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カルルが呼んでくれたお迎えが来て、私は自宅に帰ってきたらしい。

目が覚めた時にラムから聞いた話によると、眠っていた私は何の記憶もないが、カルルが抱きかかえて連れてきてくれた。

ありがとうとお礼をしなくちゃと心に決める。

まだ少し毒の後遺症で重たい体を起こして次の日のお昼、アーティ家の食堂へ足を運ぶ。


「ジュリちゃん大丈夫なの?」

「もう少し寝てなさい、食事は運ぶから」

「寝てばかりだと、体に根でも生えてきそうなんだもの」


心配そうな母と父に大丈夫と伝え、食卓に座る。


「もっと鍛えなきゃね!それにしてもなんであんな所に転移しちゃったんだろう?」

「今日は臨時休校にして調査中とのことだが、転移魔石が仕掛けられていたらしい」

「え?」

「犯人は誰を狙ったんだろうな、用心しなさい」

「そうよ~?今回は無事でよかったけれども、次回無事とは限らないんだから気を付けてね?」


学校側の調査で人為的な罠だと分かったが、防犯カメラがあるわけでもないし、犯人が見つかるとは思えない。

父の言っていたことは気になるが、体調が回復した今、食事がとても美味しい。

今日は家でのんびりと過ごすことにした。

アーティ家の図書室で本を選び、自室でアップルティーを飲み、クッキーを摘みながらゆったり過ごす。


―コンコン―


「はぁい」


本を片手に返事をするとラムが入ってくる。


「お嬢様、カルル殿下とアリア様、アディ様がいらっしゃいました」

「そのメンバーなら支度しなくてもいいわね」

「・・・・はい」


すぐに応接室へと向かう。


「みんな~お見舞い来てくれたの?」

「ジュリ!!良かったわ、元気そうで」

「確かに元気そう、口の横になんかついてるよ」

「あはは、さっき食べていたクッキーだわ」


アリアとアディと会話をしている最中ずっと無言のカルル。


「カルル昨日は送ってくれてありがとう、私寝ちゃってたよね」

「・・・・いびきかいていたね」

「えっ、まじ?」


あはは、と笑うカルルを見て一安心

私の部屋へ移動し、改めて紅茶とクッキーを食べながらのんびりタイム。


「3人が光に飲み込まれた後、アディが慌てて地面を掘り始めたの。そしたら転移魔石が出てきて」

「アディが見つけたんだね」

「そこを踏んだ瞬間に転移したから何かあると思って」

「私は頭の中が真っ白になってて」


煙筒で学校側に緊急事態を知らせ、先生と合流後、レイチェル先生が私達の所に転移してきたという流れらしい。


「そっちのことはカルルから聞いたわ、ジュリがネネを庇って怪我をしてから、光の速さでアンテッド達をなぎ倒していった話!」

「側近の立場からもお礼を言わせてくれ、殿下を助けてくれてありがとう」

「・・・・僕が守りたかった」


やっと喋ったカルルはボソッと呟く。


「あの場所でカルルは魔法使えなかったし、仕方ないよ。私かカルル、どちらかがあの場に居なかったらと思うとゾッとする。」


そう私が言うとシーンと静まり返る。

カルルの手をネネが掴み、私がネネの手を掴み、3人でワープしたからこそ生還出来たが、勿論ネネだけだったら・・・

ネネとカルルだけだったら・・・ネネと私だけだったら、今こうしてみんなと居られなかったかもしれない。


「あっ、ネネは大丈夫だった?すごく怯えていたから」

「あなたのことを心配していた以外は大丈夫に見えたわ、お見舞いにも来たがっていたんだけど、お花屋さんのアルバイトがあるらしくて来られなかったの」

「でもあの転移魔石は、光属性用だったんだろ?ネネが狙われている確率が極めて高い。アルバイトなんてしていて大丈夫かな?」

「王家の騎士を一人護衛に付けといた」


ネネも今のところ大丈夫そうで安心した。

犯人が早く捕まることを祈るばかりだ。


「さ、暗い話はここまでにして、私達はショッピングがあるから失礼するわ」

「俺もいかなきゃダメなのか?」

「荷物持ちしてくれる約束じゃないの?」


威圧感のある笑顔をアディに向けるアリア

それを見て頷くアディ


「・・・・はい」

「カルルはどうする?」

「もう少しアーティ家でのんびりしていくかな」

「そう、お先に失礼するわね、また明日」


アリアがアディの首元をもって引きずっていく。


「あ、今度の日曜日時間ある?」

「んー、たしか午後ならあけられる。ジュリもショッピングか?」

「いや、それはいいや。ネネに聞いた流行りのカフェが気になっていて、付き合ってくれないかな~と思って。カルルの好きなアップルパイが看板メニューらしいよ?カスタードも入っていてすっごく美味しいんだって!」

「ジュリ様、是非お供させて下さい」

「決まりだね♪」


そしてダラダラと二人でいつものようにのんびりと本を読み、夕方まで過ごしている間に体のダルさはとっくに消えていた。


――――


次の日から学校へ行った。

教室に入った途端にネネに抱き着かれ、大量のクッキーをもらった。

凄く心配してくれていたようで、涙が零れそうになっている、とてもいい子。

私は大丈夫だよと背中をさすり、なだめた。

ネネだけお弁当だったが、食堂に持っていってみんなで食べようってことになり、お昼休みには5人で食堂でご飯を食べ、ネネが作ってきてくれたクッキーを紅茶と一緒に頂く。

そんなかんじの日常を過ごし、土曜日になった。


日曜日の朝、庶民が行くカフェなので目立ちすぎないよう、シンプルなワンピースにした。

緑色の上品なミディワンピースに、装飾品は目立ちすぎないパール。

ヘアセットはゆるーく巻きおろしでいいやって思っていたのに、ラムがつまんないと勝手にアレンジを入れて緩めのハーフアップになった。

待ち合わせの噴水がある広場に到着、もうカルルが来ていた。


「早いね!私も早く来たつもりだったんだけど」

「実は40分前についちゃった」

「え!」

「楽しみすぎてさ、あはは」

「どんだけアップルパイ好きよ、行きましょうか」


カルルも簡単なシャツジャケットに帽子を被っていて、しっかり町に馴染んでいる服装だった。

カフェには迷わずに到着した。


「red cheeks・・・あったここだ!」


ウッド調の店内でおしゃれな店内だった。


「いらっしゃいませ~2名様でよろしいでしょうか?ご案内します」


多少混んでいたが、丁度窓側の席が空いていて、そこに案内された。


「カルルはアップルセット?」

「もちろん!ジュリの頼むものわかるよ、ストロベリーパイじゃない?」

「え、あたり」

「なんとなく分かった」

「ストロベリーセットにする!」


アップルセットは、アップルパイとアップルティーがセットになっていて、ストロベリーセットはそれのストロベリーバージョンだ。

注文を済ませて、紅茶とパイがすぐに届く。


「いただきまぁす」


パイはサクサク、中の苺は甘く煮てあり丁度良い甘さでとっても美味しかった。

付け合わせの甘さ控えめ生クリームを付けて食べたら本当にほっぺたが落ちてしまう。

カルルの口にも合ったようで、味見しただけの食べきる前に、単品でもう一つ注文している様子に笑ってしまう。


会計は、カルルがお手洗いに行っている間に私が済ませた。

お手洗いから帰ってきたカルルに『行こうか』と言い席を立つと、会計をしようとレジに向かうカルルの手を引く。


「ごちそうさまでした」


レジにペコっと頭を下げ通り過ぎる。

『ありがとうございました~!』と店員さんの声を聴きながら店を出る。


「え、いつの間に払ったの!」

「私がここに来たいって誘ったし、こないだ家まで送ってもらったからお礼に」

「そんなのいいのに、ってか僕と居る時はお金出さなくていいから。この国の王子だからね?わかってる?」

「そうだったっけ?」

「おい」


あはは、と笑ってしまう私につられてカルルも笑う。


「次はどこに行きたい?」

「んー、どうしよっかな」


ふらふらと歩いていると、露店が並ぶ通りまで来た。


「しょっぱいもの食べたくない?」

「食べたい、行こう」


鳥肉を串に打ち、甘辛いタレで絡めてあるものを二本買い、空いているベンチに座り食べた。

そのあと、またふらふらと歩いていると、ジュエリー露店があった。

本物の宝石ではないが、とてもキラキラと光る石が付いているアクセサリー。

ゴールドの指輪に赤い石のついた物が一番キラキラしているように見えて、手に取る。


「それほしいの?」

「カルルの瞳みたいだなぁって」

「はめてみて・・・・・ぴったりだね、これください」

「え、自分で買うよ」

「だから、お金は出させてって、大した金額じゃないけど」

「じゃあ、カルルには私が買う!どれがいい?」

「んーーーじゃあこれで」


カルルが選んだ指輪は、同じくゴールドの指輪に緑色の石が付いたものだった。


「もしかして・・・」

「そう、ジュリの瞳の色だなーって」


柄にも無く、顔から熱を感じるのでカルルに見えないよう下を向いて顔を隠した。


「ん?ジュリ具合悪い?」

「だ、大丈夫よ!!きにしないで!!」


お互いの瞳の色の石が付いた指輪を買い合いっこして、またふらふらと歩いていると、お花屋さんがあった。

ネネの働いているお花屋さんだった。


「カルル殿下!ジュリさん!」

「今日は御忍びだから、殿下は付けないようにして欲しい」

「わ、すみません」

「誰も聞いてなかったからセーフ」

「今日はデートですか?」


目をキラキラとさせ、ネネが聞いてくる。


「・・・・ネネが教えてくれたカフェにいってきたの」

「red cheeksですね!どうでした?」

「めっちゃ美味かった!!!」


カルルが食い気味に返事をする。

お口に合ったようで何より!


「教えてくれてありがとうね」

「いえいえ!!!」

「屋敷に飾る花が欲しいな、頼める?」

「かしこまりました!色とか品種とか希望ありますか?」

「まかせる!」


ネネは綺麗な赤、ピンク系の花で花束を作ってくれた。

カルルが金貨を出す。


「お釣りはいらないよ」

「え、こんなにもらえません」

「いいから」

「えーん、ありがとうございますぅ」


奥から50代くらいの女性が現れた。


「ネネのお友達かい?」

「学校のお友達の、カルルさんとジュリさんです!」

「はじめまして」

「こんにちわ~」

「なら、ネネ休憩しといで!私は今休ませてもらったから」

「あ!じゃあ、近くにあるジェラート屋さんでも行きませんか?」

「いいね!!」


そして私達はジェラートを食べに向かった。

向かっている間は、ネネに今日行った場所を聞かれ、話した。

『とっても良いデートですね!』なんて言われて、また顔が少し熱くなったのは秘密。

歩いていると、前でハンカチを落とした男性を見かけた。

走って行ってハンカチを拾い、男性を追ってメイン通りから外れた裏路地に入る。


「すみません、ハンカチ落としましたよ~!」

「ん?ああ、どうもありがとう」

「いえいえ」


「キャーー!!!!!!」


後ろからネネの叫び声が聞こえる。

振り返ると黒い服装の男の人2人に押さえつけられ、小瓶をかがされ意識を失うと担がれる。


カルルと私は慌ててネネの方へ戻る。

ネネに付いていた護衛とカルルに付いていた護衛も慌てて出てきて合流し、後を追う。


「早いな」

「早さで負けるわけにはいかないよね」


私は得意の雷魔法を纏い、スピードを上げ、男の前に立ち塞がる。


「ネネをどうする気?」

「売るんだよ邪魔すんな」


カルル達も追いつき、剣を抜く


「っち、武器持ってんのかよ話とちげーぞ」

「・・・?」


男達は、ネネを捨て、横道に入り逃げて行った。

護衛騎士達二人に後を追うよう、カルルが指示した。

そしてネネのアルバイトをしているお花屋さんへ行き、事情を説明して自宅の場所を聞きネネを送り医者に診てもらった。

気絶するガスを吸わされただけなので大丈夫とのことで一安心。


目が覚めていないのでまだ心配だったが、二人の男のうち片方をとらえたと騎士達から報告が入り、ネネの護衛に憲兵の応援を呼び、王城へ向かった。









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