください、とネネから言われたことを聞く。


「ジュリも、もうもらった?」

「え?なにが?」

「これ」

「わあ!可愛いビーズのストラップ!」


カルルのポケットから出てきたのは、カラフルなビーズで細かく作られた可愛らしいストラップだった。


「ネネから、昨日助けてくれたお礼とかで」

「いいな~」

「最初、貰えないと断ったんだけど、ジュリにもお礼を言うときに渡すから、お揃いにしたいって」

「わー!私も貰えるんだ!楽しみだな!」


会話を聞いていたアディがカルルの手をのぞき込む。


「またお揃い?いつの間にか二人だけお揃いの指輪してるし」

「あっ、こ、これは昨日アップルパイを食べに行った時、その場のノリで・・・・」

「アディ、そういうのはあえて触れないものよ」

「そっちも二人でお揃いの指輪買いに行けば?」

「あっ、いいね」


アリアの肩を抱き寄せるアディの手をアリアが『いやよ』とバシッっと払う


「今度4人でお揃いの物も探しに行こう!!!!!!」


だが、ネネから今後ストラップを貰うどころか、お礼を言われることも一切なかった。


―――


次の日学校に行くと、机の上にクッキーが置いてあった。

ネネが作るクッキーと同じもので、ネネからの物だと分かった。

お礼を言おうとタイミングを見ていたが、ネネは授業が終わったらすぐ教室を出て、授業が始まるギリギリに教室に帰ってくるので、話しかけるタイミングがなく昼休みになった。

昼食は、昨日同様で違う友達と食べるらしく、今日は4人で食堂で済ませた。


「そういえば、学校きたら机の上にネネ様クッキー置いてあったんだ~まだお礼言えてないけど。二枚あるから、カルルも食べる?」


一枚手渡し、もう一枚を自分の口に放り込む。

サクサクっと勢いよく噛んだら味が苦く、口の中が痺れた。

食べようとしているカルルの手にあるクッキーを叩き落とす。

叩き落としながらペッと口の中のクッキーを手の平に吐き出したが、少し飲み込んでしまった。


「ゼェゼェ・・・・これ・・・毒入りだぁ・・・・食べちゃ・・ダメ」

「え?!」

「ジュリ?!」


ガタッとカルルが立ち上がり、私を抱きかかえて慌てて手洗い場へと連れていって、『ごめん、吐かせるね』と言い、私の口に指を突っ込み何回か吐かせてくれた。

苦しいが、そこまでやってもらうのはいたたまれなくって、自分でやると自分の指を突っ込んでみたものの、うまく吐けなくって、何回かカルルに手伝ってもらった。

その様子を見て、アリアとアディは体調が悪い子がいるからと周りの人払いをしてくれた。

涙やヨダレを垂れ流しながら嗚咽、うがいをするのを繰り返すこと30分、飲み込んだのは少量だったこともあり、呼吸が落ち着いてきた。

ずっと背中をさすって見守ってくれて感謝しかない。


「はぁはぁ・・・もう大丈夫そう・・・・・心配かけてごめん」

「・・・・保健室つれていく」


そう言うと私を再び抱きかかえる


「わっ、もう歩けるよ」

「まだ息上がってるよ、こういう時くらい素直に甘えてほしい」

「ごめん」

「謝るの禁止」


沢山吐いたこともあり、しんどいので、そのまま連れて行ってもらうことにした。

授業が始まっている時間なので、人がいなく静かな廊下。


保健室に着くと、ベッドに運んでもらって解毒剤を渡されて飲み、寝かせてもらった。

看護教諭の先生に事前に私が吐き出したクッキーは、アディが渡して事情を説明してくれていたみたいで、すでに解毒剤が準備がされていた。


「ゆっくり寝て待っててね、終わったら迎えに来るから・・・」


そう言って、カルルはどこかへ行ってしまった。


目が覚めると、アリアが隣に座っていた。


「起きた?体調はどう?」

「解毒剤が効いて、もう本当に大丈夫かな、ずっといてくれたの?」

「一瞬よ、これ読んでたから」


『解読不可能論理的研究ラボ』と言うよく分からないお堅そうな本を見せられた。わー、私はこの人生でも絶対に触れない本だー。


「カルルがネネにクッキーの件を聞きに行ったんだけど、今日ネネはクッキーを作ってきていないらしいの」

「・・・まじ?」


私は誰のクッキーを食べてしまったんだろうか、顔も名前も知らない相手の手作りクッキーを少しでも、食べてしまったと考えると、良くなった体調も悪くなる。


「今回は、ネネを犯人にしたい犯行なのか、ジュリを狙った犯行なのか・・・・いずれにしろ貴方に被害が及んだのだから、カルルは気が気じゃないわね」

「・・・・?」


かなりの呆け顔をしていたのかもしれない。

アリアは『まだ気づいてないのね、今のは忘れなさい』と言いお手洗いに行った。

そしてカルルが迎えに来て、私はカルルの馬車で自宅にそれはとても過保護に、何度目か分からないお姫様抱っこで送り届けられた。


―――


それから1週間、カルルやアリア、アディの3人はネネと話しているようだが、私は避けられているように思えた。

私が話しかけに行ったら慌てて教室を出るし、聞こえるようにネネを呼んでも無視されていた。

勘違いじゃないと確信を持ったので、お昼休みにみんなに相談してみることにした。


「私、ネネに何かしちゃったかな?何か聞いてない?」

「ジュリの話をしたら逃げちゃうんだよね」


アディは困り顔で答える


「私も詳しくは聞き出せてなくて・・・」

「カルルは?」

「ジュリと仲良くしていたらまた狙われてしまうかもしれないからと言っていた」

「そう・・・」


私を守るための行動だったのか、と目頭が熱くなる。

ごめんね・・・ありがとうネネ・・・・・・。


「カルル?」


何かを考えこんでいる様子のカルル


「・・・・これ言うか迷ってたんだけど、最近変なんだ。先に言うけど、変な勘違いはしないで欲しい。

この1週間、毎晩ネネの夢をみてる。そして、ここ最近は起きている間もネネのことを考えている時がある」

「急に恋のお話」

「だから、変な勘違いしないでくれと言ったよね?」


カルルが食い気味にアディに言う。


「好きな人が別にいるカルルが、ネネの事をそんなに考えてしまうなんて、確かに変ね。誰かに見せられている夢の可能性が高いわ、一週間前は誘拐事件があったわね」

「黒魔術かな?ネネと関係があるもの…うーん、あのストラップどうしてる?」

「部屋に置いて・・・ある・・・・・・あぁ、あれか」


アディに聞かれストラップの存在を思い出したカルル。

この件は、城に帰り次第、ストラップを鑑定に回すことになった。

アリアが言っていたカルルの別にいると言う好きな人の話…もしかしてと思ってしまったが、もし違ったら恥ずかしいので考えるのをやめた。








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