表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/34

31

いとしい、と、いとおしいの意味はちがうようだ。

ならば、ぼくがみどりに擁く想いはきっと、いとしいだろう。

痛いいたいと嘆いても、そこにはどこかいとしさがあるのだろう。

目を開くと緑色のはっぱがぼくを覆うように広がっていた。

葉と葉のあいだからこぼれおちるひかりが、ぼくをくすぐる。

学校の屋上にはえた巨木の下で、ぼくたちは昼寝をまったりと楽しんでいた。

「しろ」

となりでも逢坂が寝転んでいる。

逢坂はもうすっかりうつらうつらしている、と思っていたぼくはすこしだけおどろいた。

「きもちいーな」

「そだね」

「いま、なんじ」

「しらない」

「おくれたらどーするんだよ」

「しらない」

「まーいーや」

「うん」

逢坂は寝返りをうって、ぼくに背を向けた。

「あ、鐘」

でっかい鈴をならしたような、長いか行の音がきこえてきて、げんきに遊んでいた生徒たちはみんなあわてて教室へはいっていくのが見える。

ここからみると、みんな蟻のように小さい。

「さぼる」

「ん」

「おまえは?」

「それでいい」

逢坂と意気投合して、ぼくはまたうつらうつらとすることにした。

ここならきっと、先生たちにもみつからないだろうし、ゆっくりと休憩できるはずだ。

こんなめまぐるしい学校生活のなかで、休みは必要なのだ。

ぼくはそう思って、にしし、とガラになく下品な笑みをうかべて、夢の世界へと足を踏み入れた。

さいごの夢にでてくるのはきっと、みどりだろう。

ぼくはなんとなく、そうかんじた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ