悠久の孤独
「この世は様々な世界が混沌としており、それらはお互いの干渉を決して許さない。」という書き出しで始まる書物を読んだことがある。
それは一見馬鹿げたような話に聞こえるが、実はそれは理に適っており、メルヘンチックで、プラグマチックでもあったのだ。
この眼下の景色を見れば誰だってそう思うと断言できる。
俺は・・来てしまったのだ。「異世界」というところに。
事の始まりは高校から下校している時だった。
俺は部活が終わり、疲弊感満載でいつもと同じ景色をぼんやりと眺めていた。
すると前から恰幅の良さそうな中年の男性がふらふらと歩きながら近寄ってきた。
かなり気味が悪かったが、粗方酒に酔っただけだろう、とたかをくくりやり過ごそうとしたのだ。
しかし、その瞬間、男性が突然言葉を発した。「助けてくれ、、。」と。
俺は酔いが回っているのだろうかとも思ったが、男性が流している血に気がついた途端事の重要さを悟った。
「わ、わかりました。救急車ですね?」と俺が少し戸惑いながら答えると、
「救急車、、?ちがうんだ、、。俺はもう生きられない、、。寿命を吸い取られてしまったからな、、。
もってあと数分だろう、、。何かの縁だろう、、。俺は昔から運だけは自信があるんだ、だから、この力をもって俺の代わりに奴等を抹殺してほしい、、。」男性は力を振り絞って言葉を紡ぐと、右の拳を俺に押し付けてきた。
その言葉に答える暇もなく俺は突如出現した幾何学紋様に吸い込まれ今に至る。
恐らく高山の頂上。周囲は見たこともない花が咲き乱れており、そこから見下ろす風景は幻想的という言葉が相応しかった。
所々に刺さった巨大な槍状の柱、日が東側から照らし、西側に大きな影を作る。
そのひとつの大きな影は辺りに整然と並べられている建造物を暗くし、時計台の中間まで延びている。
ある槍は建造物の付近にある渓谷の際に刺さっており、滝に差し込む光をその影が両断している。
そんな風景に魅入っていた。これから始まるであろう男性の言う「奴等」との戦いに胸を躍らせながら。
これは300年前の話。この300年後ついに元の世界に帰る方法を編み出した俺は元の世界より何十倍も長く生きたこの異世界に軽く別れを告げ、力の縮小のために自分に10段階の枷をかけ、帰還した。
はじめまして。まんとると申します。これから月に一回ほど投稿していきますので見てくださる方がいるのかはわかりませんが、がんばろうと思います。拙い文章ですが、何卒よろしく。