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お母様の学生時代の親友である、皇后様のお茶会が

翌日に開かれるので王都へと連れ出された日のこと。


私はお母様と馬車に乗り、王都に来ていた。

お母様はお尻が痛い従来の馬車が、どうしても嫌だと、馬車を自分で改良し、それがフカフカで座り心地が良いと評判になり販売までしている。

アーティ伯爵夫人としての仕事、馬車職人達を雇っての馬車事業、さらに化粧品ブランドを立ち上げ、経営までこなしている。


この国での、女性経営者は珍しい。

お母様はこの国で有名なやり手婦人だ。



そのおかげで我が伯爵家の馬車は

フカフカのソファで、乗り心地が良い。

その馬車には『婦人の寝室』なんて別名が付くくらい有名になっていた。


そんな乗り心地の良い馬車に揺られると、私はウトウトと睡魔に襲われ、その日もスヤスヤと眠ってしまっていた。


王都に到着した私達は、王都の邸宅へ行く前に、お母様の化粧品店に寄ることになっていた。

その間も私は眠っていた。


「ジュリは寝かしときましょ。貴方、お留守番任せていいかしら?」

「かしこまりました!行ってらっしゃいませ」


化粧品店までの道は歩行者が多いショッピングストリートとなっている為、広い道で馬車を止めて

お母様とその日の護衛騎士が2名、化粧品店へと向かった。

同行していた侍女と私が馬車内に残る。


私はその事件がおこる間も眠っていた

まさか、こんなことになるとは知らずに。


「お嬢様、おはようございます!」


「..お母様は?」


「アーティコスメ王都店に立ち寄られてます」


領地から付いてきた侍女が答える。

(お仕事かぁ、行ってもつまらないからお母様が帰って来るまで寝ようかな)

そしてまた眠ろうと横になった時だった。


急に馬車に衝撃が走る、馬車は転倒し、本来天井だった所へ身体ごと打ちつけた。

私の意識はそこで途切れた。


----------


重たい瞼を開けると、見知らぬ天井。

体をかろうじて起こして部屋を見ると、日本とは思えない洋風な家具が並べてある部屋。

豪華な装飾が施された、ピンクの色味のお部屋は、お嬢様のお部屋って感じで今の私の趣味では無かった。

サイドテーブルに、鈴が置いてあり、身体を起こそうとすると首や肩、頭にまで激痛が走った。


「うっ...」


身体中が痛み出す中、なんとか鈴を手に取り鳴らすと、すぐにメイド服のようなものを着た女性が来て


「お嬢様!お目覚めですか?すぐにマリー様をお呼びして!」


違うメイド服の女性が、『わかりました!』と返事を返し小走りで部屋を出て行った。

すぐにマリーと呼ばれる綺麗な女性らしき人が慌てて部屋に入ってきて


「ジュリ、大丈夫なの?痛いところは?」

「ジュリ...?私どうしちゃったんでしたっけ...?」


女性を見上げたあと頭を抱える私。


「自分の名前がわからないの?!最後に覚えていることは?」

「.......」

「あぁっ.....貴方を起こしてお店へ連れて行くべきだったわ、なんでよりによって私の馬車に暴走馬車が突っ込んて....うぅ…生きてて良かったわ」


マリーと呼ばれる女性は、涙をポロポロと流しながら私の布団に顔を埋め、『生きててよかった』と繰り返し呟く。

泣き崩れたマリーと呼ばれる女性は、侍女が肩を抱き部屋を出て行った。


冷静な侍女に説明を頼むと、どうやら私の馬車に暴走馬車が勢いよくぶつかり、馬車が倒れた衝撃で、馬車がひっくり返り、一緒に乗っていた侍女の下敷きになった私は意識が無かったらしい。

頭からの出血が酷く、危ないところ、偶然居合わせた、少年を連れた神父が少し使える程度のつたない聖魔法で、結構な無理をしながら、頭や傷の酷いところの応急処置の治癒魔法をかけてくれたらしく、助かったらしい。

あとはお母様のフカフカのクッション馬車が助けてくれたのだろう。


「伯爵様と治癒魔法師が到着しました」


お父様がしっかりとした治癒魔法師を3人連れてきてくれて、3人がかりで治療してもらい、身体の痛みがすっかり消えたどころか、悪いところが全て治った気がする。

身体が治ったことにより頭の中もスッキリしてきた。


この世界には魔法がある。

魔法がない世界で生きていた私は、ごく普通のOLだった。


------------


「おっはよー!佳奈、今日仕事終わったら飲みに行かない?」


「おはよお、少しなら良いよ」


仕事を終えて、学生時代の同級生でもあり、同僚でもある真奈と居酒屋に行った。

そして居酒屋で同じ同級生の男の子2人と合流し、楽しく飲んで、居酒屋をでた帰り道。

駅が一緒の男友達の滝沢君とも別れ、1人自宅までの帰路を歩いていた。


携帯を触りながら歩いていた私、後から脇腹に鋭い痛みが走った。

振り返ると、黒いフードを被った女の子が立っていて、痛みの部分には包丁と思われる刃物が私の脇腹へ刺さっていた。


「うっ....」


その場で倒れこむ私


「きゃー!女の子が刺された!!!!!」


ザワザワする周りの声


「滝沢君は私の王子様だよ・・・・」


もう一度刺された時、私は意識を手放した。


--------


私は日本で、『竹田佳奈』だった。

前世で死んだ時の記憶を思い出した私は竹田佳奈、として生きた24年間を思い出した。

殺された記憶と言うのは、物凄くインパクトが強くて吐き気もしたが、治癒魔法で治まりつつあった。

私を刺した女の子は、滝沢君の元カノの萌ちゃんだった。

たまに相談されていたが、とてもメンヘラで、自傷行為や妄想癖が酷く、我儘で回りに被害が出始めたので別れたと言っていた。

現に私も、滝沢君に近づかないで!と電話までかかってきたことがある。

恋愛を拗らせ、殺人までしちゃうなんて恐ろしいなと思った。

もう一度部屋を見渡してみる。

OLだった竹田佳奈としての記憶もありつつ、ジュリ・アーティとして生きた12年間の記憶も存在していた。

そんな佳奈としての記憶が蘇った後に、ファンタジーなこの世界とのギャップ

魔法を早く使ってみたいと胸を高鳴らせた。




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