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彼氏ができた初恋の幼馴染の妹が最近やたら絡んでくる。  作者: 戸津 秋太
第二章

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31/69

31、特別な朝

 新しい学年での生活にも慣れ始めた時分。

 個人的にはもう少し後に来てくれたら嬉しい長期休暇――ゴールデンウィークがやってきた。


 今年は十連休ということで、長期旅行を予定している人も多いはずだ。

 こんなに休むと、またゴールデンウィーク明けの学校生活が少し不慣れなものになってしまう気がする。


 まあ、そんなことを懸念したところで意味はないのだけれど。


 ゴールデンウィーク初日、ボクは学校から出された課題を終わらせることに終始し、二日目はその残りと前々から読もうと買っておいた本たちを読み漁った。

 例年であれば長期休暇を丸々使ってゆっくりと終わらせるそれらを手早く片付けたのには、もちろん理由がある。


 今日、つまりはゴールデンウィーク三日目のイベントを存分に楽しむためだ。


 ――そんなわけで、三日目の朝。

 ボクはベッドの上にクローゼットから取り出した服を片っ端に並べて、うんうんと首を傾げながら見下ろしていた。


 他でもない今日は、以前から約束していた揚羽と遊園地に遊びに行く日だ。

 揚羽の言葉を借りるなら、これは紛れもなくデートというやつで。

 絶賛、今日着ていく服を悩んでいるところだった。


 ……普通、こういうのは女の子の方が悩むものだろうけれど、まあ好きな人の前でお洒落したいというのは男も同じなのだった。


 それも、いかにもデートっぽい遊園地が目的地とあれば、いつもよりも気合いが入る。


「いや待てよ、あまり張り切りすぎた服装だと揚羽に馬鹿にされるなぁ」


 もしかして今日、楽しみにしてたんですかぁ? としたり顔でからかってくるのが目に浮かぶ。

 結局、ジーパンと白シャツ、その上に黒の半袖シャツを羽織ることにした。


 服をクローゼットの中に仕舞い込んでから、勉強机の上に置いてあるカレンダーを見る。

 今日の日付に二重丸が書き込んである。


 揚羽と遊園地に行くのは今日が初めてではないけれど、これまでは可憐はもちろんのこと二人の両親が一緒に来ていたりした。

 二人きりの遊園地というのは、当然のことながら初めてだ。


 不意に窓の外を見れば、空が白み始めている。


 待ち合わせ場所は地元の駅。待ち合わせ時間は九時ぴったり。

 まだまだ時間はあるので、眠気覚ましのコーヒーを飲むためにキッチンに下りた。


 静かなキッチンに、こぽこぽとお湯が沸く音が響く。

 瓶の中からインスタントの粉をスプーン二杯分マグカップに入れて、お湯を注ぐ。

 クルクルとかき回せば、コーヒー特有の香りが鼻腔をくすぐってそれだけで眠気がいくらか和らいだ。


 粉が溶けきったのを確認して、一口飲む。


「……にっが」


 顔を顰めながら、砂糖を二本とミルクを一つ入れて混ぜながらリビングのソファに腰を下ろした。

 まだ苦いコーヒーを飲みながら、やっぱりココアにしておけばよかったと後悔する。


 ボクは基本的に、たとえ夏でもココアを愛飲している。

 飲むチョコレートみたいでいつ飲んでも美味しい。


 そんなことを考えながら、ひとまず今日のスケジュールを整理しておく。

 ポケットのスマホを取り出して、ニャインを立ち上げる。


 揚羽のトーク画面を開くと、昨日の夜に送られてきたメッセージが表示された。

 そこに書かれていることをザッと纏めると、こんな感じになる。


 九時に駅に集合してから、電車で一時間と少しかけて遊園地へ向かう。

 昼食は園内のレストランか何かでとって、夕方までアトラクションで遊び、その後帰路に就く。

 春になって暗くなるのも少しずつ遅くなり始めているけれど、それでもやはり遅い時間に女の子を一人で帰すわけにもいかないので揚羽を家まで送る。


 なんてことはない、普通のプランだ。


 壁時計を見る。

 先ほどから十分ほどしか経っていない。


「早く時間にならないかな」


 ポツリと呟いた自分の言葉に、思わず恥ずかしくなった。

 これではまるで、遠足の日の子どものようだ。


 まだ時間はあるし、一度着替え直して寝た方がいいだろうか。

 悩みながらうんうんとしていると、スマホがブルリと震える。


 見ると、揚羽からメッセージが来ていた。


『おはよー、ハルくん!』

「……早起き過ぎるでしょ」


 苦笑しながらフリック入力をしてメッセージを送った。


『おやすみ』

先日有り難いことにレビューをいただきました。

とっても嬉しいです!

引き続きよろしくお願いしますー。

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