プロローグ:世界を救った直後に…
初投稿です。
気楽に投稿できたらと思います。
温かい目で読んでやってください。m(_ _)m
人々は僕に言った、「私達を救って欲しい」と。
王様は僕に言った、「人類の宿敵である魔神を殺しくれ」と。
仲間達は僕に言った、「お前にしかできないんだ、頼む」と。
彼女は僕に言った、「私のことを絶対に守ってね」と。
そうして、僕はみんなの期待に応えて、、、
魔神を殺した。
「あなたは世界を救ってくれた。」
僕の周りの人たちはそう言う人が多い。人類の宿敵である数多くの魔人たちや勇者でも絶対に勝てないとされた魔神を殺したのだから、当然ではある。
だけど、僕は思う。これが最善の選択肢だったのだろうか?と。僕がやってきたことは本当に正しかったのだろうか、自分は数多の命を奪って、世界を壊しただけのただの狂った破壊者なのではないのかと思える気がしてならない。
魔神を殺したあとのあのただひたすらに真っ白な空間で、感じたことを言葉では言い表せないが、簡単に言えば、後悔だったのかもしれない、もしくは怒りか、懺悔か、はたまた世界への絶望だったのか。
ただ一つわかることは、魔神が僕に語ったこの世界の狂った真実、そして、死ぬ直前の魔神が最後に涙を流しながら僕に告げた
「殺してくれて、、ありがとう、、、、」
この言葉が僕の心に突き刺さったことだ。精神攻撃に対する耐性はかなり高いはずなのに、あんな言葉に心を揺さぶられてしまうなんて。
だけど、今は考えないようにしよう。
人々を救いたくて、国を守りたくて、大切な人を守りたくて、力をふるった僕は、人々からはもちろん、あいつらや、守りたかった彼女にさえ、英雄と見られこそすれ、狂った破壊者だなんて思われることはきっとないのだから。
僕はみんなの思うように自分は英雄だと思えばいい。
すでに魔神を殺した僕に、顧みることなど、許されないのだ。
だから、僕は自分の手で作り上げた平和を享受することにした。
たとえ、第2、第3の魔神やそれ以上の怪物が出てきたとしても、僕が殺せばいい。幸い、僕にはそれができるであろう力がある。
僕は人々から期待されるように世界を救えばいいんだ。
どうして、こんな簡単な答えに行き着かなかったのだろう。
どうして今さら、死んだ師匠が僕に言った
「これまで、世界を救ってくれる英雄はいても、英雄を救える者はいなかった。だからこそ、お前は強くあれ。」
この言葉を思い出し、夜空を見上げて、涙が溢れてくるのだろう。
「おい!レイン起きろよ、英雄様が寝坊と聞いたら、民衆が呆れちまうぞ」
耳元で聞こえる荒々しい中にも、爽やかな感じのしたこの声は、、、ああ、ダイナか、
「おい!ほんとは起きてんだろ!さっさと、布団から出てこいよ」
そう言って、ダイナは僕の被ってた布団を取り上げてしまった。
「おいおい、何も布団を取り上げなくっても、いいじゃないか」
寝起きの伸びをしながら、そう悪態付いた僕の目の前にいた彼は爽やかな笑顔をしながら、僕の布団を投げ飛ばして、仁王立ちしていた。
「いやいや、何回言っても、起きないってメイドが言ってたから、わざわざ俺が起こしに来てやったんだよ。」
彼はニヤニヤして僕にそう返してきた。
「だからといって、勇者様が人の布団を取り上げるのは間違ってるんじゃないのかい?勇者ダイナ様。」
僕は少しの嫌味を込めてそう言った。
僕を起こしに来た、さっぱりしたオレンジの髪をして、少しガッチリした体つきで、今僕にしているような爽やかな笑顔で民衆を虜にする彼こそが、勇者ダイナ。本名をダイナ=レイス=シースフィアといい、僕の生まれた国であるシースフィア王国の第3王子だ。
「はは、それを言われると困っちまうなぁ」
「ほんとに、あなたはお人好しだな」
「うるせぇよ、英雄サマー」
大きな声でそうちゃかしてくる彼に辟易していると、ドアがガチャリと開いて、女性が入ってきた。
「朝から元気ですねー、勇者様。その元気を魔人達との戦いのときに出して欲しかったですわ」
「おーおー、これはこれは聖女様じゃないですか。相変わらず、立派なことをおっしゃるもんだなぁ」
「うるさいですよ、ダイナ」
「はいはい」
部屋に入ってきた途端、ダイナと口喧嘩を始めた、ブロンドの髪をして、神官の正装である白と黒を基調とした服に、金色の刺繍が入ったものを着ている美しい女性こそが、聖女セイラ。
先ほどの勇者や僕と同じく、いわゆる勇者パーティーに所属している。
本名をセイラ=マルティネスといい、<女神教>では教皇のような権力はないものの、女神の声を聞くことができるという聖女ならではの能力でそこそこの地位にあるらしい。
勇者とは本人曰く、犬猿の仲らしいのだが、多分仲が良いだけなのだと僕は勝手に思っている。
「セイラさん、おはようございます。僕の部屋まで訪ねてくるだなんて珍しいですね。何かご用ですか?」
「レインさん、おはようございます。ええ、こいつのせいで要件を言うのを忘れてました。」
そう言いながら彼女は彼の方を指で指し、そして言葉を続けた。
「そろそろ、王都へ出発するとのことです。ここから王都までは早くても1ヶ月はかかるらしいので、早めに動きたいのですと相談されまして、魔神との戦いでかなり疲労しているはずのレインさんには申し訳ないです」
「いや、大丈夫ですよ。流石に体の方も全快、とまではいきませんが、だいぶ治ってきましたし、僕のために皆さんに迷惑をかけるのはまずいと思います」
「あなたらしいといえばそうなんですけど、、もう少しご自身のことも気にしてくださいね。魔神との戦いから帰ってきて、全身傷だらけで満身創痍のあなたを見たとき、みんなすごい心配したんですから。」
そう言いながら彼女は心配そうな顔をして、隣にいるダイナも同じような顔をしていた。仲間に心配させてしまうなんて、英雄失格だな、と思いながらも僕は言葉を返した。
「わかってますよ、この体がないと、人々を救えないってのは、自分が一番わかってますから。」
「はあ、絶対にわかってないと思うんですが、、まあ、いいです。しばらくしたら、兵士が来ると思うので、詳しくは彼らの指示に従ってください。王都までの馬車での旅の最中ぐらいはせめて、ゆっくりしておいてください。」
「お気遣いありがとうございます、お言葉に甘えてゆっくさせていただくとします。」
そう言うと、彼女は満足した顔で、部屋を出て行った。
「レイン、じゃあ、俺も行くわ。相変わらず、元気そうでよかったよ。馬車は別々だから、また王都でな。」
「ああ、じゃあね。」
そう言って彼も出て行った。
1人だけになった部屋の中で僕は包帯を全て取り去り、常人なら無数の痛々しい傷跡がまだまだ残っているはずなのにもかかわらず、やはり、全く傷跡がないどころか、健康的としか思えない自分の体を確認して、ため息をついて、呟いた。
「心配をしてもらうのは嬉しいけど、申し訳ないな。みんなの前で見せてしまった傷は全て自分で自暴自棄になってやっただけのものなのに。」
そう、あの傷は自分でワザとつけたものだったのだ。この体はいくら傷をつけたって回復してしまう。この不死身の肉体を壊すことなんて、誰にだってできやしないんだ。それが例え、勇者や、魔人達や、魔神や、他の何者であっても、、
「でも、まだ全快したわけじゃないから、休息を取らせてもらおう。王都か、、あの世界も含めたら、百年ぶりだな。」
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次回は1ヶ月以内に出せたらなと思います。